2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K11945
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Research Institution | Saga prefectural regional industry support center |
Principal Investigator |
金安 達夫 公益財団法人佐賀県地域産業支援センター(産業振興部研究開発振興課、九州シンクロトロン光研究センター), 加速器グループ, 副主任研究員 (90413997)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光渦 / アンジュレータ / 量子状態制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
軌道角運動量を運ぶ光ビーム(光渦)と原子分子との相互作用の解明を目指し,蛍光検出法を用いてVUV光渦による平面波禁制遷移の観測に取り組んでいる.これと並行して,光渦を組み合わせて生成した極紫外ベクトルビームと原子との相互作用の研究や,光渦の発生源であるアンジュレータが発する電磁波の波面構造の利用という新たな研究領域の開拓に挑戦している.とくに後者に関しては,二台のアンジュレータを組み合わせてダブルパルス状の放射を発生し,それを用いた原子の量子状態制御手法を考案した.さらに実証実験に世界に先駆けて成功した.この成果はすでに論文発表し,プレスリリースも行った.この手法には短波長化や光電場波形の設定に原理的な制約はなく,本研究成果は,将来的にはX線量子状態制御という新たな研究分野の開拓へと発展する可能性が高い.本年度の成果をもとに,さらに高度な量子状態制御の研究へ向けて技術開発や実験装置の準備を進めている.
蛍光検出法を用いてVUV光渦が持つ螺旋波面の検証実験に取り組んだ.二台のアンジュレータを用いて光渦ビームと通常光を重ね合わせ,光と原子の相互作用を通じて光渦の螺旋波面を検証したが,実証には至らなかった.しかしながら実験研究の過程で,二台のアンジュレータからの放射の重ね合わせを原子の蛍光緩和に生じるゼーマンビートを用いて観測する手法の有効性を見出した.この成果は実験手法の開発研究として論文発表した.
VUV光渦による禁制遷移の検証実験は蛍光検出装置やレーザー導入経路の改良を検討した.また光渦と原子分子との相互作用の理解へ向けて,理論家との議論を進めている.その過程において原子からの光渦放射の可能性を見出すことができ,検証実験の検討を開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シンクロトロン光源による量子状態制御に世界で初めて成功するなど,当初計画から発展した方向性で極めて注目すべき成果があがりつつある.この成果は,光渦の研究を契機として電磁波の波面構造の観点から,アンジュレータ放射の新奇な利用法の開拓へと取り組んだことで得られたものである.一方,VUV光渦による検証実験にはやや遅れが生じている状況である.これは当初予想していなかった方向性へ研究が大きく発展した結果であり,総合的には順調に進んでいると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続き,二台のアンジュレータを用いた原子の量子状態制御の研究へ注力する.研究成果については積極的な論文発表や学会発表,プレスリリースを進めていく.それと並行して当初計画していたVUV渦の実験装置の改良に取り組み,光渦による平面波禁制遷移の観測の実現を目指す.また理論家との交流を深め,原子からの光渦放射の性質の解明や検証実験の検討についても取り組む.
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Causes of Carryover |
年度末に参加を予定していた学会や研究会が中止となったため旅費に余裕が生じた.次年度使用額は測定システムの改良へ向けた消耗品購入や学会発表用の旅費として用いる予定である.
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Research Products
(9 results)