2022 Fiscal Year Annual Research Report
A study of grape picking farms in the Nagoya Metropolitan Area using the perspective of Actor-Network Theory
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18K11839
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
林 琢也 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (50572137)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 観光農園 / ブドウ狩り / 技術革新 / 新品種 / 生育環境 / 集客 / SNS / 新型コロナウィルス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は岡崎市と岐阜市にて調査を実施した。岡崎市では岡崎駒立ぶどう狩り組合に所属する7戸と非組合3戸の悉皆調査をおこなった。各戸には経営規模や品種,労働力,観光客の特性,販売方法といった基本情報を伺うとともに,農家同士の連携や情報・技術交流,SNSによる広報とその影響,固定客との繋がり,現在に至るまでの経営展開,コロナ禍中での工夫等の話を伺った。また,岐阜市でもブドウ狩りや直売を行う生産者に対してインタビューとアンケートを実施することで,研究当初(2018年度)には想定できなかった新型コロナウィルスの経営や集客への影響等,現在進行形でのnon-human actorが生産者の意識や行動に与える作用も把握することができた。 研究期間を通した成果は,名古屋大都市圏で先駆的に観光農園を開始し現在まで継続している名古屋市と大府市,岐阜市,岡崎市の実態を追うことで,60年に及ぶ長期的な観光農園経営の変遷と,生産者がブドウの栽培や観光(消費)の現場,宣伝・広報に様々なモノを動員することで,経営の安定を図ってきた事実をhumanとnon-humanの関係やnon-humanの及ぼす作用として動態的・空間的に把握することができた点にある。4市の展開においては共通点と相違点があるものの,ジベレリン処理の普及(種無しブドウの登場)や雨除けハウスの導入,袋・傘かけといった生産環境の変化・技術革新,新品種の導入効果(各時代の流行),都市化の影響(営農環境の悪化と集客の安定化),生育環境の変化(雨量の増加,高温・日射の増加),HPやSNS,広報誌による情報発信,新型コロナウィルスの流行等が,生産・観光の現場や農家意識,販路,農作業への向き合い方に大きく作用してきたことが明らかとなった。こうした流れを時系列的に整理するための農園レベルでのエピソードやエビデンスを手に入れることができた点は重要と考える。
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