2019 Fiscal Year Research-status Report
あらゆる光をとらえて逃がさない、完全黒体シートをイオンビーム加工でつくる
Project/Area Number |
18K11940
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
雨宮 邦招 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (60361531)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 暗黒シート / 光吸収体 / 黒体 / 極低反射 / イオンビーム / 表面微細加工 / 高耐久 / フレキシブル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高エネルギーイオンビームを用いたマイクロ加工技術を駆使し、各種機能性材料を表面反射ゼロの完全黒体とする技術を開発する。これにより、分光分析や熱画像検知など、光計測技術の格段の性能向上に貢献する。 本研究で克服すべき技術課題は、1.柔軟で接触耐性のある完全黒体シートの開発・量産方法の確立と性能評価、2.高耐熱性の完全黒体シートの開発、3. 究極の低反射率≦0.1%達成へ向けた性能の向上(即ち黒い人工物世界一・配向CNTの凌駕)、の3つである。令和元年度は、高耐熱性の完全黒体シートの開発の一環として、熱画像装置校正用の基準熱輻射体用途を志向した、大面積な完全黒体シートを作製する技術の開発を目指した。 イオンビーム加工により形成したマイクロ空洞構造を原盤として、10 cm角程度の大面積な黒体シートを製造する技術を確立した。作製した完全黒体シートは、積分球を具備した紫外-近赤外分光光度計、又はFTIR分光計等で、鏡面反射成分だけでなく拡散反射成分も含んだ全反射率を評価した。比較測定用の標準反射板には国家標準で保証されたものを用いて精確に評価した。その結果、熱赤外線領域において反射率0.002以下、即ち0.998以上の吸収率(放射率)が得られ、また、高い面内均一性も有することが示唆された。この黒体シートはPDMSでできており、200 ℃の耐熱性があることも確認した。また、接触耐久性にも優れている。このように実用的な完全黒体シート材料は世界で初めてである。これにより、COVID-19のような新規感染症の水際対策において、サーモグラフィカメラの温度表示値を正しく調整するための基準赤外線放射体(平面黒体炉)として貢献できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、当初目標をすべて達成し、成果物の実用化・量産化への道筋をつけることができた。本成果に関するプレスリリース(2019年4月)に対しては大きな反響が得られ、テレビ報道1件、ラジオ出演1件、新聞報道18件、雑誌掲載5件、依頼講演2件の成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
(令和2年度)当初の計画通り、可視域も含めた究極の低反射率≦0.1%(即ち黒い人工物世界一レベル)の達成へ向け、性能の向上を図る。また、各種応用展開も検討する。 得られた成果については、知的財産権上の取扱いにも留意した上で、国内外の学会での発表、国際誌上での論文発表、研究グループHP上での紹介、プレスリリースなどを通じて広く公表する。
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Causes of Carryover |
当初、年度内に納品可能性があった物品の納品が翌年度初めにずれこんだため、令和2年度に支出することとなった。
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