2018 Fiscal Year Research-status Report
訪日外国人旅行者との対話モデルの構築:対話原理に基づく意味共有と価値創造の体系化
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18K11881
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
高梨 博子 日本女子大学, 文学部, 准教授 (80551887)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インバウンド観光 / アイデンティティ / 対話理論 / コミュニケーション / 間主観性 / バフチン / 地域づくり / ボランティア活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、バフチンの対話原理と対人関係の関連理論を発展的に解釈し、インバウンド観光における対話的交流やアイデンティティ形成への適用、対話の質的向上や人材育成・地域づくりに向けた調査研究を、研究協力者の中野と共に行った。このため、欧州3か国(ハンガリー、オーストリア、イタリア)とニュージーランド、国内では、奈良、京都、浅草、箱根などでウォーキングツアーに参加し、対話における響鳴、参与者間の関係性構築等の視点から分析した。調査の中では、対話観察のほか、旅行者やガイド、ガイド団体や自治体・有識者にインタビューを実施した。この結果、ホストと旅行者間のふれあいのきっかけづくり、双方からの接近の意欲とやりとり、言語・非言語表現を通じた「その土地らしさ」の体感、双方による「楽しみ」の共有などが重要であることが判明した。 この成果は、6月の社会言語学シンポジウム(オークランド)、9月の国際社会言語学会(ブダペスト)、10月の日本交通学会(於青山学院大学)と日本国際観光学会(於江戸川大学)で発表した。日本交通学会の関係では『交通学研究』に3月に論文を発表したほか、今回活用する主要な理論の1つであるスタンスに関し、ジョン・ベンジャミンズ社の本に執筆した著作が12月に出版された。 2018年度の集大成として、2019年3月に、交通・観光関係の総合的なシンクタンクである(一財)運輸総合研究所でセミナーを開催し、本年度の調査で協力を得た小田原・箱根SGGクラブと日本政府観光局と共に発表した。本セミナーには、大学等の研究機関、国土交通省、地方公共団体、観光関係者、鉄道ほか交通事業者、コンサルタントなどから110名を超える参加者があり、活発な質疑応答・意見交換が行われ、幅広い関係者への啓発・情報発信を行った。セミナーの概要は同研究所のホームページで公開されており、機関誌での掲載も予定されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標は、国内外でのデータ収集と分析、バフチンの対話原理に基づく理論的枠組みや実施手法の整理、シンポジウムの開催であったが、国内外でのフィールドワークの実施、学会での発表、国・自治体・有識者・観光団体・事業者の参加するセミナーでの発表や意見交換ができたことから、概ね順調に進んでいると考えている(※)。 国内外ではウォーキングツアーのほか、盆栽や浮世絵などの日本の伝統文化の分野において第一線で活躍する人たちの外国人観光客との交流の実態も観察・インタビューを行うことができた。また、今回活用する主要な理論の1つであるスタンスに関し、ジョン・ベンジャミンズ社の本に執筆した著作が12月に出版されており、これらの点については、本年度の大きな成果といえる。 ※運輸総合研究所の運輸政策セミナーでの講演の概要は、同研究所の以下のアドレスに公開されている。さらに、講演の報告がホームページおよび機関誌に掲載される予定である。 http://www.jterc.or.jp/koku/koku_semina/190307_seminar.html
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、理論面では、バフチンやゴフマンをはじめ、言語学だけでなく、社会学、文化人類学や心理学、経営学、地域計画や行政学など学際的な視野を広げ、対話的交流や観光地のアイデンティティの構築に係る各論の分析、戦略的な展開、地域づくりへの活用方策を検討し、対策の体系化に向けた研究を推進していくこととしている。学会活動では、6月に国際語用論学会(香港)および愛知大学人文社会学研究所シンポジウム、11月の日本英語学会(於関西学院大学)のシンポジウムなどで発表することとしている。 また、調査面では 旅行客増加が見込まれるアジアの地域や、国内のローカル地域の調査を進めていくほか、日本の伝統文化に係る外国人との交流や情報発信の在り方についても、検討を進めていく。 さらに、成果のフィードバックの面では、7月に小田原・箱根SGGクラブ(外国人旅行客ガイドのボランティア団体)の研修会での講演をはじめ、これまで協力をお願いしてきた自治体やボランティアガイドの方々との意見交換等を行い、成果の内容を充実させ、社会に還元していきたい。この観点からは、効果的な啓発と幅広い理解のため、国や自治体、事業者、教育機関、ガイド等に向けた観光セミナー等での講演やシンポジウムを開催する予定である。 2019年度はラグビーワールドカップ、2020年度はオリンピック・パラリンピックが開催され、地方部を含め旅行者の一層の増加が見込まれるところである。このため、成果をできるだけ前倒ししてまとめるべく、なるべく早い時期に、著作の出版を計画している。
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Causes of Carryover |
パソコンの購入について、当初予定していたノートブックから、価格が少し低いデスクトップに変更したため、残額が生じた。次年度交付額と併せて、今年度の研究調査のための海外出張費に充てることを計画している。
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Research Products
(8 results)