2018 Fiscal Year Research-status Report
林業における死傷事故を予防低減する高機能性蛍光色彩デザイン
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18K11951
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Research Institution | Shinshu Honan College |
Principal Investigator |
松村 哲也 信州豊南短期大学, その他部局等, 研究員(移行) (20617419)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 蛍光色 / 環境色彩 / 視認性 / 労働安全衛生 / 作業服 / 防護服 / 森林 / 林業 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国は国土の約70%を森林が占める森林国だが、森林の維持管理事業を担う「林業」は極めて死傷事故が多く、その改善が渇望されている。本研究では、林業の安全性を高めるための改善方策として、蛍光色彩による注意喚起効果・意思伝達機能に注目した。森林環境を構成する色彩を数値化し、比較する形で安全性能の高い蛍光色彩の用法を求め、作業服や装備などに反映する高機能性蛍光色彩デザインシステムの構築を目指している。平成30年度は、測定実施に先立って、蛍光色彩の利用を規定した各種工業規格の確認と、改訂動向の把握を行った。JIS Z9103の改訂やEN1150のJIS化の遅れなど流動的な状況に注意を要する。また、使用する計測器類の性能について事前評価を行い、測定手順の構築を進めた。(1-1)森林環境の色彩測定について、青森県・秋田県・福島県・栃木県・群馬県・長野県・東京都・静岡県・鹿児島県島嶼部(奄美大島・加計呂麻島)を訪問し、気候・立地条件・樹種・利用状況などに特徴的な森林にて色彩情報の測定を実施した。(1-2)測定は、森林環境を構成する要素の写真撮影を基本に、東西南北4方向の視野ならびに可能な場合には360度パノラマと全天球の撮影を実施した。さらに林内の可視光照度およびUV強度の測定を行った。(1-3)既存の被服・装備品の色彩情報の測定については、5月に国際学会ECPC(ポルトガル)、日本伐木チャンピオンシップ(青森市)、6・10月にハスク社技術指導会(木曽郡)、7・1月にアウトドア企業合同展示会(台東区)、8月に上高地横尾地区(松本市)、11月に「2018森林・林業・環境機械展示実演会」(秋川市)、1月にウェアラブルEXPO(江東区)、2月にスポーツビジネス産業展(千葉市)、バイオマス展(江東区)にて情報の収集と各社の製品等から色彩測定資料の収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
森林環境色彩の測定ならびに林内可視光照度およびUV強度の測定によるプロファイルの充当について、7月豪雨の被害で中国・四国地方の測定を延期するなど、スケジュールの遅れが発生している。調査地の変更など対処をしており、次年度で吸収する予定である。なお中・四国以外の地域での測定は順調に進展した。青森県・秋田県・福島県・栃木県・群馬県・長野県・東京都・静岡県・鹿児島県島嶼部(奄美大島・加計呂麻島)を訪問し、気候・立地条件・樹種・利用状況などに特徴的な森林にて色彩情報の測定を実施した。蛍光色彩の数値化に関して、測定試行の結果、照明光照度値の幅が広く、当初導入予定の輝度計の性能では実用的に不適当であることが判明し、測定スケジュールに遅れが生じている。代替機の選定を進めており、現在候補を2機種に絞り精度の検討を進めている。関連する工業規格の動向では、蛍光色彩の比較対象基準として設定した欧州規格EN1150のJIS化が既定路線となりながら、実際の作業は停滞しており、時期が不確定ながら基準色彩値の変更が想定される。また、JIS Z9103の改訂に際してユニバーサル・デザイン志向の導入は、本研究においても重要な観点であることから、今後の運用事例を追跡したい。東京大学森林利用学研究室の協力により、同研究室を会場として、繊維系素材業者・アパレル系製造販売業者・林業事業体・商社などを集めた情報交流の場としての研究会を開設した。現在月一回のペースで会議の運営を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度(令和元年度:2年次)は、初年次に発生した中国・四国地方での測定の遅れの回復に向けて、測定ペースの加速を行う。測定地域については気象の影響を最小に抑えるべく、西部日本(中部・関西・中国・四国・九州・沖縄地方)と東部日本(関東・甲信越・東北・北海道地方)に分割し、気象変化に対応してスケジュールの差し替えができるよう調査計画の多重化を検討する。また、蛍光色彩の数値化の分野についても代替機を用いた測定を迅速に進める。輝度計の機種変更により調達価格が下がることから、導入台数の増加が可能となるため、2人作業による効率化を予定している。さらに試行の経験を受け、測定資料の形状変更など当初の測定手順を見直し、測定にかかる時間の短縮を図る。10月にはオーストリア・ハンガリーにて開催される欧州最大の林業機械展示会Austrofomaと林業機械化シンポジウムFormecへの参加を予定している。研究情報の交換とともに最新の林業機械・防護服・装備品の色彩情報取得と、現地林業現場の環境色彩情報の取得を行う。
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Causes of Carryover |
助成が決定して以降、調査旅行や物品整備を進めたが、4月初頭における代表者所属期間の変更に関連して、会計証憑の整備に不具合が生じた。これらに掛かる出費については自費出費等にて清算し違法な会計手続きとならないよう努力したが、とくに金額が大きなものとして、5月に参加したポルトガルにて開催された国際学会 第8回 European Conference on Protective Clothing への参加発表費ならびに旅費について、平成30年度経費として計上する予定であったが、先方学会事務局および旅行代理店とのトラブルにより経費計上のための会計証憑の提出ができなかったため自費清算として処理した(約45万円)。また、7月豪雨によって中国・四国地方への調査旅行が延期となったこと(5回約50万円)、購入を予定していた輝度計の性能が試行の結果不適切であったため代替機の選定が必要となり、現在性能試験中であるため関連機材購入費用(約60万円)が未定であるとともに、輝度測定試験(4回約40万円)を見合わせていることから次年度使用額が生じた。令和元年度にて、10月開催の国際展示会Austorofoma/国際学会Formecへの参加費用として、延期した中国・四国地域への調査旅費とデータ保存・分析にかかる消耗品費として、そして、輝度計代替機の購入費用と輝度測定調査費用として使用する計画である。
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