2019 Fiscal Year Research-status Report
金属インプラントの腐食現象シミュレーションのためのカソード反応過程解析
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18K12031
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮部 さやか 大阪大学, 工学研究科, 助教 (50584132)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 金属バイオマテリアル / 腐食 / カソード反応 / 不働態皮膜 / 再不働態化 / シミュレーション / 電位分布 / 電流分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度はCoCr合金と純Tiを用いて、単一金属の摩耗状態での電気化学的な数値シミュレーションモデルの構築と計算結果の検証を行った。摩耗状態の金属の電気化学的な数値シミュレーションは現在行われておらず、本研究が初の試みとなる。数値シミュレーションに用いる各種パラメータ取得のため、自然電位測定および静止状態と摩耗状態での分極試験を行った。模擬生体溶液内での静止状態の腐食電位はCoCr合金よりも純Tiの方が貴であった。摩耗の開始により、いずれの試料においても電位は低下し、その後ほぼ一定の電位を示す定常状態へと移行した。摩耗時の定常状態の電位においてもCoCr合金よりも純Tiの方が貴であった。定常状態へと達した後、腐食電位よりアノードおよびカソード方向に電位を掃引し、CoCr合金および純Tiそれぞれの分極曲線を測定した。また、摩耗を行わない静止状態でも分極曲線を測定した。得られた分極曲線より、アノード電流とカソード電流の関数化を行った。数値シミュレーションに用いた単一金属モデルは、金属内の一部が摩耗されており、摩耗部と非摩耗部を有するモデルとした。作成したCoCr合金および純Tiそれぞれの摩耗状態と静止状態のアノード電流関数、カソード電流関数を、数値シミュレーションの際の単一金属モデルの摩耗部、非摩耗部にそれぞれ適応した。数値シミュレーションの結果、CoCr合金と純Tiのいずれの電位の計算値も実験値と良い一致を示したことから、本シミュレーションの妥当性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
摩耗状態の単一金属の電気化学的な数値シミュレーションを実施した。摩耗状態の金属の電気化学的な数値シミュレーションは現在行われておらず、本研究が初の試みとなる。摩耗状態の金属上には摩耗部と非摩耗部が存在すると考え、摩耗部、非摩耗部それぞれのアノード反応、カソード反応を考慮する必要がある。摩耗状態と非摩耗状態の動電位分極試験を行い、分極曲線からアノード反応とカソード反応を分離してそれぞれの近似曲線を得た。得られた近似曲線を用い、数値シミュレーションを行ったところ、計算値は実験値とよい一致を示したことから、本シミュレーションの妥当性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、2019年度は摩耗状態の単一金属の電気化学的な数値シミュレーションを構築した。最終年度である2020年度ではTiとCoCr合金が接触しており、片方の金属が摩耗している場合を想定し、異種金属が接触した金属の摩耗状態の電気化学的な数値シミュレーションを実施したいと考えている。さらに、シミュレーションの際のカソード条件を変化させることにより、カソード反応が摩耗摩擦挙動に及ぼす影響を明らかにしたいと考える。
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Causes of Carryover |
2020年3月に予定されていた講演大会が行われず、その旅費分が余剰金となった。余剰金は試薬や金属基板などの材料の購入に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)