2019 Fiscal Year Research-status Report
Chemical species identification of ions incident on water by beta-NMR
Project/Area Number |
18K11920
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三原 基嗣 大阪大学, 理学研究科, 助教 (60294154)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 液体NMR / 放射性核ビーム / 化学シフト |
Outline of Annual Research Achievements |
水のような分子を構成粒子とする物質中にエネルギーを持ったイオンが入射したとき、そのイオンは最終的にどのような状態に落ち着くのかはほとんど知られていない。水分子に含まれない窒素や炭素などのイオンが外部から入射してきた場合、これらがどのような化学種を形成するのかは、氷で覆われた天体での化学進化や、粒子線癌治療において生体中で形成される化学状態など、興味深い問題に繋がっている。本研究では、これらの問題にアプローチすべく、べータ線検出を利用した核磁気共鳴 (β-NMR) 法を用いて、水や氷の中に打ち込んだ炭素や窒素イオンなどの精密 NMR スペクトル測定を行い、化学シフトから化学種同定を行う方法の確立を目指している。 2018年度は、π パルスによるスピン反転を用いた測定方法を開発し、水の中に打ち込んだ短寿命核 17N (半減期 = 4.17 s) の精密 β-NMR スペクトル測定を行った結果、水に打ち込んだ窒素イオンが少なくとも2種類の化学種を形成することを明らかにした。2019年度は、化学シフトの決定に必要となる参照試料の探索を行なった。試料位置における磁場一様性の大幅な改善により、スペクトル線幅と測定効率が格段に向上し、様々な窒素化合物水溶液および溶媒試料中の 17N スペクトルを効率よく測定することができた。その結果、窒素置換を示唆する液体試料として、シアン化カリウム、亜硝酸ナトリウムおよびアンモニアの水溶液が有望であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度に、π パルスによるスピン反転を用いた測定方法を開発したことにより、β-NMR 法による精密スペクトルを効率よく測定できるようになった。これにより、水中に打ち込んだ 17N の 精密β-NMR スペクトル測定に成功し、2種類の化学種形成が明らかとなった。2019年度は、化学種を特定するために、化学シフトの基準となる参照試料の探索を行なった。現在使用している NMR 電磁石の3次元磁場分布を詳細に測定し、最適な試料位置を見つけたことにより、磁場の非一様性を約一桁小さくすることができた。これによりスペクトル線幅が狭くなり、かつ測定効率も格段に向上したため、多くの試料を測定することが可能となった。さらに、超高感度カメラを用いたビーム停止位置モニターを新たに作成し、17N のビームスポット画像を観察しながら停止位置を調整できるようにした。これにより、磁場によるビームの曲がりから生じる位置の不確かさの問題を解決した。以上の改良により、様々な窒素化合物水溶液および溶媒試料について、17N の精密 NMR スペクトルを効率よく測定することができるようになった。実験の結果、窒素置換を示唆する液体試料として、シアン化カリウム、亜硝酸ナトリウムおよびアンモニアの水溶液が有望であることがわかった。 ここでの化学シフトの参照試料とは、外部から打ち込んだ 17N ビームが、試料中(ホスト)の窒素原子と置換する試料のことである。当初の計画では GaN 単結晶を候補に挙げ、四重極相互作用の測定から窒素置換を確認する目論見であったが、実験からは置換しているという結論が得られなかった。このため、多数の液体窒素化合物試料から得られる相対シフトを、安定核による既知の結果と比べるという方法に切り換えた。装置および手法改良により後者の方法による見通しが立ったことから、研究は概ね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に行った実験結果をもとに、参照試料として有望視しているシアン化カリウム、亜硝酸ナトリウムおよびアンモニアの水溶液試料について、引き続き 17N の β-NMR スペクトルを測定する。現時点ではまだ統計精度は低いが、これらの試料中の 17N スペクトルで得られたピーク位置の相対シフトが、安定核の窒素 NMR で得られている化学シフトを説明できる可能性を示唆しており、統計精度を上げて測定を行う予定である。上記以外にも、溶解度が高い、すなわち溶液中の窒素原子の割合が高い窒素化合物についていくつか検討している。この一連の測定により、17N NMR の化学シフトの基準を決定できれば、水中で形成される化学種についての考察が可能となるであろう。 さらに、同様の研究を炭素イオンについても行う予定である。短寿命核 15C のスピン偏極ビーム生成はすでに成功しており、これを用いて水などの液体中の β-NMR スペクトル測定を行う。
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Causes of Carryover |
