2018 Fiscal Year Research-status Report
人間の認知特性からみた都市パターンの設計基準に関する基礎的研究
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18K11974
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
西應 浩司 大阪工業大学, ロボティクス&デザイン工学部, 教授 (70364239)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 空間認知 / 街路パターン / 記憶減衰 / 経路探査 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的:街路パターンを組み合わせて、多くの利用者に分かりやすく覚えやすい街路空間を創出することが可能だと考えられる。今回の研究は昨年の研究と同様の実験方法を用い、間隔をあけて複数回行い、記憶の減衰の効果を検討することで、都市設計基準として利用できる結果を得ることを目的とする。 研究の内容:ルートを設定して3種類の街路パターン(街路A:街路IR 50%街路GR 50%、街路B:街路IR 30%街路GR 70%、街路C:街路IR 70%街路GR 30%)を作成し、街路CG動画による案内(歩く速度で作成した案内アニメ)でルート案内を行った。案内ご実験協力者に地図を描いてもらい実際の街路で歩行してもらった。歩行実験終了後アンケートを行った。この実験を街路の案内アニメ提示直後と、20分後、6日後の3回行った。 考察:3つの街路においてGoalまでの街路歩行到達Link数、街路別平均歩行速度、方向感覚誤差、アンケート難しさレベル平均から3つの街路の特徴を街路の全体的な性質について判断することで比較した。街路歩行平均到達link数を比較すると、街路Aと街路Bは同程度だが、街路Cは全員が1回目~3回目全てゴールまで辿りついている。街路別平均歩行速度は、街路Aは2回目で一度上昇し、また下降している。また、方向感覚誤差においては、街路Aと街路Bが共に回数を重ねるごとに緩やかに減少していくのに比べ、街路Cは1回目の誤差が極めて小さく、回数を重ねるごとに徐々に増加するという動きを見せた。そして、難しさのレベル平均では、街路Aは一様に同程度、街路Bは1回目を難しいと感じた後、一度減少、街路Cは回数を重ねるごとに低下している。これらのデータから点数化し整理した。点数の比較結果から、街路Cが記憶の減衰が少なく、学習による記憶が残りやすい街路であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の研究期間の予定として、歩行実験を行う実験地の地図を基に、実験に用いる格子状街路部分と、不規則に曲がった街路部分のモデリングを行い、3種の街路パターンを作成した。それらをもとに、実験での案内に使用する街路CG動画(歩く速度でルートを通るアニメ)を作成した。平成30年度後半は、作成した画像をもとに歩行実験(予備実験)を行い、格子状街路と不規則に曲がった街路の混在比率を検討した。実験協力者に優位脳検査、心理テストを実施し、空間に対する認識の特徴を調べ、属性による分類を行った。CG動画を用いて疑似的空間内での空間認知について実験を行い、結果を得た。アイマークレコーダー、脳波計のテストとデータ取得の練習を行った。平成31年度実施予定の実験の被験者の内定については人数としての不足分を確保することが課題として残った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31 年度以降の計画:平成30 年度に作成した街路パターンを用いて歩行実験(本実験)を行う。実験地は街路Aパターン(格子状街路)と街路Bパターン(不規則に曲がった街路)の都市パターン混在(A50%B50%)の街路。これらは実在の都市の中に設定する。そこにStartからGoal到達までの難易度を調節するために総延長距離、曲がる回数、曲がり角から曲がり角までの距離を統一したルートを設定する。被験者は予備を含めて20~30名、実験期間は5ヶ月を予定している。小型DVカメラとアイマークレコーダー、脳波計を装着した実験協力者のうち、半数は実験者の後を1度だけ、Start地点からGoal地点までついて歩いてルートを学習する。他の半数はStart地点においてゴーグルで提示する街路CG動画のルート案内(歩く速度でルートを通るアニメで、建物高さは一定でディテールは省略され、空間構造のみが明確に分かる)を1度だけ見てルートを学習する。そして、学習直後にStart地点からGoal地点までの地図を作成する。地図作成後、被験者はStartからGoalに向けて街路内を1人で歩行する。Goalに到るまで被験者が行う歩行行動をDVカメラで撮影する。実験終了後、実験協力者全員に対して実験に関するアンケートを行う。質問内容は、街路の難しさ、どのような方法でルートを歩行したか、など。この一連の実験を期間をおいて3回行う。
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Causes of Carryover |
研究に必要な機器を購入する必要があったため次年度使用額が生じた。購入を希望したアイマークレコーダーは、実験協力者の即時的、かつ、連続的な視線の動きを捉え、空間内の進路判断に必要とする情報を記録するために必要である。この装置は本研究の目的を達成するために重要な役割を果たす。申請時の計画では、初年度に購入する予定だったが、研究経費交付申請時には当初の申請額よりも減額されたためアイマークレコーダー本体のみが購入可能な額となった。更に3年間の分割交付となっていたため、初年度に購入できない状態であった。その後、実験に必要なその他機材の借用、および脳波計のデータを分析するアプリケーションを購入するための研究費を別途用意する目途がたったので、本研究の目的を達成するために必要なアイマークレコーダーを購入できるよう、平成31年度交付分、平成32年度交付分は前倒し支払請求を行った。実験記録用機器は研究代表者が所属する研究機関のものを借用する。脳波計のデータを分析するアプリケーションを購入するための研究費を別途用意するなどの対策をとるので研究を遂行するうえで大きな問題はない。これらの方策をもって研究目的の達成を目指す。前倒し支払請求の必要性、前倒しが認められ、本研究の目的を達成するために重要な役割を果たすアイマークレコーダーを購入できたので、研究実施計画に変更は無い。
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