2020 Fiscal Year Research-status Report
態度形成のプロセスに着目した 教育者向けデザイン学習プログラムの開発
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18K11967
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
上平 崇仁 専修大学, ネットワーク情報学部, 教授 (20339807)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | デザイン態度 / デザイン思考 / ワークショップ / コ・デザイン / 情報教育 / 情報デザイン / 協働デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、当初に掲げた5つの研究計画の中で、3)教育者に対する「デザイン態度」に関する視点の提案と、4)教育者向けデザイン学習プログラムの検討について取り組んだ。 3)に関しては、単著「コ・デザイン―デザインすることをみんなの手に」(NTT出版/2020年12月)を刊行した。これまでの研究や講演をまとめたものを、この書籍の第6章「デザインにおける態度/姿勢の問題」に収録した。 4)に関しては、オンライン環境を活用した実験的試みとして、二層式ワークショップ(2020年12月26日/オンライン/主催:上平研究室、後援:神奈川県高等学校情報部会)を開催した。これは日本の教育現場で広く行われている研究授業を参考にしたものである。まず、高校生向けデザインワークショップ―「文字のカタチの博物学:日常の文字からデザインの”細胞”を考える」を企画し、デザイナーの山下絵理氏を招聘した。そのワークショップに教育者が参加するとともに、高校生向けワークショップの終了後、教育者向けオンラインワークショップ―「デザインにおける"態度"の視点」を開催し、山下氏がどのようなファシリテーションやアドバイスをしていたのか、そのふるまいを観察し、対話を通して考察するものである。山下氏の態度に着目する経験を通して、教科書には載らない内容を意識化し、技術的な指導や正解主義に偏りがちなデザイン教育を再検討することをねらいとしている。 また、研究計画の5)で掲げた普及活動に関連して、PodCast「態度リサーチ」を開始した。現在、人類学者/剣道家/僧侶/数学者/花人/南極観測隊員にそれぞれインタビューを行い、計6本を公開している。これはパッケージングされた教育カリキュラムではないが、デザインとは直接関係しない分野の人の話から、聞く人が共通する輪郭を見つけることによって、態度的な観点を浮かび上がらせる試みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、長引くパンデミックの影響で、当初予定していた研究計画を大幅に変更することになった。 まず、態度形成プロセスとして、非美術系デザイナーの熟達化のプロセスをインタビューにより詳細に追う計画を立てており、10名のリクルーティングも済んでいたが、オンライン授業への対応と授業内容の再検討を優先して実施を断念することになった。一方で、2018年度に行った情報教員の学習コンテクストから、極めて忙しい教員のためにスキマ時間を利用した学習コンテンツへの手がかりを得ており、調査が有効に働くことになった。これをヒントに、パソコンに向かわずして通勤時間やジョギング時間に学ぶことができるPodCastという発想につながった。内容の主眼となる「態度」も教員向けだけではなく、より広義なものと捉えて幅広い人達に通底するものに方向性を発展させている。 そして、年末に実施した二層式ワークショップは、オンライン環境を生かしたワークショップのデザインとして、春の時点では全く予定出来ていなかったアイデアである。しかし、参加者も研究者もこの一年の多くの経験があってこそオンラインでスムーズに開催できたと言える。結果的には、現在の状況を活かして新しい実践に結びつけることができている。 デザインにおける態度の概念を人々に伝えることについては、書籍出版を経由してオンラインでの講演のオファーを得て、「デザインにおける態度から考える」(Schoo/2021年3月)を開催し、幅広い層に届けることが出来た。 以上をまとめると、2020年度は、大幅に研究計画を変更することになったものの、書籍の出版・ワークショップの実施・PodCastの3点を研究成果として提示することができた。そのため、「おおむね計画通り」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は5カ年の研究計画の4年目である。ここまで取り組んできた、「1)デザイン態度の形成プロセスに関する調査」と「 2)教育者の学習コンテクスト調査」、「3)教育者に対する『デザイン態度』に関する視点の提案」を統合しながら4)の「教育者向けデザイン学習プログラムの開発」にむけてアウトプットの検討を行う。令和3年度は以下の三点を実施する。 第一に、PodCast「態度リサーチ」の続編制作である。デザインとは関係がないように見えて実は深部でつながっていることをコンセプトとして、普段あまり接点のない人にインタビューを行う。全10~12回を予定しており、追加収録予定の6回も2021年度中にすべて公開を予定している。 第二に、オンラインワークショップのシリーズ化である。本年度末までに新しいワークショップを検討し、開催する予定である。パンデミックの状況を鑑みると対面で実施することは難しいため、2021年度の活動もオンラインを中心に考えている。 第三に、それらを反映させつつ、高校教員が参照できる資料を制作する。オンラインで研究者と議論し、教育者が持つべきデザイン態度の育成に関する要点についての考察を行い、まとめていく。オンラインで閲覧できるデジタルコンテンツを予定している。
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Causes of Carryover |
2020年度は、オンライン中心の研究・教育環境を構築するために、各種機材代(オンラインワークショップに必要な動画処理を行うコンピュータ、ソフトウェア、通信環境など)を支出した。しかし動画制作や各種アプリの並列作業において未だマシンパワー不足を感じており、作業環境の向上のためにより高速なチップを搭載した機材を必要としている。2021年度予算の40万の配当では購入が厳しいため、2020年度の残額(293,719円)と合わせて秋に発売されるマシンの購入費とすることを考えている。
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Research Products
(3 results)