2019 Fiscal Year Research-status Report
ナノプレートモデルを基盤とした界面ミクロ相分離の新理論モデルの構築
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18K12080
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
村上 大樹 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (80588145)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生体親和性高分子 / 相分離構造 / ナノプレートモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
生体親和性高分子/水界面では高分子と水のミクロ相分離による微細構造が形成していて、その微細構造が生体親和性高分子の機能発現に大きく関与していることが研究代表者のこれまでの研究から分かっている。本研究ではその微細構造発現を理論的に予測し、機能制御に繋げるために、正確な理論モデルの構築を目的としている。具体的にはこれまでに提唱されている「ナノプレートモデル」を基盤とし、さらに微細構造のサイズや分布の予測を可能にする新理論モデルの構築を目指している。 そのためにまずは微細構造がどのような要因によってどのように変化するかを実験的に検証する必要がある。前年度にはまず高分子の分子量がどのように影響するかを検討するために、分子量の異なる高分子の合成、界面微細構造の解析を行った。本年度は高分子の疎水性が与える影響を検討するために、疎水性の異なる2種の高分子を共重合した高分子を合成し、その影響を調査した。結果として、疎水性が高くなるにつれて界面構造は次第に大きくなり、それに伴って生体親和性が低下するという、非常に系統的な変化が観測された。特に疎水性の増大に伴って界面相分離構造の一方のドメイン中でタンパク質の吸着・活性化が促進される様子が明確に確認され、ドメイン中の高分子と水の混和性の違いによる水和構造の変化がこの違いを生じているということが予測された。本研究成果は学術雑誌Journal of Biomaterials Science, Polymer Editionに掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画は、生体親和性高分子の相分離構造を実験的に検証することと、その実験結果を受けて理論的に考察することを主な内容としている。前年度、今年度で実験的な検証は大幅に進み、高分子の分子量や疎水性の効果についてそれぞれ学術雑誌で報告するに至っている。また論文報告には至っていないが、高分子の化学構造による影響の検討も進行中である。このように当初予定に従い、界面微細構造の変化を実験的に検証する研究を順調に遂行し、今後の理論考察に必要な結果を蓄積することができており、研究の進捗状況は良好と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように相分離構造を決める要因の実験的な検証は概ね順調に進行した。そのため当初予定に従い、今後は赤外分光測定による高分子と水の相互作用の評価と、理論考察による新モデル構築に着手していく予定である。さらに理論考察の結果を実験検証にフィードバックし、生体親和性高分子の設計指針とし、より高機能な材料開発に繋げていくことを目標とする。
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Causes of Carryover |
赤外分光光度計の購入を予定していたが、実験進捗の都合により本年度は原子間力顕微鏡観察に注力して当該装置の購入を行わなかったため、未使用額が生じた。翌年度に繰り越した予算により年度上旬に赤外分光光度計の購入を進める予定である。
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Research Products
(4 results)