2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of artificial laminin gel platform for acinar structure regeneration
Project/Area Number |
18K12085
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
保住 建太郎 北里大学, 北里大学保健衛生専門学院, 講師 (10453804)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞接着 / キトサン / ハイドロゲル / ラミニン / 唾液腺細胞 / 細胞外マトリックス / ハイドロゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
発生過程では初期杯の上皮組織が間葉組織へと貫入することによって器官原基が形成され、器官原基が様々な組織へと分化しながら集合し最終的に機能を有する器官として成熟していくことも多い。上皮組織と間葉組織の間には基底膜と呼ばれる非常に薄い細胞外マトリックスが存在し、器官形成の起点となる上皮組織の貫入開始点は、基底膜を動的に認識・分泌・分解・再生しながら間葉組織内に入り込みながら器官形成の礎となる。本研究計画では腺組織原基の発生・分化に適した細胞外環境の基質特性を解明し、唾液腺細胞や各種幹細胞を始めとした細胞分化の誘導を可能とする細胞培養プラットフォームとしての人工ラミニン(ラミニン由来活性ペプチド-キトサンハイドロゲル)の開発を目的としている。 令和元年度はキトサンハイドロゲルの作製法の開発と最適化についての学会報告と、線維芽細胞を用いたキトサンハイドロゲルの細胞接着活性についての学会報告をそれぞれおこなった。また、本研究の目的の1つである細胞分化を誘導するラミニンフラグメント同定として、ラミニンα5鎖中の活性配列の同定に注目した成果を論文として報告した。ラミニンα5鎖は五種類あるラミニンα鎖のなかでも成体基底膜に最も広範に存在するα鎖で、そのフラグメントはiPS細胞の培養基質として用いられている。具体的には、ヒトラミニンα5鎖Gドメインに存在する活性配列を同定するために、115種類の合成ペプチドを用いてそれぞれの生物活性を評価したところ、三種類のペプチドが細胞接着活性を示すことがわかった。また、ヒトラミニンα5鎖C末端側の配列がジストログリカンと結合することに関する成果も論文報告した。これらのことから、ヒトラミニンα5鎖由来のペプチドが人工ラミニン創製のツールとして利用可能で、重要なツールであるとともに、人工ラミニンへの生物活性付与に有用であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度の研究で、基底膜様の機能を有したマトリックスとしての人工ラミニンハイドロゲル創製にむけて、ラミニン由来活性ペプチドを含有させながらキトサンを架橋化したラミニン由来活性ペプチド-キトサンハイドロゲルを開発した。令和元年度は目標としたキトサンハイドロゲルの開発に着手した。アミノ基を持つ塩基性高分子多糖であるキトサンは水に不溶であるが、有機酸水溶液に溶解すると容易にキトサン水溶液とすることができる。そこで、可溶化剤として有機酸のジカルボン酸を用いることで、キトサンを水に溶解させることが可能となり、かつ、ジカルボン酸のカルボキシ基とキトサンのアミノ基を架橋することに成功した。また、様々な構造をもつジカルボン酸を用いたところ、直鎖状ジカルボン酸としてはアジピン酸、アミノ酸としてはアスパラギン酸を用いた際に容易にキトサンハイドロゲルを作成可能であることがわかった。さらに、複数のジカルボン酸を混合することで安定的にハイドロゲルの固さを自由に調整できること、架橋化反応の際に用いるカルボジイミドの反応性を制御するためのpH調整にGood緩衝剤を用いることなどについての知見が得られた。作製したキトサンハイドロゲルに生物活性が付与できるかどうかを確認するためにラミニン由来活性ペプチドを固定化したラミニン由来活性ペプチド-キトサンハイドロゲルは、ペプチドの種類特異的な細胞接着活性を示した。具体的にはインテグリン結合ペプチドを固定化した際にはインテグリンと、シンデカン結合ペプチドを固定化した際にはシンデカンと結合しることがわかった。 しかしながら、研究代表者の所属機関が本計画の採択と同時に変わったため、教育環境と研究環境の構築に時間を要し、研究の進捗、論文発表および学会発表とも計画より若干遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の最終年度となる令和2年度の研究推進方針としては、ジカルボン酸で架橋化したキトサンハイドロゲルの生物活性評価を完了し、腺細胞に分化を誘導する細胞培養プラットフォームの完成を目指す。令和元年度は、キトサンハイドロゲルを再現性良く安定的にハイドロゲルとして調整する方法を開発した。また、細胞分化誘導の1つのキーファクターとなる細胞外環境の「固さ」をコントロールするため、「固さ」を容易に可変可能な調整方法も開発し、これらの結果を検証・報告した。令和2年度はキトサンハイドロゲルが腺組織分化細胞培養プラットフォームとして利用できるような生物活性を付与するために、アミノ酸やペプチドを混合-固定化したキトサンハイドロゲルを作製し、その生物活性を評価する。ラミニン由来活性ペプチドを固定化したキトサンハイドロゲルの作成に関しては、すでに検証を開始している。ペプチドとしては、異なる活性ペプチドグループから抽出した混合ペプチドの組み合わせと混合比の最適化を引き続き行う。異なる受容体と特異的に結合するペプチドの組み合わせや、三種類以上のペプチドの組み合わせに関しても検証する。さらに、発生期における腺組織の発生には腺組織本体となる上皮細胞と、これを取り巻く環境を形成する線維芽細胞(間葉系細胞)の二種類の細胞が重要な役割を果たしていることがわかっているため、上皮細胞(唾液腺上皮細胞)と間葉系細胞を並行して評価するとともに、二種類の細胞でのco-cultureシステムを開発することで、腺組織分化プラットフォームを最適化していく。 以上の研究推進方策のもと、異なるアミノ酸や誘導体、ペプチドも流用しながらフレキシブルに対応することで、本計画の遂行に向けて研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
計画研究費に対して10%程度の未使用が生じたが、年度末の世界的な不測事態で令和元年度内に納品されなかった物品等を除いてはほぼ計画通りに実施した。今年度も引き続き計画通りの研究を実施予定である。
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[Presentation] Characterization of Dystroglycan Binding in Adhesion of Human Induced Pluripotent Stem Cells to Laminin‐511 E8 Fragment2019
Author(s)
Y. Kikkawa, Y. Sugawara, K. Hamada, Y. Yamada, J. Kumai, M. Kanagawa, K. Kobayashi, T. Toda, Y. Negishi, F. Katagiri, K. Hozumi, M. Nomizu
Organizer
ASCB/EMBO 2019 meeting
Int'l Joint Research
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