2018 Fiscal Year Research-status Report
透明帯(ZP)複屈折の定量イメージングによる未受精卵の品質診断
Project/Area Number |
18K12042
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
村山 嘉延 日本大学, 工学部, 准教授 (80339267)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 未受精卵 / 卵子品質 / 透明帯 / 複屈折率 / 体外成熟 / 透明帯硬化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、卵子透明帯(ZP)複屈折の経時的変化に着目し、卵子品質を定量的かつ安全に診断する基準を見出すことを最終目標としている。平成30年度にはZP複屈折を定量測定する方法の確立、およびZP複屈折の変化パターンの測定の研究課題に取り組んだ。まず、マウス卵子を用いて従来の偏光顕微鏡によるZP複屈折測定に表れるばらつきを調べた。未受精卵の成熟過程において、第1減数分裂中期および第2減数分裂中期におけるZP複屈折はそれぞれ16.5±16.5deg(n=13)、14.7±18.1deg(n=117)であり、両者の間に有意差は無くZP硬化に相当する変化は測定できなかった。受精前後においても、受精前の第2減数分裂中期では11.0±14.4deg(n=33)、受精後の前核期では10.9±12.9deg(n=33)であり、有意差は得られなかった。受精によりZP複屈折量が増加した卵子17個に対し、減少した卵子が16個であり、ZP硬化を反映した測定値は得られていない。複屈折性は屈折率の差と試料の厚さに依存するため、透明帯のように測定部位の光路長が分からない試料の複屈折を測定するのは難しい。そこで、透過型レーザー顕微鏡を用いた複屈折測定法を検討し、ZP複屈折像の撮影に成功した。平成30年度には、加えて体外成熟(IVM)過程における卵子品質の検討を行った。体内成熟したZP弾性率が18.5kPaまで軟化したのに対し、IVM卵では28.8kPaと有意に高い結果を得た。IVM卵は卵丘細胞の付着が弱い細胞ほどZP硬化の傾向がみられたことから、成熟によるZP軟化が不十分であったか、表層顆粒が分泌されZP硬化した可能性が考えられる。同様に卵丘細胞を裸化したIVM卵子は、形態学的に成熟卵と同様であっても透明帯硬化が起こらず、これらの結果から成熟過程において卵子品質を評価できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
共同研究機関(ヒト生殖補助医療クリニック)が医師の急逝により閉院したことから、Octax PolarAIDE顕微鏡を使用した実験が実施できなくなり、ZP複屈折の変化パターンを明らかにする目標が未達となった。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、平成30年度に新たに開発した透過型レーザー顕微鏡を用いて、撮像したZP複屈折分布から任意の光路長に相当する屈折率を算出するアルゴリズムの開発に取り組む。次に、開発した複屈折測定法の定量性および安全性の評価を、マウス卵子をモデルとして実施する。複屈折測定法が確立されれば、排卵直後のマウス未成熟卵子を採卵し実験に供し、成熟、受精、胚分割の各過程におけるZP複屈折の経時的変化を測定する。以降は、当初の実験計画の通り、(1)受精後のZP硬化に伴うZP複屈折変化と卵子品質との関係を明らかにする、(2)未受精卵のZP軟化に伴うZP複屈折変化と卵子品質との関係を明らかにする、(3)ZP複屈折を用いた卵子品質評価法の臨床応用可能性を検討する、と順次研究を実施する予定である。しかしながら、当初予定していた共同研究機関(ヒト生殖補助医療クリニック)が医師の急逝により閉院したことから、新たに共同研究を実施する機関を探す必用が生じている。
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