2019 Fiscal Year Research-status Report
訪日外国人旅行者との対話モデルの構築:対話原理に基づく意味共有と価値創造の体系化
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18K11881
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
高梨 博子 日本女子大学, 文学部, 准教授 (80551887)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インバウンド観光 / アイデンティティ / 対話原理 / コミュニケーション / 間主観性 / バフチン / 地域づくり / ボランティア活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、研究協力者の中野とともに、バフチンの対話原理と対人関係の関連理論を発展的に解釈し、インバウンド観光における対話的交流やアイデンティティ形成への適用、対話の質的向上や人材育成・地域づくりに向けた調査研究を行った。海外では、ドイツ、香港、ベトナム、インド及びスリランカ、国内では、京都や大阪、富士五湖周辺でのウォーキングツアー等に参加し、ホストとゲスト間の対話観察のほか、旅行者、ガイド及びガイド団体、自治体等にインタビューを行った。また、対話における響鳴、参与者間の関係性構築等の視点から、国内観光地(鎌倉、福島、河口湖)及び海外の旅行当局(ベルリン及びドレスデン)へのインタビュー、国内外の有識者との意見交換(カリフォルニア大学やドレスデンの大学教授、観光情報発信に携わるNPO法人等)、学会や研究会での情報収集や意見交換を通して調査の充実を図った。 これらの結果、ホストとゲスト双方からのポジティブな働きかけと共感、言語・非言語表現を通じた観光地のアイデンティティの創発などが重要な要素であることが判明した。 研究成果は、6月の愛知大学人文社会学研究所シンポジウムと国際語用論学会第16回大会(於香港理工大学)、9月のアジア交通学会第13回国際大会(於コロンボ)、10月の日本交通学会第78回研究報告会(於東京女子大学)、11月の日本英語学会第37回大会シンポジウム(於関西学院大学)で発表した。アジア交通学会の発表論文は12月にオンライン出版され、第59回運輸政策セミナー(2019年3月開催)及び愛知大学でのシンポジウムの発表報告書は、それぞれ2020年2月と3月に公表された。また、12月には、現地調査やセミナーでの発表等で協力をいただいたボランティアガイドクラブで招待講演と意見交換を行い、現地で活動を行っている方への発信活動を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の目標は、初年度に引き続き、国内外でのデータ収集と分析、バフチンの対話原理に基づく理論的枠組みや実施手法の整理、学会等での発表であったが、国内外でのフィールドワークの実施、自治体や有識者へのヒアリングや意見交換、学会等での発表および大会発表論文や報告書の出版等を実施しており、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、国内外の有識者との意見交換や補完調査を実施したうえで、3か年の調査を総括し、学会での論文発表、著作の出版やセミナー等の開催などにより、成果を幅広く発信していくこととしている。 調査の成果については、バフチンの対話理論をはじめ、言語学、社会学、文化人類学、心理学、経営学、地域計画や行政学などの学際的な観点から収集データを分析し、対話的交流や観光地のアイデンティティの構築、戦略的な展開、地域づくりへの活用方策を検討し、知見を理論化かつ体系化していく予定である。 学会活動では、8月にプラハで開催予定の国際社会言語学会の国際大会(既採択)、10月の日本国際観光学会等で発表する予定である。2018年度及び2019年度には、政府や自治体の関係者、事業者や有識者が幅広く参加したセミナーの開催や地域のボランティアガイドクラブでの講演等を通して、地域の活動へのフィードバックを行ったが、2020年度においても積極的に発信の機会を設けたいと考えている。 2020年5月現在、新型コロナウイルスの感染拡大は、観光を含めた経済や産業に、世界規模で、過去に例のないレベルの影響を及ぼしている。こうした中、「ポストコロナの新たな時代の観光はどうあるべきか」との視点にも立って、2021年度の東京オリンピック・パラリンピックへの対応やこれからの観光や交流の姿を見据え、3年間の調査分析を踏まえた知見をとりまとめたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初の計画では最終年度に行う予定だったデータの書き起こし作業を前倒しで開始したため、それに係る経費が必要となった。作業は次年度も継続して行う予定である。
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