2019 Fiscal Year Research-status Report
A Social Anthropological Research on the Development and Transformation of Tourism in the Mediterranean Region of Turkey with a Focus on Roads and Local Footpaths
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18K11888
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Research Institution | Fukuoka Jo Gakuin University |
Principal Investigator |
田中 英資 福岡女学院大学, 人文学部, 准教授 (00610073)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 文化遺産 / 観光開発 / トレッキングツーリズム / トルコ / 地中海 / 移牧民 / 地域信仰 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、英国ケンブリッジ大学マクドナルド考古学研究所にて長期在外研修を行うなかで、本研究課題に取り組むことができた。具体的には、春(4月17日‐5月5日)、夏(8月17日~8月27日、9月12日~9月16日)、秋(10月10日‐10月29日)と3回にわたってトルコでの現地調査を行った。また、8月に北海道大学で行われた国際セミナーにおいて、本研究課題に関わる研究発表を行った。 まず、春の調査ではトルコ地中海地方の「リュキアの古道」トレッキングルート上のゲレミシュ村とカレ・ウチュアウズ村に滞在し、ホテルの経営者や滞在している宿泊客への聞き取りのほか、滞在地周辺で「リュキアの古道」を実際に歩くことを含めた調査を行った。特に、ゲレミシュ村で4月に行われるリュキアの古道を利用した観光推進イベントの実施状況の参与観察を行った。夏の調査では春の調査を補いつつ、ゲレミシュ村でかつて移牧を行っていた人たちへの聞き取りを継続した。秋の調査では、デムレで行われるアウトドアフェスティバルの参与観察を行ったほか、アンタルヤを拠点として「リュキアの古道」や「聖パウロの道」など、トルコ各地の文化・歴史をテーマとしたトレッキングルートを管理するNGO "Culture Routes Society"の担当者に聞き取りを継続した。 8月に行われた北海道大学メディア・ツーリズム研究センター主催の文化遺産と観光に関する国際研究セミナーでは、'Ancient Lycia and the Nomadic Past: Heritage and Tourism in Gelemis, South Turkey'と題した研究発表を行った。この発表では、古代リュキア文化の遺跡が数多く残り、20世紀後半まで移牧が盛んに行われていたトルコ地中海地方において、古代アナトリアの文化遺産と移牧の過去が観光を通してどのように結びつけられているのかについて検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は長期在外研修の一環で本研究課題に取り組める環境にあり、校務に関係なく柔軟に現地調査のスケジュールを組めるメリットを生かすことができた。特に、3週間程度のトルコでの現地調査を3回行うことができただけでなく、毎年4月下旬に行われているゲレミシュ村での「リュキアの古道」を歩くイベントや、10月末に行われているデムレのアウトドア・フェスティバルなど、通常であれば授業期間と重なる時期に行われているために調査が難しいイベントへの参加が可能となったのは本研究課題を進展させるうえで非常に大きかったと考える。平成30年度は、当初の計画通りに進めることができていなかったが、その遅れを取り戻すことができたと考える。 以上より、おおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、本研究課題の最終年度であり、研究成果のまとめに入らなければならない。まず、5月末日本文化人類学会 第54回研究大会において、「文化遺産、観光、地域社会のインタラクションと道―トルコ地中海地方「リュキアの古道」トレッキング観光を事例として」と題した研究発表を行う(なお、本学会はオンラインで実施され、発表日は5月31日。)。合わせて、5月初めと10月中旬にトルコでの現地調査を継続し、収集した研究データの補完する予定であった。しかし、折からの新型コロナウィルス感染症(Covid-19)の問題によって、まず5月のトルコでの現地調査は中止せざるを得なくなった。この感染症の問題は、収束のめどが立っておらず、10月中旬にトルコへ渡航して調査を行うことも難しくなる可能性が高い。これまでの研究データの整理、分析は進めつつ、今年度中の渡航が難しいと判断できる場合は、研究課題の延長も含め、研究計画を柔軟に変更することで対応したい。
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Causes of Carryover |
令和元年度はトルコでの現地調査は3回実施したが、長期在外研修期間中であったため、すべて英国からのトルコへの渡航となったが、英国からの航空券等を安価に購入することができた。また、近年続いているトルコリラ安が続いている。そのため、当初想定していたよりも宿泊費が安くなった。 令和元年度の残額については、トルコへの渡航調査及び研究図書の購入で費消していく予定である。ただし、新型コロナウィルス感染症の問題が継続中であり、現時点ではトルコに渡航できる状況になるかが現時点では不透明である。
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