2020 Fiscal Year Research-status Report
将棋棋士の指し手案出における思考の神経メカニズムとその個性
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18K12007
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
中谷 裕教 東海大学, 情報通信学部, 講師 (30333868)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 小脳 / 直観的思考 / チャンク / Crus-II |
Outline of Annual Research Achievements |
小脳における内部モデル獲得の性質に基づいて、熟練者の直観的な思考に関わる脳のメカニズムを明らかにすることを目的にしている。 小脳は運動の学習と制御において主要な役割を担っている。運動学習では最初、練習を通して制御対象である手足などのメンタルモデルが大脳皮質内に形成される。メンタルモデルができると当初はそれを使って運動制御を行うが、ある段階で小脳がメンタルモデルを学習し、小脳内に内部モデルが獲得される。小脳での情報処理は無意識的で素早いため、熟練者は無意識的に素早く運動を行うことができる。 一方、認知科学的な視点で考えると、直観的な思考はチャンクの認識に基づいている。チャンクとは駒配置に関するパターンであり、認知処理の際の機能単位である。またチャンクは局面の状況や指し手の案出と結びついているため、局面上にチャンクを認識することで自動的に局面の状況理解や指し手の案出が行えると考えられている。 そこで2020年度はチャンクの認識と直観的な思考との関係を脳活動のレベルで調べた。まずチャンクの認識に関連した小脳部位を同定するために、チャンクが存在する序盤や終盤の局面を提示した時の脳活動と、チャンクが存在しないデタラメな駒配置の局面を提示した時の脳活動を比較した。その結果、右半球のCrus-IIにチャンクの認識に関連した小脳部位が同定された。次に将棋パズルである詰将棋を用いた思考課題において、回答時間とチャンクに関連したCrus-IIの活動の関係を評価したところ、回答時間が短いほどCrus-IIの活動が大きかった。 これらの結果から、チャンクの認識に関連した小脳部位は直観的な思考に関連していることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
年度の前半はコロナ禍のために被験者を対象とした脳機能計測実験を行えなかったため、研究を予定通りに進めることができなかった。しかし、年度の後半からは実験を行えるようになり、上記の結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において直観的な思考における小脳の関与についての十分な知見を得ることができたので、今後は指し手案出における個性に着目して研究を進める。
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Causes of Carryover |
年度の前半はコロナ禍のために被験者を対象とした脳機能計測実験を行えなかったため、研究を予定通りに進めることができなかった。本年度に行えなかった実験も次年度に行い、当初予定した研究計画の完遂を目指す。
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