2020 Fiscal Year Research-status Report
A Sociological Study of Multicultural Networks for Community Development and International Tourism
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18K11879
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
本田 量久 東海大学, 観光学部, 教授 (90409540)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 玲子 成蹊大学, 経営学部, 教授 (90366930)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トランスナショナル・ネットワーク / VFRツーリズム / 地域活性化 / インバウンド観光振興 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度(2019年度)まで、糸魚川などを訪問し、地域活性化やインバウンド観光振興を目指す地域内外ネットワークの実践とその有効性を調査した。また訪日スイス人観光客の拡大に貢献するスイス人トランスナショナル・ネットワークの影響力を理解するためにチューリッヒなどで聴き取り調査を重ねた。令和2年度(2020年度)は、以上の現地調査を継続する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う移動制限のためにこの計画を変更し、これまでの調査結果をまとめるとともに、R.パットナムやJ.アーリの議論を参照しながら、地域活性化やインバウンド観光振興に関する理論モデルの洗練を図った。 本研究の調査対象地である糸魚川には一定数の外国人観光客が訪れ、そのうちスイス人観光客が相対的に多いという特徴がある。首都圏在住のスイス人A氏は、定期的に糸魚川を訪れ、糸魚川ネットワークと協働しながら地域活性化とインバウンド観光振興に貢献している。 また、欧米・アジア出身の外国人住民が居住し、日本人住民とともに地域活性化や観光振興に貢献している。日本人住民にとっても外国人住民にとっても住みやすい多様性に開かれたまちは、R.フロリダの創造都市論が示すように新たな価値を創出し、またアーリらが論ずるように国境をも越えた拡張的社会ネットワーク(dispersed social network)を発展させ、情報フローの拡大とVFR(Visiting friends and relatives)ツーリズムの推進をもたらしうる。糸魚川調査は、地域活性化や観光振興を推進する越境的な多文化ネットワークとその機能に関する理論モデルを構築するうえで有効であろう。 糸魚川/スイス調査の成果を研究ノートにまとめるとともに、観光社会学的な文献を読み込んだ結果、理論モデルの洗練を図ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和2年度(2020年度)は、地域活性化やインバウンド観光振興に関する理論モデルの洗練を進めることができた点で成果があった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大に伴う移動制限のために現地調査が実施できず、理論モデルの妥当性を検証することができなかった。また、コロナ禍に伴う移動制限によって、地域活性化やインバウンド観光振興に関する本研究の前提条件が揺るがされている。糸魚川ネットワークにせよ、スイス人トランスナショナル・ネットワークにせよ、社会ネットワークの構築/継続過程においてアーリが特に重視する対面接触が大きく制約されるなど、これまで蓄積した本研究の調査結果を読み直す必要性を認識している。令和2年度(2020年度)までにまとめた調査結果をもとに学術論文を執筆していたものの、以上のことから、部分的に本研究の軌道修正を図るべく、研究成果の発表を回避せざるをえなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究における理論モデルの妥当性を検証すべく、コロナ禍で中止せざるをえなかった現地調査を再開したいと考えるが、しばらくの間は期待しにくい。よって、令和3年度(2021年度)は、これまでの研究成果を踏まえつつ、越境的な多文化ネットワークが実践する非対面的コミュニケーションについて追加的に調査する。アーリらが指摘するように、社会ネットワークにおけるつながりは、遠隔地で生活する場合など、対面接触が困難な状況においては、その補助的な手段としてEメールなどを媒介とした非対面的コミュニケーションによって構築/維持される。では、長期間にわたって対面接触が困難であり、また外国人観光客が日本を訪問できないという状況にあって、糸魚川ネットワークやスイス人トランスナショナル・ネットワークはどれくらいの頻度でどのような内容の非対面的コミュニケーションを実践しているだろうか。コロナ禍が終息すれば、これらの越境的な多文化ネットワークは、糸魚川の地域活性化やインバウンド観光振興を推進すべく、対面コミュニケーションを伴う具体的な協働を再開するはずであり、その準備に向けた非対面コミュニケーションはこれらのネットワークを構築/継続する効果をもちうる。このような問題関心にもとづき、ポストコロナ時代も視野に入れた長期的観点から、糸魚川ネットワークやスイス人トランスナショナル・ネットワークの非対面的コミュニケーションとその効果を調査し、これまでの調査成果と理論モデルの接合を図りたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍に伴う移動制限のため、糸魚川やスイスなどで現地調査を実施できず、また学会大会参加による出張もなかったことから「旅費」の支出はまったくなかった。以上の理由より研究費を使用できず、残額が発生したことから、研究期間の延長手続きをし、その承認を得ることができた。令和3年度(2021年度)は、 (1)文献購入費、(2)論文や報告要旨の英文校閲費、(3)聴き取り調査の謝金として研究費の支出を予定である。
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