2020 Fiscal Year Research-status Report
法曹職男女の性別役割分業と階層ー新司法試験導入10年後のインパクト
Project/Area Number |
18K11895
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
中村 真由美 富山大学, 学術研究部社会科学系, 教授 (30401269)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三輪 哲 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (20401268)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 弁護士 / ワークライフバランス / ジェンダー / キャリア形成 / 格差 / 司法制度改革 / 法科大学院 / 社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
司法制度改革により激変する環境の中で、弁護士のキャリアと家庭役割におけるジェンダー差は解消したのだろうか。その変化を知るために、2008年に実施した男女弁護士を対象としたオリジナル調査(2008年調査)のフォローアップ調査を主に2019年に実施した(2019年調査)。この2時点の調査結果を比較することで司法制度改革が男女弁護士のキャリア形成と家庭内役割分担に与えたインパクトを知ることができる(2008年調査では法科大学院の卒業生が含まれていなかったが、2019年度調査には多く含まれているため)。 2020年には分析結果を日本労働研究雑誌に出版した(中村2020)。また、国際学会でも報告をアクセプトされたがコロナ禍により学会がキャンセルとなった。 分析結果では、キャリアについては、司法制度改革による弁護士人口の急増が弁護士男女の労働環境(経済状況や地位)を悪化させていた。2019年調査では男女ともに弁護士の経済状況(所得)は前回調査より全体的に低くなっていた。また、年代別の経営者弁護士割合も男女ともに減少している。 さらに、地位や所得におけるジェンダー格差が拡大している様子が窺えた。2019年調査では2008年調査に比べて中堅世代において女性の経営者弁護士割合や所得が男性に比べて低くなっていた。 家庭役割については、女性弁護士が家事育児を主に担っているという基本的な構図は変わらない。ただし、この10年で男性弁護士に共働き家庭が増えたことなどの変化があった。かつては男性弁護士の妻の6割以上は専業主婦であったが、共働きの家庭が増えていた。 また、弁護士事務所に所属している弁護士については2019年調査では労働時間も短くなっていた。さらに、「育児休業が弁護士に適用される」と答えている人が2倍に増えていた。ワークライフバランスという意味ではこの10年で改善していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査も無事終了し、調査結果も論文として出版することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
調査結果についてさらに分析を進め、他の形でも公表していきたい。
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Causes of Carryover |
3年目の海外の学会発表がコロナ禍によりキャンセルになったため、その分の費用を繰り延べている。
生じた繰り越し分は学会発表のための参加費等に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)