2019 Fiscal Year Research-status Report
イメージ生成能力の個人差が心的イメージ変換に及ぼす影響およびその神経基盤の解明
Project/Area Number |
18K12014
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
笹岡 貴史 広島大学, 脳・こころ・感性科学研究センター, 准教授 (60367456)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 心的イメージ / 身体イメージ / 心的回転 / 視点取得 / VVIQ / VISQ |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な角度で回転された身体の線画が挙げている腕の左右判別課題(Arm Laterality Judgment task; Parsons, 1987,以下ALJ課題と表記)の成績と,イメージの鮮明さの個人差を測定するvividness of visual imagery questionnaire (VVIQ)および空間・物体イメージの使用傾向の個人差を測定するvisual imagery style questionnaire (VISQ)との関係を調べることで,自己身体イメージ変換の精度とイメージ生成の個人差との関連について検討した.さらに,課題の前にMRIによって脳構造画像を撮像し,voxel based morphometry (VBM)解析により,脳部位の体積とイメージの鮮明さの個人差および課題での指標との相関を検討した. ALJ課題について,各回転角度で正面像と背面像の間の反応時間の比(正答RT比)を参加者ごとに計算し,自己身体イメージ変換にかかるコストの指標とした.その結果,VISQの物体イメージ得点,および物体・空間イメージ得点の合計と90°回転された身体の線画における正答RT比に有意な正の相関が見られた(物体合計:r = .26, p < .05,全合計:r = .27, p < .05).さらに,VBM解析によって,VISQの物体イメージスコアが高かった参加者ほど,左後頭頭頂溝領域の体積が小さいことが分かった.後頭頭頂溝領域は先行研究により,物体の空間座標の変換に関わることが知られており,これらの結果から,特に物体イメージの使用傾向が身体イメージ変換の精度と関連し,このような個人差が脳における空間変換に関わる領域の体積から説明可能であることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初本研究では,イメージの鮮明さに関する質問紙(VVIQ)や心的回転タスク(MRT-Aタスク)によるイメージ操作能力の指標によってイメージ生成の個人差を検討する予定であったが,これらの指標は課題成績の個人差に対する相関が比較的低く,本研究の目的に適していない可能性が示唆されれた. 一方,今回新たに導入した物体・空間イメージの使用傾向に関する質問紙(VISQ)のスコアは,身体イメージの心的回転課題の結果の違いをうまく説明でき,VBM解析においても脳領域の体積の個人差との相関が見られており,本研究の主眼であるイメージ生成の個人差を表す指標としてVISQが最も適していることが分かってきた. さらに,VBM解析によって,物体イメージの使用傾向が強い個人ほど後頭頭頂溝領域の体積が小さいことから,本研究の目的である,心的イメージの明瞭さの個人差が心的イメージ変換の個人差に与える影響および,その脳内メカニズムの解明に資する知見が得られており,おおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19の影響で本年度新たな実験を行うことができない可能性も鑑み,2019年度に行った実験データの解析を主に進めていく.まず,2019年度に行った実験において安静時脳活動も測定しており,2020年度に解析を行うことにより,イメージ生成の個人差に関わる機能的結合についても検討する.また,新たな実験を行うことが可能な状況になれば,課題中のfMRI測定を行うことにより,課題に関連した脳活動についても検討する予定である.これらの知見を統合することにより,イメージ生成の個人差が心的イメージ変換に与える影響についてのメカニズムに関する理論モデルを提案する.
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Causes of Carryover |
2019年度末,COVID-19の影響により会議が中止になるなど,出張旅費を執行することができず,次年度使用額が生じた.2020年度は,2019年度に行った実験データ解析を進めるために必要な計算機等の購入に使用する予定である.
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