2020 Fiscal Year Research-status Report
Structural Change of Masculinities and Work in Global Society: the Cooperation between Fathers and Labour Unions in Germany since 1990's
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18K11909
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
石井 香江 同志社大学, グローバル地域文化学部, 准教授 (70457901)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 男性性 / 新しい社会的リスク / 覇権的な男らしさ / ポスト工業化社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポスト工業化社会において、就労する母親の増加により、家族の中での父親の位置づけは大きく変化した。非正規雇用といった雇用形態の変化は、もはや女性だけではなく若年男性も直撃し、従来の「男性稼ぎ主モデル」を支える基盤は失われつつある。しかし、この動きは父親の意思とは無関係に進展している。父親が主たる稼ぎ手である旧来の家族モデルは変化しつつあるといえるが、この事実だけを根拠に、父親が「覇権的(ヘゲモニック)な男らしさ」から解放されているとはいえないのではないか。 昨年度から始めた研究会では、ドイツと日本の事例を検討している。男性稼得者モデルが強固である両国でも「新しい社会的リスク」(Tayler 2004)への対応策として、近年男性のケア労働への参加に政策・研究の二つのレベルでも注目が集まっている。このように、両国の置かれた現実や制度は確かに変化しているものの、その背後にあるヘゲモニックな男性性(さらに女性性)は果たして変化しているのだろうか。エスピン-アンデルセンの福祉国家類型からすれば、日本はドイツのような保守主義レジームと、アメリカのように市場の役割の大きな自由主義レジームの「ハイブリッド」型として理解されてきたが、グローバル化の進展と雇用の流動化や不安定化ともに、こうした静態的な類型をはみ出すような変化や多様な動きも確認されている。今後は、ケア行為/労働の領域において、日独両国でヘゲモニックな男性性は果たして変化しているのかという問題を立てて、ドイツと日本における共通点と差異をあぶりだし、これを生み出す背景(社会政策・産業経済・政治文化など)に注目する作業を継続したい。 現時点までの成果は『論点・ジェンダー史学』ミネルヴァ書房(近刊)の「父性」の項目で発表の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度はコロナ禍による学務の増加で、予定していた研究会の準備と開催ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はコロナ禍による学務の増加で、予定していた研究会の準備と開催ができなかったので、次年度は教育と学務が落ち着く8月に遅れを取り戻し、来年3月には予定通りシンポジウムの開催にこぎつけたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によりドイツより研究者を招聘できなくなったために、その旅費や人件費・謝金を使用しなかったことによる。次年度には、旅費に26万円、人件費・謝金に54万円の支出を計画している。
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