2021 Fiscal Year Research-status Report
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18K12018
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
大山 剛史 岡山県立大学, 情報工学部, 助教 (40462668)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 利き手 / 運動制御 / 認知科学 / 人間工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度において大きくは二つの研究を実施した。一つめの研究について、ヒトの運動タスクにおいて知られている速度と精度のトレードオフの関係について、この関係に影響を与える要因について計算機シミュレーション実験を行った。上肢の質量や関節の粘性といった物理パラメータや、生成しようとする軌道、軌道に加わるノイズのパラメータを条件として速度と精度の関係を調べたところ、関節の粘性及びノイズのパラメータは速度と精度の関係に影響を与える一方で、生成しようとする軌道による影響は小さいことが明らかになった。さらに、上肢を質量ダンパ系の線形モデルで近似した条件での運動のばらつきを数式化することで、関節の粘性及びノイズのパラメータが運動のばらつきに与える影響を具体的に示した。 二つめの研究について、認知・運動タスクにおける言語情報の扱いに関する実験を行った。視覚刺激に対する右手及び左手による反応について、選択反応時間タスク(CRT)及び連続タイミングタスク(STT)をタスクとして実験を行った。STTは刺激間隔が一定の条件(STT-C)とランダムな条件(STT-R)の二通りを設定した。さらに、タスク実行中の言語情報の利用をコントロールするために、タスクと無関係な音声の復唱を被験者に課す条件を設定した。実験の結果、CRTでは復唱によって反応が遅くなったが、左右の手による違いはなかった。STT-Cでは右手のみが復唱の影響を受け、被験者は復唱によって正しいタイミングよりも早く反応していた。STT-Rでは復唱の影響はなく、また、左右の手による違いも現れなかった。これらの結果は認知・運動タスク中の言語情報の利用や、視覚刺激に関する情報処理の違いを示唆するものであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに引き続き、感染症防疫のため被験者を取る研究の実施が困難な場面が多々あったが、被験者をそれほど必要としないシミュレーション実験の重点的な実施や、実験様式の工夫などにより、前年度までと比べれば一定の研究成果を得ることができたとみなしている。また、本年度において実験環境のいっそうの整備を進められたことに加えて、感染症の影響が逓減する見込みから、潤滑な研究を遂行できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに実施してきた研究成果を踏まえた上で、認知・運動タスクにおける右手と左手の違い(手の側性)について実験を行う。今後の研究においては、右手と左手を同時に用いる認知・運動タスクにおいて、それぞれの手が生成する運動がどのような特徴を有しており、さらに、そのときに脳においてどのような計算及び情報処理が行われているかについて調べる実験を計画している。当該の実験においては運動の計測だけでなく、脳活動も計測・解析する予定である。
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Causes of Carryover |
本事業以外の業務に要する労力の予定外の増加等により、実施期間や実験内容が必ずしも思惑どおりに進捗したとはいいがたいところがあり、実験装置の調達や研究発表が当初の想定どおりに進まなかったため、次年度使用額が生じた。これについては研究計画を見直した上で、内容等を追加・変更した実験に必要となる装置類の調達や、研究成果の発表に用いる計画にある。
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Research Products
(4 results)