2021 Fiscal Year Research-status Report
近代日本の国家主義・民族主義と男性性:近代家族イデオロギーとの接合を中心に
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18K11892
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
海妻 径子 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (10422065)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 男性性 / ジェンダー / 近代家族 / 日本史 / イデオロギー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度に引き続き上杉慎吉の女性論等、近代家族イデオロギーに関わる言説の抽出と分析作業をおこなった他、農本アナーキズム系として遠藤友四郎に注目し、パンフレット『日本主義の確立』(無水庵、1926)にみられる「男性日本」観、および高畠素之批判を軸とした、国家社会主義理論系と農本アナーキズム系の思想的緊張関係について検討する作業をおこなった。とくに「男性日本」観は、天皇制の表象の政治学におけるジェンダーの役割を考える上で興味深いものであり、遠藤の思想全体における「男性日本」観の位置づけを明らかにするため、遠藤が主宰した雑誌『日本思想』の収集と記事分析にも着手した。 また同じく農本アナーキズム系として西川光次郎にも着目し、前出遠藤との相違や、著書『悪人研究 続編』(洛陽堂、1913)や『偉人の恋物語』(大日本雄弁会、1914)にみられる女性観や家族観を抽出し、明治期社会主義者として『家庭雑誌』等に西川が執筆していた言説との整合性や、主張が変化していく論理回路について検討した。西川については妻・文子が中心的執筆者となっていた雑誌『新真婦人』や彼女の自伝などについても併せて分析を進め、同時代の女性運動のあり方が西川の家族イデオロギーやジェンダー観に与えた影響を考察していく。以上の2名についての分析は次年度も継続しておこなう。 さらに、(男性)青年運動としての近代日本の保守・右翼運動の性格を整理するために、『日本主義的学生思想運動資料集成』(柏書房、2008)の分析に着手したほか、『国家改造論策集』に収録された、各団体の国家改造論について、前提された家族制度や「助け合い」「扶養」等のイメージの違い、ひいては想定している人間(男性)像の違いに着目して比較分析し、国家社会主義理論系と農本アナーキズム系の異同を整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度も新型コロナにより、国立国会図書館が抽選制となり、調査出張の予定を立てづらかった。また、次年度より始まる第4期の中期目標中期計画や所属大学の中長期運営計画策定に際し、関係部署の目標や行動計画づくりに関わることになったため、当初想定していたほどのエフォートを研究活動に割くことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度に繰り越した研究費で研究補助者を雇用し、作業の遅れを取り戻す。次年度以降も基本的には図書館入館が抽選制のままでいることを想定して、分析対象とする資料を、ネットや図書館配信で閲覧可能なものや、購入可能なものに変更し、出張できなくとも可能な研究成果を出すよう、研究計画を変更する。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響で国立国会図書館が抽選制となり、出張しての資料検討が困難であったため、旅費としての使用ができなかった。
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Research Products
(1 results)