2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K11843
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
井門 隆夫 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (60619138)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 小規模宿泊業 / 地域連携 / 滞在型観光 / 人材確保 / 労働生産性向上 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、初年度(2018年度)に鳥羽市において約30社の小規模旅館の財務状況を調査。うち4社については数回にわたるインタビューを実施し、労働生産性に関する旅館の類型化を行い、論文『地方小規模宿泊業における労働環境』(日本労働研究雑誌708号)として発表を行った。 翌年度(2019年度)においては鳥羽商工会議所が中心となり設立した地域DMOの協力も得て、4社のうち相差地区の3社を巻き込み、労働生産性向上に向けた仮説である「地域の小規模事業者が連携・協業した地域事業モデル」の設計と実現を開始した。3社は任意組織「相差未来委員会」を立ち上げ、1泊型事業から、滞在型事業へと地域全体でシフトするモデルの実現に向けて町全体の意見調整活動を始めている。 一方、研究者側では、労働生産性を向上させる上で重要な課題となっている「労働力の確保」の可能性として、地元高校生の授業・部活の一環や、大学生の長期インターンシップ、あるいは外国人就労者の計画的な育成といった、一時的かつ新たな労働力確保の可能性を模索し、実証的な取組みを含めて、ケースの収集を行ってきた。 また、滞在型を目指す上で、滞在型施設(コワーキングスペース)等の事業投資が必要になることから、地域経済活性化推進機構(REVIC)に対して、共同して働きかけを行っている。 本研究では、事業者単位の労働生産性向上には限界があり、地域の小規模事業者が相互連携することにより生産性向上を果たすモデルの実証を引き続き目指していきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、メイン調査地である鳥羽市のほか、サブ調査地として四万温泉(群馬県)での調査活動を計画し、本学大学院博士前期課程に在籍している観光協会長にも協力を得て調査の許可を目指してきたが、高齢の経営者が多いため財務内容開示まで至っていない。また冬に発生した新型コロナウイルス肺炎の蔓延により多くの事業者で事業自体の存続が危惧される状況となり、同地での調査は中止し、ケースとしての情報収集に止める方向で考えていくこととしたい。また、四万温泉の代替地として、宮城県東鳴子温泉も視野に入れている。以上が、計画がやや遅れる結果となった理由であるが、メイン調査地をはじめその他の計画はほぼ順調に進んでいる。 ただし、新型コロナの影響で若干の遅れも生じている。本年度はベトナムにおいて鳥羽地域専属の日本語教室を設置する計画を進める予定で4月に研究者と事業者が渡越の計画であったが、延期をやむなくされている。また、本来4月から1年間開催を計画していた研究者も参加した相差未来委員会の開催も2か月間ストップせざるを得ず、6月よりその遅れを取り戻し実施していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度として、研究者が鳥羽市での計画進捗に直接参加することにより、地域連携型労働生産性向上モデルの実証的なとりまとめを行っていきたい。 日本の中小企業の低生産性の一要因は過剰債務であり、小規模宿泊業においても例外ではない。そのため、法人企業統計調査をもとに、中小宿泊業の過剰債務の実態を明らかにしたい。そのうえ、過剰債務を消していくためには金融機関の協力も得てDES(資本注入)やDDS(劣後ローン)といった金融手法が欠かせないことから、鳥羽市にはREVICの参加も促し実証を行っていきたい。そうした手法の実施にあたっては、公平性を担保しモラルハザードを避けるために、特定事業者に対して行うのではなく、地域(DMC)に資本注入し、DMCが経営の立ちいかなくなった小規模宿泊業を買収、賃借することにより地域連携を進めることができる。そうした仮説をもとに、鳥羽市での実証調査を進めたい。 また人材確保のための実証実験として、ベトナムでの外国人労働者の育成に向けての調整や大学生のインターンシップについても実施を計画している。
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Causes of Carryover |
1年目の調査での物品費(PCの購入)や外注(調査員)を請求しなかったことから、その分が前年未使用分として本年度に加算されていたため。本年度の履行額がほぼ計画通りとなっている。 本研究においては宿泊業の人材確保が重要な観点となってきており、法改正による外国人労働者の確保が可能になったこともあり、昨年度よりベトナムの日本語学校で宿泊業や地域講座を開設する実証研究を計画している。そのため、当初の計画では予定していなかったが、継続的な日本語学校での調査旅費をはじめ、鳥羽市への回数を増やした毎月の調査訪問を含め、調査旅費として使用を予定している。
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Research Products
(1 results)