2020 Fiscal Year Research-status Report
イメージ生成能力の個人差が心的イメージ変換に及ぼす影響およびその神経基盤の解明
Project/Area Number |
18K12014
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
笹岡 貴史 広島大学, 脳・こころ・感性科学研究センター, 准教授 (60367456)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 心的イメージ / 個人差 / VVIQ / VISQ / VBM解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は視覚イメージの個人差に関わる脳メカニズムを明らかにするため,視覚イメージの個人差を調べる質問紙のスコアを用いて,イメージ生成能力の個人差と関連する脳構造をVoxel-based morphometry(VBM)解析により検討した.72名の参加者から脳構造画像を取得するとともに,視覚イメージの鮮明さに関する質問紙であるVividness of Visual Imagery Questionnaire(VVIQ)および,色や形のイメージ(物体イメージ),構造や空間配置のイメージ(空間イメージ)をどの程度優先して使用するかという傾向に関する質問紙であるVisual Imagery Style Questionnaire(VISQ)のスコアを取得した.これらのスコアと灰白質体積が相関する脳部位をVBM解析によって調べた.その結果,VISQの物体イメージ使用傾向が高かった参加者ほど,左後頭頭頂溝領域の体積が小さいことが分かった.後頭頭頂溝領域は先行研究により,物体の空間座標の変換に関わることが知られていることから,本研究の結果は物体イメージの使用傾向の個人差が脳における空間変換に関わる領域の体積から説明可能であることを示唆している.さらに,VISQの空間イメージ使用傾向が高かった参加者ほど,前頭極の体積が大きいことが分かった.先行研究より前頭極は展望記憶に関わることが知られていることから,展望記憶において必要とされるような多様な情報を統合したイメージを生成する能力が空間イメージ使用傾向と関連することが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は,これまでに行った実験の追加実験を行う予定であったが,コロナ禍により実験に遅滞が生じ,補助事業期間の延長を行った.補助事業期間の延長により,2021年度前半には実験が完了し,解析を行うことができる予定である.これにより,2020年度までに得られた結果が統計的にロバストなものか検証した上で,学会発表,論文出版を行っていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に得られた結果の妥当性を検証するためには,イメージ生成能力と関連した脳部位が,イメージ生成能力が関わる課題の成績とも関連しているかどうか,さらには安静時脳活動においてイメージ生成能力と関連した機能的結合と関連しているかどうかといった検討が必須である.そこで,身体の心的回転など,イメージ生成が必要な課題の成績の個人差に関連する脳部位を調べることによって,2020年度に得られた結果との比較を行う.また,2021年度も引き続きN増し実験を進め,2020年度に得られた結果がロバストに得られるかどうか,さらに同時に取得している安静時脳活動データの解析を進め,脳領域間の機能的結合との関係についても検討を進めていくことで,イメージ生成能力の個人差に関わる脳メカニズムの詳細を明らかにしていく.
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Causes of Carryover |
コロナ禍により研究実施に遅滞が生じたため,N増し実験の実施を行う必要が生じ,補助事業期間を延長した.よって,延長期間において,研究遂行にかかる経費が必要となったため,次年度使用額が生じた.次年度使用額については,実験・解析に関わる物品の購入費用および,成果発表のための英文校正費用,論文投稿料として使用する予定である.
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