2018 Fiscal Year Research-status Report
ネット社会におけるインバウンド観光客・定住者を意識した文化伝達の言語表現
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18K11849
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
平松 裕子 中央大学, その他部局等, 客員研究員 (30649629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐良木 昌 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (20770960)
原田 康也 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80189711)
森下 美和 神戸学院大学, グローバル・コミュニケーション学部, 准教授 (90512286)
伊藤 篤 宇都宮大学, 工学部, 教授 (80500074)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 言語景観 / 翻訳 / 観光 / インバウンド / 文化 / スマートフォンアプリケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度調査は、4種類(5回)を実施した。 5月には2017年の JR日光日光駅から神橋までの沿道における言語景観調査結果をもとに、中央大学内の外国人留学生40名を対象とし、日光の英語・日本語で表記された言語景観評価を実施した。その結果、正確な翻訳が必ずしも被験者の好感度が高いとは限らず、観光客に対して丁寧な説明があるものを評価する傾向が見られた。英語理解度と表記評価には相関は見られなかった一方で「旅行が好きか」という問いと「満足度」は r=0.409と正の相関が見られた.発信者だけでなく受信者の意欲も表記評価の結果に関わった。また、英語をあまり理解しない留学生が併記された写真やイラストで楽しんだ一方で、英語を母語とする学生の中には誤訳が多い掲示に関しては修正を始めたり、部分的な英訳にストレスを感じたりした者もあった。7月、11月の2回、日光におけるJR日光駅から神橋の継続言語景観調査を実施し、言語表記の変化を観察した。11月には、日光の沿道調査に準ずる形で、神戸における言語景観調査を実施した。日光同様に公共掲示におけるアルファベット地名表記の不統一が見られた一方、神戸には日光と比較してアルファベットのみの表記が多いなど、地域の特徴が見られた。なお、これら調査時に見られた訳しにくい語の翻訳、誤訳に関するWebアンケートアンケートも実施した。 研究成果としては、6月には、第143回次世代大学研究会において「日光の言語景観」を発表し、9月には日本認知科学会第35回全国大会におけるオーガナイズドセッション「食文化の固有性・共通性から考える翻訳可能性」の中で、沿道に展開される飲食店、和菓子屋など和食を扱う箇所に注目した企画を行なった。また、12月には科研費合同研究集会を早稲田大学において実施した。2019年3月には電子情報通信学会思考と言語研究会において発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
言語景観現地調査に関しては、予定通りに日光を中心に1年で3回の実施できた。日光2回、比較対象として神戸で1回、観光客の歩く地域において言語景観を調べた。加えて、この結果をもとにした留学生評価および、webアンケートも実施することができた。言語に関しては、日本語英語間の翻訳が中心であるが、中国語ー日本語間に関しても調査研究を行えた。 調査結果を集計分析し、成果に関しても、日本認知科学会、次世代大学研究会、電子情報通信学会における研究会と、多くの発表の機会を得た。加えて、この発表結果は日光市観光協会にも伝た。初年度の目標を達成することができ、調査地域にも研究結果を活かす入口を作ったと言える。 加えて、当初初年度では予定していなかった認知科学会全国大会におけるオーガナイズドセッションの企画運営、発表もできた。テレビ局より中国語翻訳に関して取材もあった。発表論文を読んでの問い合わせであった。 これらの発表を通じ国内外の研究者との繋がりもできた。言語景観や外国人観光客対応に関して意見交換が始まり、シンガポール在住の研究者を中心にアジアにおける言語景観に関して本を書くという計画に加わることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
調査継続に関しては日光及び神戸における継続調査続行する。言語景観は変わりゆくものであり、地域の状況を反映する。経年での調査を実施し、その変化を知る。表示内容の変化と地域の状況把握をする。 そして言語景観調査データ2年分の集計分析を行う。どのような事項に関しての翻訳が多いのか、わかりにくい訳の特徴、翻訳の傾向をつかむ。また、特に文化的な内容を含む表記に関して、Webアンケート結果ももとに考察を進める。 また、研究成果の発表としては国内の学会における発表に加え、“Linguistic landscapes, a mirror of sociolinguistic phenomena” (Seyed Hadi Mirvahedi編 )の最後の章「15.Translation, Translanguaging and Transcending Cultures and Heritage: Linguistic Landscape along the Traditional Pilgrimage Path in Nikko」を執筆予定である。これによって、国内のみならず海外の状況の中での日本の言語景観の特徴など広がりを持った研究とする。 また言語景観を自動翻訳するスマートフォンアプリケーション利用による言語景観の変化も検討する。他人から提供されたものより自分から動いたものに対して、人は甘い傾向があるため。この場合、不十分な内容で観光客は自己満足の可能性があり、地域とのギャップが生じることもありうる。その一方で観光の際には外国人は地域とのふれあいを求める傾向もあり、実際のスマホ利用の観光との間に開きがある。この点に関しては2019年あるいは最終年度に調査を実施したい。最終的にはアプリへの研究成果の反映を目的にしたコンテンツ考案を目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用金が出たのは、活動としては本研究に従事したが、交通費などが他の学会参加などと重なったために支払いをしなくてもよかった研究者がいたなどの理由。また、2019年において、海外の研究者との本の作成など、国内に限らない交流や学会発表の可能性があり、費用をこのようなますますの研究の発展に使用しようと考えたため。 2019年度のオーガナイズドセッション(認知科学会:静岡)、神戸、日光における調査に加え、金沢大学の研究者やアジア在住の研究者との共同研究や意見交換といった広がりを持つために費用を使用する予定である。
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Research Products
(6 results)