2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of a computational method for prediction of patient specific aneurysm growth
Project/Area Number |
18K12040
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
山本 創太 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (80293653)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 動脈瘤 / 予測診断 / バイオメカニクス / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,個別の実患者動脈瘤壁に生じた成長ひずみを予測する現象論的シミュレーシ ョン手法を提案し,患者の継時的診断結果から動脈瘤拡張シミュレーションのための現象論的発展式を導出する.この発展式により動脈瘤拡張予測手法を構築する.実患者の診断において瘤の拡張予測を可能にし,動脈瘤診断における予測診断を実現することを目指す. 2018年度は,LS-DYNAがサポートするエアバッグ要素を利用し,円筒シェル有限要素モデルを実患者動脈瘤形状まで拡張する手法について検討した.その結果,円筒シェルモデルを動脈瘤形状に沿って膨らませることはできたが,動脈瘤全体の形状を再現するにはエアバッグ要素の配置や特性をモデルごとにかなりチューニングする必要があることがわかった.そのため,継時的に変化していく動脈瘤形状を,同じ円筒モデルと境界条件により再現し,病変過程を追うことが容易でないことがわかった. 次に,エアバッグ要素を介さず,十分に柔らかい弾性特性を与えた円筒シェルに内圧を負荷し,実患者動脈瘤形状を再現する手法を試みた.その結果,動脈瘤の継時的な形状変化に追随しながら,実形状動脈瘤モデルを構築することができた.このとき,円筒シェルの初期形状,配置を一定にすることで,円筒シェル有限要素モデルの節点をマーカとし,局所の変形速度テンソルを同定することができた.これにより動脈瘤局所での拡張状態の評価が可能であることが示された.さらに,一連の継続的な検診で得られた同一患者の動脈瘤画像を用い,ある時点で得られた各節点の移動速度から,その次の検診時での節点位置の予測を試みた.今回は予測診断に十分な精度の結果を得られなかったが,有限要素モデルの節点数の改善,医用画像からの動脈瘤外形状の高精度な抽出方法の検討等により,予測診断精度の向上を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初考案したアイディアに沿って,動脈瘤実形状有限要素モデルを,円筒シェル有限要素モデルを動脈瘤実形状に対して投影的に拡張させることで再現できることを示せた.また,有限要素モデルの節点をマーカとして,すなわち節点移動速度とそれより算出される変形速度テンソルを求め,局所的な変形を定量的に評価する指標を得ることができた.線形弾性体を拡張することで,同じ初期形状有限要素モデルを異なる日時の検診で得られた動脈瘤形状へ投影を行えば,節点座標を物質点マーカとして扱うことができる.これらの成果については概ね計画どおりに進行している. シミュレーション手法の一部については,当初案からの変更が必要であった.円筒シェル有限要素モデルを動脈瘤実形状モデルに対して投影的に拡張させる手法として,当初考えていたエアバッグ要素を使用せず,十分に柔らかい弾性円筒シェルに直接内圧負荷する方法を採用することとした.この変更は,エアバッグ要素を使って円筒シェルモデルを動脈瘤形状に沿って膨らませることはできたが,動脈瘤全体の形状を再現するにはエアバッグ要素の配置や特性をモデルごとにかなりチューニングする必要があることがわかったことによる. また,予測診断への適用性検討に用いるため連携研究者から提供を受けた医用画像データは,血管造影により得られたものであるため,動脈瘤内壁形状であった.この内壁形状は実際に血流がある領域を意味しており,動脈瘤壁内壁に生じる壁在血栓のさらに内側である可能性がある.検証用画像データでは動脈瘤最大径は拡張し続ける一方,局所的には縮小する箇所もあり,壁在血栓が動脈瘤内壁側に肥厚していることも考えられる.壁在血栓は動脈瘤壁の構造要素として機能するものではなく,動脈瘤破裂のリスク評価には正しく動脈瘤壁を再現する必要がある.そのため,医用画像からの動脈瘤外形状を高精度に抽出する方法を検討する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
動脈瘤の局所的拡張予測には,変形速度テンソルよりも物質点マーカの移動自体を予測できた方が活用しやすい可能性がある.今後は,動脈瘤形状に投影した有限要素モデルの全節点について,次時点での予測位置を算出し,これを可視化する方法を検討する. また,動脈瘤外壁形状を医用画像から高精度に抽出する方法を検討し直し,提案手法により動脈瘤拡張予測診断ができることを実証する.広く用いられている医用画像データのビューワもしくは画像処理ソフトでは,コントラストがはっきりした動脈瘤内壁境界の抽出は比較的簡単であるが,コントラストがはっきりしない外壁境界の抽出には手作業が必要となる.臨床的な予測診断においては,この手作業の手間をかけることは現実的でないため,より効率的かつ高精度な動脈瘤外壁形状抽出手法を検討する必要がある. 現在までのところ,動脈瘤実形状に投影する円筒シェル有限要素モデルは等方線形弾性体としている.すなわち,動脈瘤拡張が等方的に生じると仮定していることになる.血管壁は構造上,明らかに横等方もしくは直交異方的な内部構造を持つこと,血管壁変性は動脈壁組織の結合の変化や,円周方向に配向した中膜平滑筋組織の菲薄化であることから,病変進行が等方的に生じるものではないことが推測できる.本研究が提案する動脈瘤拡張予測シミュレーションにおいて,異方的な病変進行は投影させる円筒シェル有限要素モデルの異方性や非線形弾性特性により表現できる可能性がある.今後は,等方弾性体と直交異方弾性体,非線形弾性体の予測結果の比較を行い,より妥当な予測結果を与えるシミュレーションモデル構築手法を検討する.
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Causes of Carryover |
研究運営を効率化し,研究補助謝金の支出を抑制した.2019年度以降,研究の効率的な推進のため,有限要素解析ソフトを増やし,多数のシミュレーションを並行して実施する必要があることから,支出計画を変更し,次年度使用額を生じさせた.
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