2023 Fiscal Year Annual Research Report
A Social Anthropological Research on the Development and Transformation of Tourism in the Mediterranean Region of Turkey with a Focus on Roads and Local Footpaths
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18K11888
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 英資 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (00610073)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 観光開発 / レンタルヴィラ / 観光地イメージ / ヘリテージ / トルコ |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度となった2023年度は、前年度の2023年3月に行った調査の整理を中心に進め、まとめた内容の公表を学会研究発表の形で行った。 これまでの調査地の一つであるトルコ地中海地方のゲレミシュ村では、コロナ禍によって2年間調査できなかった間に、観光のあり方が大きく変容したことがわかった。まず、村にあるパターラ遺跡については、2020年が「パターラ年」とされ、観光推進を目的とした史跡整備がコロナ禍であっても進められ、見学者が大きく増加していた。また、ローマ帝国時代に建てられた灯台の再建事業も進められており、トルコ政府によってパターラ遺跡が地中海地方を代表する遺跡のひとつとして位置づけられつつあることを確認できた。 加えて、観光開発の進展によるゲレミシュ村の景観の変容にも注目した。コロナ禍以前から、ゲレミシュ村の周辺では家族連れや数人の団体客向けにキッチンやプールなどを備えたヴィラを一棟貸しする観光のあり方が人気を集めており、それが本課題の研究対象である「リュキアの古道」のトレッキングルートにもルート変更などの影響を与えるようになっていたことは確認できていた。しかし、2020年以降のコロナ禍のなかで、接触回避のしやすさからもレンタルヴィラへの宿泊に人気が高まったことを背景に、ゲレミシュ村においても、レンタルヴィラの建設が急速に進んだことがわかった。それにより、村がオーバーツーリズム状態になってきていることも聞き取り調査から明らかになった。 研究期間全体を通して、トルコ地中海地域における交通インフラとしての道路網整備、観光開発、考古遺跡の発掘・整備といった動きの相互作用のなかで、「リュキアの古道」トレッキング観光が生み出されただけでなく、この観光のあり方がこの地域の人々のヘリテージに対する意識の変化を含めた地域社会のさらなる変容にも関わっている状況を明らかにできた。
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