2019 Fiscal Year Research-status Report
アジアの冷戦と女性たちの経験ー転換期における地域・アクターの視点から
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18K11904
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Research Institution | Tsuda University |
Principal Investigator |
朴 正鎮 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (10712242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 美恵 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (00774142)
小島 敬裕 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (10586382)
三澤 健宏 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (20297112)
坂元 ひろ子 一橋大学, その他部局等, 名誉教授 (30205778)
山下 靖子 津田塾大学, 国際関係研究所, 研究員 (50598547)
水谷 明子 津田塾大学, 国際関係研究所, 研究員 (60360129)
村上 尚子 津田塾大学, 国際関係研究所, 研究員 (80624882)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ジェンダー / アジア / 冷戦 / 移動 / 国際関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、冷戦初期のアジア各地域(沖縄、朝鮮半島、中国、日本、ミャンマー)の女性たちの経験に焦点を当て、各地域・地域間での国境を越える移動を伴った生活史・実態について、個人史、インタビューなどを通じて明らかにするものである。女性たちの経験、記憶、そこから培われた認識について記録し、分析・考察することによって、彼女たちが生きてきた地域の戦後、そして冷戦が、女性たちの生活をどのように規定したのか、その中で女性たちはどのように主体的に生きようとしたのかを解明することを目指している。同時に、「分断」状況にあった地域の特徴、冷戦初期における国際関係と各地域の政治・経済・社会の状況について、女性の視点から地域横断的に考察・議論し、転換期にジェンダーの果たした役割を地域横断的に議論してきた。 2019年度は、それぞれの地域に特有の状況を確認し、ジェンダーと地域を考察・議論する上での方法論を共有するために、定期的に研究会を行った。並行して、各自の研究テーマにおける調査・研究を具体的に進め、研究分野における研究発表・成果報告を行った。具体的には、下記の通り、4回の研究会を開催した。2019年4月26日(津田塾大学千駄ヶ谷キャンパス、以下同):ドキュメンタリーの証言資料を用いる方法論についてディスカッションを行なった。7月20日:金富子氏(東京外国語大学)を講師に、「満洲」における朝鮮人移民の移動について特にジェンダーの視点から議論した。11月10日:金敬黙氏(早稲田大学)を講師に、アジアの民衆の証言を、市民と研究者が主体となって、どのように聞き取り、記録していくか、その方法論について確認した。2020年1月13日:今泉裕美子氏(法政大学)を講師に、国際関係と地域の視点から、戦後冷戦期の人々の移動についての証言の聞き取りをどのように方法論としていくか、ディスカッションを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、各研究メンバーがそれぞれ課題としている冷戦初期のアジア各地域(沖縄、朝鮮半島、中国、日本、ミャンマー)における研究蓄積を精査し、先行 研究を整理した上で、改めてこの時代の体験者、またはその体験を知る関係者に直接インタビューを行う、またはインタビューにつながる準備を行った。定期的な研究会では、冷戦期アジアと関わりのある地域の人の移動について、研究者を講師として迎え、調査やインタビューに関わる方法論的議論を行った。また、 研究課題・地域によって、進捗状況は異なるが、全員がオーラルヒストリーと文献史資料の関係を確認し、調査・分析・考察上の課題を明確化し、これまでの調査・研究状況に応じて、研究発表などの機会を持つことができた。特に、(1)冷戦の形成が、アジアにおける女性たちの移動の経験、その地域における国際関係とどのような関わりを持ったのか。(2)冷戦初期における女性たちの経験は、それぞれの地域のジェンダー認識にどのような影響を及ぼしたのか。(3)それぞれの地域の文脈と比較の視点を活かし、地域的特徴を横断的に分析・議論する上で、どのような方法論的課題・可能性があるのか。というこれまでの論点に加えて、(4)国際関係とジェンダーの視点より、女性たちの経験を証言・映像などから確認し、共有し、記録していく上で、どのような課題があるのかという方法論的関心、共有課題が深まった。しかし、年度終盤のアジア各地におけるCOVID-19感染拡大により、研究状況としては概ね順調に進行しているが、予定されていた調査・研究会の実施が不可能となってしまった課題も少なくない。また、2020年度に予定していた研究成果を広く共有する機会としてのシンポジウムなどの開催について、具体的な計画を立案することができなかったことが、懸案される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の進め方については、以下のように予定している。2020年度については、研究メンバー各自がそれぞれの研究課題に向けて、調査・研究を行うことに加え、数回の研究会の開催を予定している。COVID-19感染症の拡大により、直接の調査および対面の研究会が難しい状況にあることを踏まえ、オンラインでの調査・研究および研究会開催に向けて、インフラを整え、やり方を模索している。同時に、2019年度に開催することの叶わなかった本共同研究と接点のある課題を研究している沖縄の女性史研究者チームと合同でシンポジウム形式の研究会を行うことを計画している。もしも対面での開催が叶わなければ、オンラインでの開催の可能性も模索したい。オンラインでの研究会開催のノウハウが整えば、他の地域の研究者チームとも共同の研究会・合評会・講演会などの機会を計画し、研究内容を深化していくと同時に、研究交流の機会となることが期待される。また、2019年度と同様、数名の研究メンバーがそれぞれの研究分野における学会での報告・発表を計画している。本共同研究内外からのコメント、フィードバック、研究交流を更に活発にしていくことにより、各研究の課題と同時に本共同研究における議論が進展することを想定している。年度末には、研究メンバー各自がそれぞれの研究課題を研究報告・発表・論文執筆の形でまとめていくと同時に、本共同研究の総括として、研究メンバーが論考について報告を行いながら、互いにコメント・フィードバックを行う形式の研究会を企画している。場合によっては外部コメンテイターを招くことも想定している。また、この研究会での報告、ディスカッションを中心に、その後、論文集を作成していくことを次期共同研究の課題として具体化していく。COVID-19の流行状況によって、様々な報告の仕方を検討しながら、成果をまとめていきたい。
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Causes of Carryover |
2019年度終盤に生じた世界的なCOVID-19の流行により、予定していた調査の実施、および学会への参加、研究会の開催が不可能となったため。 2020年度前半からオンラインなどでの調査継続、学会参加、およびオンライン研究会開催に向けた準備のための設備投資に使用する。後半には、当初計画通り、調査や対面での研究会開催の可能性を模索しつつ、オンライン開催となった場合は、そのための設備(オンライン会議開催のための運営費用)、講師謝金などのために使用することを検討している。
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Research Products
(16 results)