2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12065
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中楯 浩康 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (10514987)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脳震盪 / 軸索損傷 / Tauタンパク質 / 衝撃ひずみ / 頭部衝突 / 神経細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は,連続する頭部衝突を模した引張実験による細胞耐性評価を実施した.実際の歩行者対自動車の交通事故では,頭部は車両だけでなく路面とも衝突することがある.引張ひずみを神経細胞に負荷すると軸索が局所的に膨張し,軸索損傷を引き起こす.これまでの実験で,10%のひずみを1度負荷するだけでは,軸索損傷は惹起されないことが分かっている.よって本実験では,10%の大きさのひずみを連続して2度負荷し,ひずみ負荷の繰り返し間隔を1 s以内として実施した.本実験では,衝撃負荷前に二つの細胞間を接続していた神経突起が,衝撃負荷後にその接続が破断することを損傷と定義した. 対照群では,どの観察時間においても神経突起は接続したままで破断は認められず,他の神経突起においては時間依存的に突起が伸長している様子が観察された.一方,単独衝撃群では,衝撃負荷前では二つの細胞が神経突起で接続されていたが,衝撃負荷3時間後では接続部が破断し神経突起の退縮が認められた.しかし,24時間後には退縮した神経突起が伸長し始め,48時間後には再び接続していることが観察された.また,連続衝撃群においても,衝撃負荷前では二つの細胞が神経突起で接続されていたが,衝撃負荷3時間後では接続部が破断し神経突起の退縮が認められた.さらに,24時間後においても退縮した神経突起が認められ,48時間後に退縮した神経突起の伸長が観察された.単独衝撃群より連続衝撃群で退縮した神経突起が再び伸長するまでに48時間を要したことから,神経細胞に連続して弱衝撃(引張ひずみ0.1)が加わることで,損傷程度が重症化したと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は,連続する頭部衝突を模した引張実験による細胞耐性評価を実施し,1度の弱衝撃の負荷では顕在化しない軸索損傷が,連続する2度目の負荷により,損傷した神経細胞の割合が増大することで顕在化することを示した.また,神経軸索の伸長方向を制御する培養方法を確立し,その有用性を確かめることができた.PDMS微細溝構造に細胞接着を強化する合成アミノ酸鎖であるpoly-D-lysine (PDL) 溶液と基底膜マトリックスをコーティングし,スタンプすることで細胞培養面内に細胞接着部位と細胞非接着部位をパターニングした.本手法を用いることで,任意の場所に細胞を培養できるため,同一細胞の観察が容易になる.1細胞単位で軸索損傷観察と電流刺激を経時的に同一細胞で行える.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2020年度は,繰り返しの弱衝撃を負荷した脳神経細胞に電気刺激を与え,軸索損傷の重症化が修復されるかどうかを検討する.具体的には,細胞生存率,軸索長,Tauタンパク質の軸索膨張への局在などを検討する.また,電気刺激による修復メカニズムを解明するため,神経細胞の周囲に存在するアストロサイトの形態変化観察や動態解析を実施し,両者の時空間的な関係を明らかにする.
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Causes of Carryover |
他の研究課題との共通利用で実験消耗品を効率的に使用したため,物品執行額が当初予算額より減り,次年度使用額が生じた.次年度使用する細胞培養試薬に使用する.
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