2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12065
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中楯 浩康 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (10514987)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脳震盪 / 軸索損傷 / Tauタンパク質 / 衝撃ひずみ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,繰り返し引張実験による細胞耐性評価を実施した.引張ひずみを神経細胞に負荷すると軸索が局所的に膨張し,軸索損傷を引き起こす.これまでの実験で,10%のひずみを1度負荷するだけでは,軸索損傷は惹起されないことが分かっている.よって本実験では,10%の大きさのひずみを2度負荷し,ひずみ負荷の繰り返し間隔を24時間と72時間として実施した.軸索損傷評価は,ひずみ負荷24時間後に軸索損傷部位に凝集したTauタンパク質を免疫染色し,蛍光顕微鏡で観察した.Tauタンパク質は,頭部外傷後に脳脊髄液や血液に漏出することからバイオマーカーとして注目されている.
PDMS(polydimethylsiloxane)で作製した単軸引張チャンバーの培養面にラット海馬初代培養細胞を播種し,7-9日間培養後,引張ひずみを負荷した.チャンバー1個当たり100-200個の神経細胞を観察し,3回の実験を実施した.ひずみ10%,ひずみ速度5 s-1を1度負荷した群(Single)と,1度目の負荷1日後(24h)もしくは3日後(72h)に同様のひずみを繰り返し負荷した群(Double)の軸索損傷を引張を負荷しない対照群(Sham)と比較した.引張負荷1日後に軸索損傷マーカとしてTauタンパク質を免疫染色し,軸索瘤(swellings)および軸索球(bulb)が形成された神経細胞の割合を算出した.Single群ではswellingsは形成されるが,Sham群との有意な差は認められず,Double群におけるswellingsの形成は,Sham群と比べて24hで有意に増加したが,72hでは有意な差は認められなかった.
1度の弱衝撃の負荷では顕在化しない軸索損傷が,24時間後の2度目の負荷により,損傷した神経細胞の割合が増大することで顕在化することを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
30年度は,2度の引張実験による軸索損傷の重症化について,検討を行った.
当初の目的であった,1度の引張ひずみ負荷では損傷しない,もしくは一時的に損傷するが,時間経過とともに回復する弱衝撃を実験的に定義することができた.また,本年度は,10%の引張ひずみを採用したが,より小さなひずみの影響についても今後検討する.
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Strategy for Future Research Activity |
31年度は,神経軸索の伸長方向を制御する培養方法を確立し,その有用性を確かめる.
PDMS微細溝構造に細胞接着を強化する合成アミノ酸鎖であるpoly-D-lysine (PDL) 溶液と基底膜マトリックスをコーティングし,スタンプすることで細胞培養面内に細胞接着部位と細胞非接着部位をパターニングする.
本手法を用いて微小電極上に細胞体を配置し軸索を所望の方向に伸長制御することで,任意の場所に細胞を培養できるため,同一細胞の観察が容易になる.1細胞単位で軸索損傷観察と電流刺激を経時的に同一細胞で行える.
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Causes of Carryover |
他の研究課題との共通利用で実験消耗品を効率的に使用したため,物品執行額が当初予算額より減り,次年度使用額が生じた.次年度使用する細胞培養試薬に使用する.
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