装置改良等にかかる物品費について、急を要しない限りよく検討してから実行するのが望ましいと考え、比較的高額なものについては次年度以降に購入することとしたため。 実験に参加する人員が予定よりも少なかったことなどにより、旅費が当初の計画よりも少なかったため。 次年度は、主には実験制御およびデータ収集系の改良のための物品購入、実験旅費および装置等運搬費に使用する。また実験試料購入、学会旅費および論文出版等にも使用予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] In-beam Mossbauer spectra for 57Mn implanted sulfur hexafluoride2020
Author(s)
Y. Yamada, Y. Sato, Y. Kobayashi, T. Ando, N. Takahama, K. Some, M. Sato, M. Mihara, K.M. Kubo, W. Sato, J. Miyazaki, T. Nagatomo, J. Kobayashi, A. Okazawa, S. Sato, A. Kitagawa
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Journal Title
Hyperfine Interactions
Volume: 241
Pages: 15-1-6
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Beta-NMR of short-lived nucleus 17N in liquids2019
Author(s)
M. Mihara, T. Sugihara, M. Fukuda, A. Homma, T. Izumikawa, A. Kitagawa, K. Matsuta,T. Minamisono, S. Momota, T. Nagatomo, H. Nishibata, D. Nishimura, K. Ohnishi, T.Ohtsubo, A. Ozawa, S. Sato, M. Tanaka, R. Wakabayashi, S. Yagi, R. Yanagihara
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Journal Title
Hyperfine Interactions
Volume: 240
Pages: 113-1-9
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] πパルスによるH2O中17N の精密NMRスペクトル測定2019
Author(s)
三原基嗣, 松多健策, 福田光順, 南園忠則, 田中聖臣, 若林諒, 柳原陸斗, 杉原貴信, 大西康介, 八木翔 一, 西畑洸希, 長友傑, 泉川卓司, 本間彰, 大坪隆, 西村太樹, 百田佐多生, 小沢顕, 北川敦志, 佐藤眞 二
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Journal Title
Proc. The Specialists' Meeting on Nuclear Spectroscopy and Condensed Matter Physics Using Short-Lived Nuclei V
Volume: KURNS-EKR-4
Pages: 54-56
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[Journal Article] 物性プローブとしての高偏極不安定核ビーム生成法の開発2019
Author(s)
三原基嗣, 松多健策, 福田光順, 田中聖臣, 若林諒, 泉川卓司, 西村太樹, 百田佐多生, 西畑洸希, 長友 傑, 小沢顕, 大坪隆, 南園忠則, 北川敦志, 佐藤眞二
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Journal Title
2018 Annual Report of the Research Project with Heavy Ions at NIRS-HIMAC
Volume: QST-R-13/HIMAC-147
Pages: 178-179
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[Presentation] 酸素 NMR プローブ核 19O の開発2020
Author(s)
三原基嗣, 松多健策, 福田光順, 若林諒, 沖本直哉, 福留美樹, 泉川卓司, 野口法秀, 生越瑞揮, 大坪隆, 西村太樹, Aleksey Gladkov, 北川敦志, 佐藤眞二
Organizer
令和元年度京大複合研専門研究会「短寿命RIを用いた核分光と核物性研究VI」兼「第11回停止・低速RIビームを用いた核分光研究会」
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[Presentation] 物性プローブとしての高偏極不安定核ビーム生成法の開発2019
Author(s)
三原基嗣, 松多健策, 福田光順, 南園忠則, 若林諒, 田中聖臣, 杉原貴信, 大西康介, 八木翔一, 西村太樹, 泉川卓司, 大坪隆, 本間彰, 小沢顕, 西畑洸希, 長友傑, 北川敦志, 佐藤眞二, 百田佐多生
Organizer
平成 30年度HIMAC共同利用研究成果発表会
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