2018 Fiscal Year Research-status Report
金属インプラントの腐食現象シミュレーションのためのカソード反応過程解析
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18K12031
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮部 さやか 大阪大学, 工学研究科, 助教 (50584132)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 金属バイオマテリアル / 腐食 / カソード反応 / 不働態皮膜 / 再不働態化 / シミュレーション / 電位分布 / 電流分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内において人工股関節や人工膝関節などの金属インプラントを安全に使用するにあたり、耐食性は非常に重要な要素の一つである。金属インプラントの耐食性を検討する際に、生体内での実測定や瞬時の現象の測定は大変困難であり、腐食現象シミュレーションが有効であると考えられる。金属材料の腐食には不働態皮膜の破壊および再生(再不働態化)が重要であり、研究代表者らは生体環境に存在する塩化物イオンなどの無機イオンや、タンパク質や細胞などの生体分子は不働態皮膜の破壊・再不働態化に影響を及ぼすことを明らかにしてきた。こうした反応はアノード反応・カソード反応両方によって進行するが、不働態皮膜の破壊と再不働態化に関する研究の大部分は損傷部のアノード反応に着目したものであり、非損傷部におけるカソード反応の影響については未だ詳細が明らかになっていない。本研究課題では、無機イオンの存在に加え、タンパク質吸着や細胞が存在する特殊環境である生体環境においてこうした生体分子がカソード反応へ及ぼす影響を明らかにし、摩耗などによって不働態皮膜の破壊が生じる状態での腐食シミュレーションに適用したいと考えている。また、人工股関節では骨頭部では耐摩耗性に優れるコバルトクロム合金が、骨と接触するステム部では骨親和性を有するチタンおよびチタン系合金が使用される。こうした異種金属が接触する場合、片方の金属上では単一金属上よりもイオン溶解が促進される。こうした状態においてさらに片方の金属上で摩耗などにより不働態皮膜の破壊が生じた場合についても電流・電位分布シミュレーションを行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である2018年度はアノード・カソード面積比がアノード損傷により発生する電流に及ぼす影響の調査を行った。フリクションプレーヤーにてピンオンディスク試験を実施した。摩耗部に対し大きさを変化させた模擬カソード部を設け、間に無抵抗電流計を設置することによりアノード部からカソード部に流れる電流を観測した。その結果、模擬カソード部面積が大きい程、流れた電流値は大きくなり、アノード部の摩耗腐食量も大きくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度では、2018年度に得られた結果をもとに、電流制御分極試験を行い、細胞やタンパク質といった生体分子がカソード反応の酸素還元過程に及ぼす影響を検討したいと考えている。電流制御分極の際は電位変化を測定し、また、各条件での皮膜容量をインピーダンス測定によって求めることで、酸素還元電流を算出する予定である。
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Causes of Carryover |
試薬や金属基板の購入などに若干の変更が生じたため。
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Research Products
(10 results)