2019 Fiscal Year Research-status Report
粒子線がん治療装置のスポットスキャニング照射のための高速ビーム取出し制御の研究
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18K11924
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中西 哲也 日本大学, 生産工学部, 教授 (50440037)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シンクロトロン / ビーム取出し / 広帯域高周波ノックアウト / スポットスキャニング照射法 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の公益財団法人若狭湾エネルギー研究センター(WERC)のシンクロトロンを用いたビーム実験の結果を基に、同じ高周波アンプを用いて更に多くのビームを取り出せる広周波数帯域の高周波ノックアウト(RFKO)装置を開発した。具体的にはRFKO電極電圧を増やすために、電圧比が1:4であったインピーダンス変換器(IT)を1:5に増強し、それにともない入力インピーダンス1250Ωの全域通過回路(APN)を開発した。しかし、それらによって電極電圧の周波数特性が高周波側で悪化し、その結果、出射ビーム(スピル)の一様性が悪くなる。そのため、悪化した周波数特性を補償するために元のカラードノイズ(CN)信号の周波数スペクトルの強度を周波数帯によって変える方式を提案し、電極電圧の周波数スペクトルがほぼ一定になることを実験で確認した。また、ビームの取り出し量は電極電圧の実効値の2乗に大体比例するが、その実効値を増やすためにCNデータの最大値/実効値の比を3.3から2まで下げるデータ操作を行った。それが出射ビームの一様性に悪影響を及ぼすことが懸念されたが、問題ないことをシミュレーションで確認した。これらの成果を実証するために、令和元年12月に開発した装置をWERCのシンクロトロンに接続し、炭素ビーム(運動エネルギー55MeV/u)を用いて取り出し実験を行った。結果はシミュレーションから予想した結果に近い結果が得られた。また、スポットスキャニング照射法において照射時間を短縮するために必要となるビームオフ時間の短縮に関する実験も行い、ビームをバンチングしないことにより高速でビーム出射をオフできることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
提案した広帯域高周波ノックアウト方式によりビームをバンチングしなくても一様なスピルがえられることの原理実証試験に成功した。これは、開発したビームシミュレーション方式の信頼性が高いことを示すだけでなく、開発した装置に基本的な問題がないことを示す。この原理実証試験の結果を踏まえて、装置の性能向上のために、比較的低出力の高周波アンプでより多くのビームを出射できる方式を開発し、並行して高周波信号であるカラードノイズのデジタルデータを操作して性能を向上させた。一方、スポットスキャニング照射法で照射時間を短縮するために重要な技術の一つであるビームOFF時間の短縮に関して、ビームをバンチングしないことによりOFF時間を短縮できることを実験で示した。
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Strategy for Future Research Activity |
現状ではスピル強度の一様性に関して、シミュレーションで予想された値に比べると低い結果になっている。この原因を究明し対策を考え、より一様なスピルが得られるようにする。また、高周波信号であるカラードノイズのデジタルデータの操作によりスピルの一様性を向上できると考えており、シミュレーション研究によりカラードノイズの最適化を行う。一方、ビームOFF特性について、現在測定されているビームOFF時間の遅れについて詳細に検討し改善を行う。これらについてのビーム実験はWERCのシンクロトロンを使って行う予定である。
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Causes of Carryover |
旅費が予想した金額を下回ったため生じた。翌年度は海外出張および福井県敦賀でのビーム実験を予定しており、また研究補助も当初予算よりも増える予定なので人件費に充てる。
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Research Products
(8 results)