2019 Fiscal Year Research-status Report
独墺の観光事業に見る「ロマンティック・イメージ」形成についての文化史的研究
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18K11867
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小宮 正安 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (80396548)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 文化史 / 観光史 / 音楽史 / 交通史 / 社会史 / 観光学 / 地域研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の調査を継続しつつ、平成31年度/令和元年度は、ドイツとオーストリアにおける神聖ローマ帝国時代の代表的都市であるフランクフルトとウィーン、代表的観光街道であるロマンティック街道とアルペン街道を具体的な事例の中心に据えながら、観光政策を通じて浮かび上がるロマンティック・イメージの変遷、ならびにそのようなイメージに基づいて作られる各都市や観光街道のイメージが「観光立国」としてのドイツやオーストリアにいかなる形で反映されたのか、という問題についての詳細な分析をおこなった。 特にロマンティック街道に関しては、5~6月および9月に現地調査をおこない、レンタカーの発達にともなうロマンティック街道バスの減便、ならびに同バスの今後の展開について、インタビュー形式の取材を実施でした結果、本研究に交通史の視点を加味できたことには大きな意味があった。さらに、現ロマンティック街道バス経営者ならびにロマンティック街道観光統括者のユルゲン・ヴュンシェンマイアー氏から、同街道のそれぞれの街における各国からの観光客の推移に関する統計資料、同街道の海外へのPR方法、同街道の歴史やバスに関する新たな情報を入手することができた。 また「ロマンティック・イメージ」に関しては、同街道以外においてもニュルンベルクやフランクフルトにおいて取材調査をおこなった他、2020年にアニヴァーサリーイヤーを迎えるベートーヴェンとの繋がりにおいてウィーン楽友協会資料館での調査を続行し、「ロマンティック」とうキーワードを核に、ドイツ語圏では19世紀半ば以降、音楽、文化、観光の密接な関係が展開され今日に至っている状況について、さらなる知見得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年/令和元年12月までは概ね順調に進捗していたが、令和2年に入ると新型コロナウィルス感染症の拡大にともなって、海外からの研究者の来日中止が相次いだため、彼らとの意見交換ならびに情報交換が不可能になってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度には、平成30年度ならびに平成31年/令和元年度の調査を踏まえ、包括的な結果に至ることを目指している。ただし新型コロナウィルス感染症の収束が明確になっていない現時点においては、既に6月に予定していたドイツ語圏での調査を断念せざるをえず、また夏以降もどのような状況になっているか、見極めの難しいところである。また感染症対策ということでは、国内における資料の閲覧についても、図書館や資料館が閉鎖される中で、予断を許さないものがある。国内での緊急事態宣言がようやく解除された現時点では、これまで収集した資料の分析ならびにアーカイヴ化を進めながら、可能な範囲での研究の推進をおこなってゆく予定である。 具体的には、1)イメージ戦略をめぐる日本とドイツ・オーストリアのツーリズムの比較分析を通じ、2)我が国で展開されてきた「ロマンティック・イメージ」を通じたドイツおよびオーストリアの観光戦略、ならびに3)そこから演繹される我が国のツーリズムに対する方法論の検討と提言、が研究の主たる柱になろうが、これも今後の新型コロナウィルス感染症次第というところもある、というのが研究を取り巻く現状に関する認識である。
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Causes of Carryover |
消費税が10パーセントに引き上げられたことに伴い、購入予定であったBD内蔵のハイスペックモバイルPCの購入が不可能になり、次年度の配分と合わせて購入予定のため。
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