2020 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of multiple interference effect of edge radiation
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18K11944
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Research Institution | Saga prefectural regional industry support center |
Principal Investigator |
江田 茂 公益財団法人佐賀県地域産業支援センター(産業振興部研究開発振興課、九州シンクロトロン光研究センター), 加速器グループ, 主任研究員 (50311189)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エッジ放射 / 放射光 / ウィグラー / アンジュレータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に多重エッジ干渉放射効果の理論的なモデル検討に集中した。行ったことは大きく二つ、(1)フリンジ磁場を考慮しない理想的な磁石系における多重エッジ干渉放射効果の基礎的放射特性の解明と、(2)永久磁石、常伝導磁石、超伝導磁石磁石等のフリンジ磁場を考慮した現実的な磁石系における多重エッジ干渉放射効果の放射特性の検討である。(1)については進展があった。Paraxial近似理論をベースに直線部からのエッジ放射のみを考慮した理想的多重エッジ干渉放射効果のモデル化を進め、放射電場の解析的計算を行い、スペクトル構造とそれに対する空間分布を定式化した。この定式化により既存のプラナーアンジュレータの放射特性との解析的な比較検討が容易となった。その結果、多重エッジ放射干渉効果の放射ピーク輝度は、プラナーアンジュレータのピーク輝度に近いオーダーであることがわかってきた。非常に成功した高輝度放射光源であるアンジュレータと多重エッジ干渉放射効果はまったく異なる原理放射であること考えると、これは非常に興味深い結果である。またアンジュレータの高次光にやや似た概念の短波長域のスペクトル構造を有することもわかった。得られた解析的結果について既存放射コードでの数値的検証を行っており、本年度末の段階では、解析的結果を概ね再現している。(2)についてはParaxial近似をベースにフリンジ磁場の効果を解析的にとり入れた補正モデルの構築を試みた。しかしながら検討の過程で多重エッジ放射干渉効果において重要なフリンジ磁場領域となる、浅い軌道偏向角(~1/γrad程度)の領域において急激に電場位相の理論誤差が大きくなることがわかり、当初のParaxial近似理論をベースに補正する計画から方針を変更し、原因の検討及びParaxial理論の補正のトライアンドエラーを進めたが本年度末までには有効な補正方法を得ていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画では、paraxial近似理論をベースとしてフリンジ磁場に適用できる一般性のある解析的補正モデルを作り、これに基づき現実的な磁石システムに適用できる計算モデルの構築を行い、数値計算による様々な磁石系に対する検討を行った後、その研究成果を整理し発表する予定であった。しかしながらエッジ放射で特に重要となる1/γrad程度の浅い偏向角が長く続くフリンジ磁場条件の磁石モデルの検討においてparaxial近似理論では、放射電場の位相の系統的なずれが無視できない程増大することがわかり、これは様々な磁石系を広く検討する上で大きな障害となった。原因の検討、理論の修正、補正の試みを継続している状況であり、本年度はこの問題の検討のために多くの時間が割かれ、当初予定より研究が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
進展のあった理想的磁石系モデルにおける多重エッジ干渉放射効果の基礎的放射特性については、興味深い結果を得つつあり、引き続き、アンジュレータ放射との放射特性の比較を解析的観点から行い、その類似点及び相違点について調べ、数値計算による検証を進める。この検討から得られた放射特性について、その観測可能性も検討する。またフリンジ磁場の解析的取扱いの確立についても引き続き見通しのよい解析的補正方法の検討を続ける。もしこの検討が難航し理想モデルにおける多重エッジ干渉放射効果の基礎的放射特性検討との進捗に大きな差ができた場合、基礎的放射特性検討で得られた結果を先んじて整理し発表したいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナのため、参加を予定していた学会の現地開催が中止となり、予定した旅費の執行が出来なくなった。また研究においてフリンジ磁場領域における放射の解析的な取扱いに大きな課題があり、本年度内の論文投稿に至っておらず、英文較正、投稿料等論文発表に関わる経費の執行が出来なかった。今後新型コロナの状況が改善し、学会の現地開催が可能となれば参加する予定である。遅れている論文発表については、引き続き研究を行い得られた成果の論文化を進める。
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