2018 Fiscal Year Research-status Report
東日本におけるクルーズ観光活性化のための新たな寄港地選定と誘致方策の検討
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18K11880
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
桜井 慎一 日本大学, 理工学部, 教授 (30170640)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 寄港魅力度の算定 / 東日本の港湾・漁港 / ヒアリング調査 / 現地調査 / 港湾管理者 / 地方自治体 / 観光協会 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)データに基づく寄港魅力度の算定 統計データや地理情報等を基に,当該港湾・漁港への陸路でのアクセス不便性を示す「アクセス指数」に,当該港湾・漁港の付近に存在する観光資源の多寡を示す「観光地指数」を乗じ,北海道および東日本の港湾・漁港ごとに「寄港魅力度」を算定した。 (2)寄港実績に優れた港湾等の実態調査 クルーズ船の受け入れに実績のある港や,大型クルーズ船の誘致を目指して専用ふ頭の整備等を実施・計画している港などを訪れ,港湾管理者,自治体担当者,地元の観光業者等を対象としたヒアリング調査を実施した。なお,本年度に訪問した地方自治体等は次の通りである。釧路市役所水産港湾空港部港湾空港振興課,釧路港利用促進協議会釧路クルーズ振興部会,根室市役所水産経済部港湾課,羅臼町役場産業創生課,網走市役所建設港湾部港湾課(以上2018年7月に実施),舞鶴市役所みなと振興・国際交流課,日南市役所観光・スポーツ課クルーズ振興室,日向市役所商工観光部観光交流課,宇和島市役所建設部建設課および産業経済部商工観光課,宇和島市観光物産協会(以上2018年11月に実施),別府市役所観光戦略部観光課,佐世保市役所港湾部みなと振興・管理課および観光商工部観光課,長崎市役所文化観光部観光推進課、長崎港クルーズ客船受入委員会(以上2018年12月に実施) (3)中国・香港から大量に日本を訪れている大型クルーズ船の実態を把握するため,深せんで開催された第13回中国クルーズ産業発展大会(CCS13)に参加するとともに,香港を母港とするゲンティン社の大型クルーズ客船 World Dream号に乗船し,多様な船内アクティビティなどを体験した。また,ゲンティン本社を訪問して日本を寄港地とするクルーズ観光の現状と将来,日本の受入港湾の改善すべき点等に関して意見を収集し,拠点としている啓徳クルーズターミナルを視察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書に記載した平成30年度の研究計画では,①データに基づく寄港魅力度の算定,②寄港実績に優れた港湾等の実態調査の2点を行う計画であった。 ①については,クルーズ船の寄港実績の少ない東日本(北海道,東北地方,北陸地方)の沿岸に整備された港湾および漁港を対象として,統計データや地理情報等に基づきを基に,港湾・漁港ごとに「寄港魅力度」を算定することができた。 また,②については,既に多くのクルーズ船を受け入れてきた実績のある港など計10港程度を訪れ,港湾管理者,自治体担当者,地元の観光業者等を対象としたヒアリング調査を行う計画であったが,これについても,釧路港,根室港,羅臼漁港,網走港,舞鶴港,油津港,細島港,宇和島港,別府港,佐世保港,長崎港の計11港での調査を実施できた。 さらに,日本を訪れている大型クルーズ船の実態を把握するため,深せんで開催された第13回中国クルーズ産業発展大会を視察するとともに,香港を母港とする大型客船にも体験乗船し,その実態を把握できた。また,香港の船社,ゲンティン本社を訪問し,日本を寄港地とするクルーズ観光の現状と将来,日本の受入港湾の改善すべき点等に関して意見を交換することができた。 以上,当初の計画を上回る調査活動を行い,また,それに応じた成果を得ることができたので上記の自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の初年度にあたる平成30年度は,当初の予定通りに研究計画を遂行できたので,平成31年度も研究計画調書に従って次の通り調査研究を推進していく予定である。 1.クルーズ船を受け入れてきた実績のある港のうち,本土にある主要港湾については,平成30年度に計11港を訪れ,港湾管理者,自治体担当者,地元の観光業者等を対象としたインタビュー調査を実施したが,平成31年度は,離島にある港湾を対象として,同様なヒアリング調査を行う予定である。調査内容は,平成30年度調査とほぼ同様であるが,特に大きな埠頭を持たず,また,下船後の観光が島内に限定されるという制約が,クルーズ観光に及ぼす影響を把握する。 2.平成30年度に実施した寄港魅力度の算定結果に基づき得られた東日本(北海道,東北地方,北陸地方)の「寄港候補地」10か所程度を対象として,それぞれの地元自治体,港湾管理者,漁協などを訪問してヒアリング調査を実施する。調査内容は,クルーズ船の受入可能性,誘致に対する地元支援の有無,寄港地となった場合の船社や国・県等への要望,泊地に適する海域の有無,沿岸の漁業実態,定置網や航路の現状,上陸後に使用する道路交通網の現状などを聞く。 3.現在,クルーズ客船を運航している日本船社3社,長距離の大型カーフェリーを運航している日本船社計10社程度を対象としてインタビュー調査を実施する。調査内容は日本を周遊するクルーズ事業への参入意向,東日本における新たな寄港地開発を要望したい場所,寄港地や停泊地に相応しい海域等の条件,上陸地点となる港湾や漁港に求めたい条件,寄港地となる自治体・港湾管理者・漁協等への要望等である。
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Causes of Carryover |
ヒアリング調査を予定していた地方自治体や港湾管理事務所等のうち,先方の都合等で平成30年度に訪問できない場所があったため,次年度使用が生じた。 残額については,平成30年度に訪問できなかった自治体等と再度スケジュール調整を行い,当初の計画に沿って,現地を訪問して行うヒアリング調査,港湾整備実態調査の旅費交通費に充当する予定である。
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