2022 Fiscal Year Research-status Report

林業における死傷事故を予防低減する高機能性蛍光色彩デザイン

Research Project

Project/Area Number	18K11951
Research Institution	Shinshu Honan College
Principal Investigator	松村哲也信州豊南短期大学, その他部局等, 研究員(移行) (20617419)
Project Period (FY)	2018-04-01 – 2024-03-31
Keywords	蛍光色 / 環境色彩 / 視認性 / 労働安全衛生 / 作業服 / 防護服 / 森林 / 林業
Outline of Annual Research Achievements	日本は国土の約70%を森林が占める森林国だが、森林の維持管理事業を担う「林業」は極めて死傷事故が多く、その改善が渇望されている。本研究では、蛍光色彩による注意喚起・意思伝達機能を活用した林業の安全性向上策として、森林環境を構成する色彩を数値化し、比較する形で安全性能の高い蛍光色彩の用法を求め、作業服や装備などに反映する高機能性蛍光色彩デザインシステムの構築を目指している。令和4年度における本研究事業は、前年度よりは社会的状況の改善はあったものの、新型コロナ感染症によって影響を受け、森林調査、事業体訪問、製品展示会参加が行いにくい状況が続いた。さらに7月に研究代表者が眼球手術を受け視覚リハビリを要したことから、当初のスケジュールへの復帰が適わなかった。 (1-1)森林環境の色彩測定について、全国各地の森林や事業体への訪問調査が困難な状況が続き、前年度までに交渉・下見を完了させてた地域についても測定できなかった場面が多かった。そうした中、八甲田山麓ブナ林（5月）、埼玉県西川林業地（８月）、飯田市Y林業と北安曇郡針広混交林（９月）、熊本福岡大分県境地区スギ林（11月）、全国森林組合連合会（12月）、フォレストジャーナル社（1月）、JIS T8125制定委員会（1,2,3月）などにて色彩調査および聴取調査を実施した。(1-2)測定の高速化に向けて3Dスキャナ装置の導入を検討したが既に収集した情報との統合が難しい。そこで画素成分情報の抽出にAI自動分類を試行している。(1-3)既存の被服・装備品の色彩情報の測定については、参加予定イベントが限定的開催となった影響を受けたが、JLC競技会（５月・青森）、長野林大技術研修会（6,10月・木曽）、機械メーカーY社工場（7月・青梅）、次世代産業展（９月・東京）、林業機械展示会（11月・大分）、にて色彩情報採取および聴取調査を実施した。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 4: Progress in research has been delayed. Reason 新型コロナウイルス感染症の拡大による影響から研究遂行に遅滞が生じている。。初・次年度での豪雨災害・台風災害などの影響で、本研究事業の中核である現地森林調査の実施に遅れが生じていた。累積した遅滞の解消に向けて調査人員の増強を計画し、令和2年3月からの調査実施に向けて予定調査地・事業体への交渉と下見調査を進めていたが、令和2年1月末より顕著になった新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、森林を訪問しての調査、事業体を訪問しての聴き取りや機材調査は中止・自粛を余儀なくされた。今年度(令和4年度)もまだコロナの影響が残り、さらに7月に研究代表者が眼球手術を受け視覚リハビリを要したことから、事業体訪問および面会の困難が続いた。また、参加を予定していた国内外の学会・製品展示会等のイベントも限定的な開催となり、製品類についての実物調査が一部実施できなかった。現地調査の中止・延期による測定・データ収集作業の遅滞対策として、他目的用途の既存映像からの色彩情報抽出による量的補完を継続し、さらに3Dスキャナ装置の導入を検討したが、データ統合時のギャップ調整に課題が残り、AIによる色彩情報の自動抽出を試行している。最終年度(令和5年度)では感染症第5類への分類変更を期に対面・訪問での調査を積極的に実行する方針である。
Strategy for Future Research Activity	(1)感染症第5類への移行を期に訪問・対面による調査の実施:調査実施者の健康状態・住所地といった状況と、移動に必要な経路経由地の状況、訪問先森林・訪問先事業体の状況を協議し、経由地を含む関係地域と訪問先事業体に負担をかけない方法での色彩調査再開を目指す。(2)既存映像からの色彩情報抽出:森林や展示会場を訪問しての測定に制限があるため、色彩データの収集が遅れている。そこでデータの量的補完を目的として、過去に別目的で撮影された映像(ネット上に存在する映像情報あるいは既存出版物の画像などからの色彩情報の抽出をさらに進める。すでに収集した色彩情報との質的差異の存在が課題であるが、制作目的や撮影録画状況などのメタ情報を併記保存した上で、色彩情報の抽出を行い、ギャップを勘案した統合に臨む。AIによる色彩情報の自動抽出と分類の試行によって、統合に要する情報の抽出が短縮できる感触が得られた。前年度より導入を検討した3Dスキャナは、画像情報の統合の点で困難があったが、位置測定の取得に機能を絞り、森林調査時の速度向上と多人数で調査をした際の正確な情報共有にむけて活用を進める。
Causes of Carryover	平成30年の国際学会ECPC への参加費・旅費の自費清算(予定支出額約40万円)、令和1年7月豪雨および台風19号水害による調査延期(同約50万円)、研究代表者の視覚病疾治療のため、令和1年国際展示会・国際学会への参加中止(同約50万円)、さらに新型コロナ禍による令和2年1月-3月調査旅行の延期(青森県・埼玉県・富山県・岐阜県・青森県・広島県・山口県・大分県同約57万円)によって、令和2年度頭初までに多額の旅費次年度使用額が累積していた。令和2年度では延期分の調査を増員体制にて実施し遅れを回復する計画であったが、感染拡大の影響から研究遂行の停滞を余儀なくされ、旅費使用が進まなかった。令和3・4年度も前年度と同様に訪問と対面聴取を基本とした調査旅行が阻害され限定的な実施に留まったこと、令和4年7月に研究代表者が右目眼球手術を受け、視覚リハビリを要したことから旅費の使用が進まなかった。物品費・消耗品費他については、データ収集補完用機材の追加購入を進めた。人件費・謝金については、感染対策と調査訪問の延期から人員の増強を中止していたが、令和5年度は、再開された国際学会・展示会への参加、感染対策と調査実施の両立、増員体制をとることで遅滞の解消を行う。延期した調査再開と増員に対応した旅費・人件費、データ保存・分析にかかる消耗品費として研究費を使用する計画である。