2020 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Relationship Management between DMOs and Stakeholders in Destination Management
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18K11866
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
大野 富彦 群馬大学, 社会情報学部, 准教授 (20531924)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 観光地経営 / DMO / ステークホルダー / 関係性マネジメント / 合意形成 / 経営学 / 編集者 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続きDMOと地域のステークホルダーとの関係について研究した。新型コロナウイルス感染症の影響により,予定していたフィールドワークは十分にできなかったものの,特に,地域連携DMOである雪国観光圏,信州いいやま観光局,秩父地域おもてなし観光公社へのインタビューを重ね,得られた情報をもとに分析していった。研究成果は以下の通りである。地域では,DMOがプラットフォームとして中心になって活動するというよりも,コミュニティとも呼べるいくつもの組織があり,それぞれの目的に基づき活動している。時には重なりながら時には同じステークホルダーが複数の組織に参加しながら活動している。こうした地域において,DMOはステークホルダーをリスペクトし,そしてステークホルダーとのゆるやかな連携により「舵取り」していくのが現実的な姿である。 また,DMOによって,a)特定のステークホルダーとの関係性を深め活動し,その後,関係するステークホルダーの数が増えていくタイプ(雪国観光圏),b)逆に,比較的多くのステークホルダーとつながり,必要に応じて特定のステークホルダーと活動するタイプ(秩父地域おもてなし観光公社),c)これら両方の要素をあわせもったタイプ(信州いいやま観光局)に分けることができた。 本年度はさらにa)のタイプについての検討を行った。このタイプは,ポーターら (2011)の主張するCSV(Creating Shared Value)に近いため,DMOをCSVの視点から考察した。雪国観光圏はポーターらが指摘するクラスターを形成し活動している。しかし,本業(旅館業経営)を通じて社会的価値と経済的価値を同時に創造しているかといえば,そうではなく,本業と地域(DMO)活動を分けて行っており,CSVの地域版とも言えるものである。今後,DMO等の事例を加えていき,この考えの精緻化を図っていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来は,昨年度が研究最終年度であったが,新型コロナウイルス感染症の影響により研究活動を予定通りに進めることが難しかった。特に,本研究はフィールドワークが中心であるため,思うように現地に行くことができなかった。年度中盤から,近隣へのフィールドワークやオンラインでのインタビューを行い,情報を集めていったが,研究全体としてはやや遅れ気味である。そのため,「補助事業期間延長承認申請書」(F-14)により,研究を1年延長していただいた。 新型コロナウイルス感染症の影響は,現在も続き,本研究の対象である観光地,DMOの取り組みにもかなりの影響が出ている。こうした状況は,本研究を進めていく上で困難を伴うものだが,協力していただいているDMOとは良好な関係を築けており,可能な限りの情報を集め,整理・分析し,この1年で,DMOとステークホルダーの関係性についての成果を出していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の影響という困難は伴うものの,オンラインでのインタビューを増やして情報を集めるなど,基本的には当初予定していた研究を進めていく。この困難な状況でも,DMOのなかには地域の観光インフラの整備や,2,3年後を視野に入れてインバウンド観光への準備を進めているところがある。こうしたDMOの取り組みも本研究に取り入れていく予定であり,最終年度の研究は,次の3つについて進めていく。1つ目は,継続的にインタビューを実施し,DMOの活動展開プロセスやCSVに関することの情報を集めていく。2つ目は,可能であればオンライン等も活用してワークショップを実施できればと考えている。現在指導している社会人大学院生には,群馬県みなかみ町をフィールドに研究している者や群馬県のある経済団体に勤める者がおり,当該大学院生との共同で実施できるか検討する。3つ目は,本研究の成果を広く公表することである。インタビュー等で得た情報を質的研究の方法論を用いて,本研究の目的であるDMOとステークホルダーの関係性について分析し成果としてまとめていく。最終的には,インタビューでお世話になっているDMOとステークホルダー等への報告書を作成するとともに,学会に論文を投稿する。 研究を遂行する上で,新型コロナウイルス感染症の影響をどのように捉え対応していくかという課題がある。インタビューをオンラインで行うことはできるが,本研究では,現地で情報を集めることも重要な活動になる。また,ワークショップに関して,昨年度は,試験的なかたちで大学院生,学部生とともにみなかみ町のある地域で勉強会を行い,今年度は,それを発展させていきたいが,十分には行えない可能性がある。 このように新型コロナの影響により,本研究の進め方も変わらざるを得ない可能性はあるが,柔軟に対応していきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響でDMOへのインタビューに要する費用(旅費等)が低かったことが大きい。 今年度は,「今後の研究の推進方策」の内容にかかる支出が予定され,特に,DMOや先進的な取り組みを行う企業等への旅費等が発生する。業者へのテープ起こし依頼に係る費用もある。また,インタビューで得られた情報を効果的に分析するために,(昨年度,購入を予定していた)質的データ分析のソフトウェアを購入することも考えている。 研究最終年度ということから,協力していただいているDMOやそのステークホルダー等に向けた報告書の作成が多くなる。その関係で,情報整理のためのアルバイト代や印刷費用が相応に発生する。 いずれにしても,当初の研究目的を達成すべく研究を進めていき,価値ある研究成果を上げたい。
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