2020 Fiscal Year Research-status Report
服薬安全のためのLED照明等異なる光源下での医薬品色彩変化範囲と混同色の検証
Project/Area Number |
18K11977
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Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
石崎 真紀子 兵庫医療大学, 薬学部, 研究員 (20623979)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 初男 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (00229311)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 照明 / 錠剤色 / 識別性 / 服薬環境 / 色変化 / カラーユニバーサルデザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の処方薬は白が多く、色みのあるものは高明度、低彩度の暖色系に偏り類似性が高いため視覚機能が低下する高齢者にとっては識別が困難となる傾向がある。また、服薬する生活場面にはさまざまな光源があり、光源による見え方の変化は服薬ミスを誘発する可能性がある。 そこで、65歳以上の高齢者21名の目視で、黄群、黄赤群、ピンク群と判断された微妙に明度、彩度が異なる各8色票の試料を照明光源(LED電球の昼光色、昼白色、温白色、電球色と白熱電球)、日中の太陽光(D65)、日の出・日没光(HZ)、蛍光灯下の低照度(70lx、20lx)のもとで測色し、色の変化を調べた。 その結果、同色群内で混同する可能性として、黄群、黄赤群、ピンク群それぞれで、低照度や白熱電球、LEDの電球色、日の出・日没の光源(HZ)下で測色値が近づく色票が多いことが判明した。さらにピンク群は、温白色下でも多くの色票の測定値が近づき、識別性が低下した。一方で、D65、昼光色、昼光色の光源のもとでは、各色群とも同色群内の8色票は測定値が近似値とはならず、識別されることから服薬環境として適していると考えられる。 また、ピンク群と白、黄群と白は、どの照明下でも測定値が近づかず識別できるが、黄赤群と白は、温白色、白熱電球、日の出・日没(HZ)の光源下で測定値が近づき、似た色に見えることが示唆され、注意すべき光源であると示唆された。 さらに、ピンク群と黄赤群、黄群と黄赤群の組み合わせでも混同しやすい光源がある。具体的には、温白色や低照度下のピンク群と昼白色下の黄赤群、白熱電球下のピンク群と温白色下の黄赤群、電球色や白熱電球下のピンク群と温白色や低照度下の黄赤群、温白色下の黄赤群と電球色下の黄群、白熱電球や電球色下の黄赤群と白熱電球下の黄群は近い値になるものがあった。黄赤群の錠剤は、服用時の光源に特に配慮する必要があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高明度、低彩度の暖色系、赤群、黄赤群、黄群は、日本では白色の次に多い錠剤色である。日本ではあまり多くはないが、海外の製薬会社では珍しくない錠剤色として、青群、紫群、緑群など寒色系がある。現在、これらの色群について、同様の実験を行っている。 もし、寒色系色群が暖色系色群より光源による色変化の影響を受けないとなれば、安全な服薬環境の視点から寒色系を推奨することができ、白や暖色系に偏った錠剤色に対して、より多様な色彩デザインを提案できると考えるからである。 この実験を進めるにあたり、寒色系の試料の色票を選定する被検者を、新型コロナの感染および重症化防止のため、高齢者から大学生に変更した。大学生に高齢者の見え方が疑似体験できる眼鏡(シニアビュー:伊藤光学社製)を装着させ、100枚の色票を青群、紫群、緑群に分類させた。 また、色の評価をさせた際に、「何色か判別できない」もしくは「青か緑か、どちらか迷う」など、明確に分類できない色票が暖色、寒色とも多く出たことを重要視した。すなわち、これらの色みが曖昧な色票は、さまざまな光源の色や照度の影響を受けやすい最も危険な色群であると考えられるからだ。これらを新たに「曖昧な色群」として設定し、追加で同様の実験をすることとした。 以上、被検者を高齢者から大学生に変更したこと、「曖昧な色群」を追加したことなど、予定外ではあったが、現状、ほぼ予定どおりに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、高齢者および若い被検者に高齢者の見え方を模擬するシニアビューを装着した状態で、色を分類させ色票の選定をしてきた。これらはいずれも正常色覚での判断である。カラーユニバーサルデザインの視点から、色弱(色覚異常)の患者を想定した実験を実施する予定である。すなわち、大学生の被検者が模擬で色弱を体験できるグラス(バリアントール:伊藤光学)を装着し、高明度、低彩度の200以上の色票を青、緑、黄、黄赤、赤、紫、白に分類する。その後、再びさまざまな光源のもとで、同様に色分類させ、どのように評価が変化するかを検証する。 以上の結果から、高齢患者だけでなく、色弱患者にとって、安全な服薬環境を光源色の種類と錠剤の色との関係から明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
2020年度は、新型コロナ感染防止等の影響で学会への参加を見送った。また、実験に協力いただく被検者について、学外の高齢者ではなく学内でリクルートしたため、予定より人数が減り、支払う謝礼も減額した。 次年度は、学会等への参加費、旅費、新たな実験についての被検者への謝礼などで使用するつもりである。また、色弱実験に使用する模擬色弱グラス(バリアントール:伊藤光学)について、現在使用しているものが購入から10年以上経っているため、新た購入する予定である。
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