2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of Band-Extended Inelastic Neutron Scattering Measurement Technology for Direct Geometry Spectrometers
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18K11927
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
中島 健次 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究主席 (10272535)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中性子非弾性散乱 / 中性子準弾性散乱 / チョッパー型分光器 / ディスクチョッパー / J-PARC / パルス中性子 / 測定手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中性子準弾性・非弾性散乱法について近年大きな進歩のあった複数の入射中性子エネルギーを用いて測定を行う手法と新型チョッパーの最新機器技術を組み合わせ、広いエネルギー(時間)帯域の現象の測定を高効率で行う新しい物性ダイナミクス情報の取得システム(拡張波長帯域中性子非弾性散乱実験法)を実現するための基板技術の開発を行うものである。本研究の中核は、世界最先端のパルス中性子源J-PARCで実際に稼働中の分光器AMATERASのパルス整形チョッパーを最新技術で複数スリット化したディスクを試験的に架装して入射中性子エネルギーの広帯域化を行い、手法の実証を運用した際に起こる技術的問題を洗い出しながら行うことである。研究第2年度の2019年度は、AMATERASで新手法を実証試験するためのディスクチョッパー用の試験用のディスクを作成し、J-PARC長期休止期間中を利用し実際にAMATERASにその試験用ディスクを装備し、実証試験を開始する予定であった。しかしながら、炭素繊維強化樹脂(CFRP)製のディスク本体を製作する過程で、プリプレグの貼り合わせに不具合が生じる現象が発生し、十分な強度を持つものが得られなかった。この問題については、ディスクを作成するメーカーと貼付け強度試験を行い、中性子遮蔽材となるボロン層とCFRPとの接着面の強度が原因と推定し、接着不良を避ける工程を検討した上で、2020年度前半までに再製作を試みる。この他、2019年度は、先端中性子散乱実験技術に関する国際会議であるICANS-XXIIIへ参加し世界一線の研究者らと現在の研究状況について議論を行うことを予定していたが、台風19号の影響で渡航が不可能となり、参加できなかった。代わりに、アジアオセアニア圏で最大となる中性子散乱の国際会議AOCNS2019に参加し、研究成果の発表と参加した研究者との議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の中核は、J-PARCのパルス中性子源で実際に稼働中の分光器AMATERASのパルス整形チョッパーに複数スリット化した試験ディスクを架装して入射中性子エネルギーの広帯域化を行い、手法の実証を実ビーム、実測定装置で行うところにある。そのため、2019年度は、2018年度から準備してきた試験用の多孔ディスクの製作を完成させ、夏期のJ-PARC長期休止期間中を利用してAMATERASに装着し、年度後半から実証試験を行う、本研究の最も本質的な段階を実施する予定であった。しかしながら、製作中の試験用ディスクに不具合が生じ、その過程に遅延が生じた。不具合の問題については、ディスクを作成するメーカーと実施した試験にてほぼ推測できており、新しい製作工程を検討した上で、2020年度前半までに再製作を試みる。一定の遅延は生じるが、現時点では、2020年度前半に実証試験を実施できれば大きな研究の遅れには繋がらないと考えているが、コロナウイルスの影響でJ-PARCの施設が4月の時点で停止しており、今後の影響には予断を許さない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2019年度に作製できなかった試験用多孔ディスクの製作完成を急ぐ。コロナウイルスの影響でJ-PARCの施設が停止するなど、今後の影響には予断を許さない部分もあるが、できるだけ早くAMATERASに装着した上で、できるだけ早く実証試験に着手することを最優先とする。また、研究は最終年度となるため、その実証試験の結果をとりまとめた上で、国際会議等で国内外の研究者らと議論を重ね、研究を完成させることを目指す。
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Causes of Carryover |
試験用ディスクの製作が中途となり、実証実験に移れなかったため、実験実施に係る種々の消耗品の購入を行わなかった。また、予定していた米国での開催の国際会議(ICANS-XXIII)参加がキャンセルとなり、代わりに台湾開催の別の国際会議(AOCNS2019)に参加したため、米国出張の航空券のキャンセル手数料を加味しても海外出張旅費が当初よりも少なくなった。以上の結果として、予算に残額が生じた。生じた次年度使用額については、次年度の本格的な実証実験実施にかかる実験用消耗品や成果とりまとめの段階での成果の中間報告とそれらについての他の研究者らとの議論を行うための各種学会、国際会議参加に係る参加費、旅費として使用する。
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