2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12029
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
上野 裕則 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (70518240)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 繊毛 / 水頭症 / 内腕ダイニン / 脳室 / 電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は新型コロナウイルス感染症拡大のため研究計画を一部変更し、次年度まで研究課題を延長することとした。本来最終年度に行う予定であった繊毛の3次元構造解析については、他機関のクライオ電子顕微鏡を用いる必要があり、移動に伴う感染リスクを避けるため、電子顕微鏡を用いた3次元構造解析は次年度以降に延長して繰り越すこととした。そのほか、Dpcdノックアウトマウスにおける内腕ダイニンの定量PCR法によるmRNAの発現解析を行い、一部の内腕ダイニンの発現量の変化について再現性を確認することができた。マウスの内腕ダイニンは少なくとも10種類確認されており、それらの内腕ダイニンのうちいくつかの内腕ダイニンの遺伝子は、Dpcdノックアウトマウスの脳で特異的に発現量の増減があることが分かった。また、遺伝子発現レベルで増減の認められた内腕ダイニンに関しては、タンパク質レベルの発現解析も行っており、免疫染色法やウェスタンブロッティング法によって発現解析を行った。また、これらの遺伝子の発現量の違いは他の臓器に存在する繊毛、例えば精子や輸卵管、気管などの組織では発現量の増減に変化がないことから、脳において特異的に働いている内腕ダイニンの種類がある事が示唆された。また、クライオ電子顕微鏡法によって脳の繊毛の3次元構造を明らかにするため、資料作成法の検討を行った。繊毛の単離にはホモジェナイズなどの物理的に力を加えて単離する方法と、薬品を用いて化学的に単離する方法の2種類がある。物理的な刺激によって単離する方法では脳の組織も一緒に破壊されるため、うまく繊毛を回収することが出来ず、化学的な単離法によって繊毛を回収する方が良いのではないかと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は新型コロナウイルス感染症のため研究の予定を一部変更せざるを得ない状況となり、本研究課題を2022年度まで延長することとした。そのため進捗状況としては「やや遅れている。」とした。これは本研究課題の性質上、特殊な機器を用いて行う研究については他の研究機関でしか行えないため、その部分の研究内容が遅れてしまっているためである。これについては翌年度まで研究を持ち越し、今年度は申請者の研究室で行える研究内容についてのみ研究を進めることになった。また、研究内容の成果発表なども今年度は積極的に行うことが出来なかったことも「やや遅れている」と判断した要因である。 しかしながら、その他の申請者の研究室において行うことが出来る範囲の研究は進み、去年度の結果の再現性の確認等も行う事ができ、それに加えて新しい成果も得ることが出来た。具体的にはDpcdノックアウトマウスの脳の組織において特定の内腕ダイニンの増減が見られたことである。この結果は水頭症の原因を考えるうえで重要な知見であり、本研究課題の重要な成果の1つとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は脳室の繊毛の内部構造を解析するため、脳室繊毛の回収方法を改善する必要がある。繊毛の単離方法については物理的な手法と化学的な手法があり、気管の繊毛や精子の鞭毛などは物理的な手法で回収できることが申請者によって確かめられている。しかし、脳室の繊毛については、脳の組織が脆く、物理的な手法によって繊毛を単離すると、細胞構造も一緒に壊れてしまうため、繊毛とその他の細胞内小器官などが混ざってしまい、その後分離することが困難となってしまうことが分かっている。今年度は化学的な手法による繊毛の単離を試みる。性質は少し異なるが、哺乳類細胞には一次繊毛とよばれる運動性のない繊毛が存在する。この一次繊毛の単離にはカルシウムショック法などが有効との報告があり、今後このような方法を試してみる。その他にも、クラミドモナスなどの単細胞生物では、鞭毛の単離にジブカイン塩酸を用いるのが一般的であり、このような方法も試みる予定である。このような手法によって単離精製した脳室繊毛を膜処理し、凍結してクライオ電子顕微鏡法を用いて解析を行う。基本的にはトモグラフィー法で繊毛の軸糸構造の3次元構造を取得する予定であり、今年度中には、内腕ダイニンの密度が確認できるぐらいの分解能の構造を得たいと考えている。 また、今年度は積極的に学会発表を行いたいと考えている。3次元構造は得られていないものの、その他の成果はたくさん得られており、興味深い発見も多い。これらの成果を様々な学会や雑誌などで発表したいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度はコロナウイルスによる感染症のため、本研究課題の一部の進行に影響が出てしまったため、やむを得ず予算の一部を次年度に持ち越し、次年度に研究を行うこととした。次年度に持ち越した予算は、主に研究に使用する薬品や消耗品類、および国内旅費や成果発表に使用する予定である。
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