2021 Fiscal Year Research-status Report
舞楽曼荼羅供における舞楽のデジタル再現とその応用―丹生都比売神社を事例として―
Project/Area Number |
18K12002
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
古川 耕平 立命館大学, 映像学部, 准教授 (90425025)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | デジタルアーカイブ / 無形文化遺産 / 舞楽曼荼羅供 / 丹生都比売神社 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、失われた丹生都比売神社における舞楽曼荼羅供という宗教儀礼を対象に、神社境内の再現を含めたデジタル仮想再現をおこなうものである。研究実施計画としては、現地における実地調査や計測、聞き取り調査などが予定されていたものの、2021年度についても、昨年度に引き続き、新型コロナウィルスによる感染がさらに拡大し、これらを実施する状況になく、研究の推進が困難となったことから、既存のデータ整理および次年度のための準備期間とした。 これまでの研究の進捗の中で、神社境内のような建築物をはじめとする広いエリアを3Dモデル化する方策として、フォトグラメトリの技術を導入したが、実際の写真撮影の際は、手作業で1枚ずつ撮影をおこなうため、死角や歪みなどが生じるなどの課題を明らかにした。動作データについては、過年度に一部モーションキャプチャシステムによって取得していたものを、3Dキャラクタモデルに適用した。 一方で、コロナ禍における本研究の進め方についても検討をおこなった。本研究は文化のアーカイブをテーマにしているが、それはすなわち文化継承に関わる人を対象にすることである。アーカイブを実施するために、対象者をウィルス感染の危険に晒すことは本末転倒であり、絶対に避けるべきことである。特に対象者は高齢であることが多く、治療薬が存在しない現時点においては直接的な接触ができないため、電話による聞き取りに留めている。最終的に動画撮影や録音などについては、必要に応じて現地の在住者に依頼することなども含めて検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究進捗全体としては、大幅に遅延している。初年度の2018年度には、国際学会での報告などで成果発信をおこなうことができた。2019年度に、研究代表者が眼球に深刻な怪我を負い、視力の治療・回復まで十分な活動ができなかったことに加え、2019年度末からはコロナ禍における移動や接触に関わる制限により、実地調査が不可能な状況が断続的に発生し、スケジュール調整等が難航したことによる遅延が影響している。 2021年度も新型コロナウィルスの再拡大による影響が大きく、対象者と接触しながらの作業が困難な状況が継続した。県境をまたいでの移動は感染拡大の恐れがあり、本研究を推進する上で、その文化継承に関わる対象者を感染のリスクに晒すことは本末転倒である。対象者が比較的高齢であることに加え、研究に対する不安感を与える可能性もあり、また今後の関係性なども考慮すれば慎重にならざるを得ない状況となった。 さらには、この間に研究協力者が異動するなど、研究推進のための環境の変化があったことも一因として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の終息を見込み、2年間の科研費延長申請をおこなったが、現時点においては2022年度の終息の見込みは立っておらず、引き続き当初計画の推進は困難となることが想定される。一方でワクチン接種などが進み、感染症対策を十分におこなうことで、現地での調査が可能となることも考えられるため、関係性の維持に努めつつ、可能な限り、当初計画の達成に向けて、丁寧に進めていく必要がある。併せて、この間蓄積したいくつかのデータについては、学会・論文発表などを通じて研究成果としてまとめていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大により、実地調査等を実施できず当初計画が大きく遅延したため、次年度に向け、作業効率を向上させるため物品の購入に充てることとした。 最終年度となる2022年度においては、社会的情勢などを慎重に判断しつつ、調査に関わる旅費、データ整理のための人件費および学会・論文発表に関わる経費等のための執行を予定している。
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