2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the mechanism of severe brain injury due to repeated concussion
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18K12065
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中楯 浩康 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (10514987)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脳震盪 / 軸索損傷 / Tauタンパク質 / 衝撃ひずみ / 頭部外傷 / 脳神経細胞 / 細胞引張 / 重症化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は繰り返し引張ひずみ負荷を受ける脳神経細胞の軸索耐性評価を実施した.ソフトリソグラフィ技術であるマイクロコンタクトプリンティング法により,ラット海馬由来神経細胞の軸索を引張方向に配向制御し,10%のひずみを24時間間隔で1~5回負荷した.引張負荷24時間後にTauタンパク質を免疫染色し,軸索内での局所的な凝集を蛍光観察することで,軸索損傷を評価した.3回の繰り返し引張後に軸索が損傷を受けた神経細胞の数は最大となり,その後は減少した.また,1,3,5回の引張負荷24時間後に神経細胞の生死判定を行った.引張回数の増加に伴って細胞死も増加し,3回,5回の繰り返し引張後では,引張を負荷しない神経細胞と比較して有意な差が認められた.本実験結果より,1回の引張では損傷を引き起こさないひずみ値であっても,3回以上の繰り返しの引張が神経細胞に加わると軸索損傷が有意に増加し,本実験条件における神経細胞の耐性閾値は3回の繰り返し引張ひずみであることを示した. 本課題では繰り返し脳震盪による脳損傷の重症化について検討した.アメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツで多発する脳震盪は,意識障害が軽度でありほとんど後遺症を残さずに回復する病態として認識されてきた.しかし,繰り返し受傷すると脳は刺激に対して脆弱,敏感になり,追加される外傷に対する閾値が低下し,外傷が軽度であっても重症頭部外傷後にみられるような記憶力や注意力の低下を引き起こす.一般的に頭部を強打すると脳組織が変形し,軸索に引張応力が加わり,損傷や断裂を引き起こす.本課題では,脳震盪における軸索損傷を想定し,1度の引張ひずみ負荷では損傷しない,もしくは一時的に損傷するが,時間経過とともに回復する弱衝撃を実験的に定義することで,弱衝撃の繰り返し負荷により損傷が増大することを示し,脳震盪を繰り返すことの危険性を明らかにした.
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