2018 Fiscal Year Research-status Report
アートツーリズムのエスノグラフィー:地方国際芸術祭の深化と拡充の理論化に向けて
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18K11841
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
山田 香織 追手門学院大学, 基盤教育機構, 大学常勤講師 (50731832)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アート / ツーリズム / アートツーリズム / アクター / 地方国際芸術祭 / 地域資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
地方国際芸術祭は2010年以降日本各地で開催されており、数ある芸術祭開催地のなかには、芸術祭が契機となって、観光現象に広がりや深みがみられる地域も出現している。こうした状況に鑑みれば、地方国際芸術祭を観光を創発する機会と捉えることができる。しかしながら、地方国際芸術祭(=アートツーリズムの一例)を観光学の視点から捉えた議論は必ずしも多くはない。こうした実情に鑑みて本研究は、地方国際芸術祭の成功事例の一つとされている瀬戸内国際芸術祭を例にとり、これとそれを取り巻く観光現象を民族誌的手法を用いて調査研究することで、アートツーリズムの具体的議論を拓くことを目指している。 研究1年目の今年度は、調査計画に則って先行研究の渉猟と現地調査によるデータ収集をおこなった。その結果次の成果を得ることができた。 【先行研究渉猟】社会学・文化人類学・地理学を中心とした観光学の基礎理論、観光まちづくり論に関する把握を進めた。あわせて関連学会(観光学・文化人類学・地域振興)や研究会において最新の研究動向を把握した。 【データ収集】ほぼ計画どおり①主たる調査地(A市ならびに瀬戸内国際芸術祭)、②比較参照点としてのアートプロジェクト(BEPPU PROJECT、越後妻有大地の芸術祭)の調査をおこなった。①においては、A市における瀬戸内国際芸術祭やそれに関連するアートプロジェクト、さらにはこれ以外の多様な観光現象の同時多発的発生の実情を捉えることができた。同地では複数のアクターへの聞き取りを実施し、各観光現象とそれらの連関について情報収集をした。これら調査を通じて、アートプロジェクトはもとより、これ以外の観光現象にも目配りをした継続調査が、本研究におけるアートツーリズムの議論の深化に有効であると確信した。②では、参与観察をしたアートツアーの内容から本研究テーマを考える上で有効な補助線を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の研究計画にほぼ滞りなく遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目の令和元年は本研究の主調査対象である瀬戸内国際芸術祭開催年である。そこで、同芸術祭とそれに関連する観光現象の参与観察、同地でアートツーリズムに関わる多様なアクターへの聞き取り調査をおこない、情報収集を進める。同芸術祭開催地のひとつであるA市においては、アートツーリズムに関する検証の一助とするべく、アート以外の観光現象についても調査を実施する。このほか、アートツーリズムの類似事例調査をおこなう。先行研究の把握にはこれまで以上に積極的に取り組む。 本研究最終年の令和2年は、補足調査を進めながら研究成果を理論化し、学会等で公表する。データ収集の進度によるが、成果発表は研究2年目においても可能な限りおこなう予定である。
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Causes of Carryover |
本務との兼ね合いや悪天候(台風・地震)の影響で国内調査を見合さざるを得ない事態が発生した。 見合わせた国内調査は研究2年目(令和元年)に実施する。
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