2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K12101
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中山 和也 金沢大学, 保健学系, 准教授 (80242543)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光学CT装置 / ゲル線量計 / 放射線治療 / 3次元計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
主な研究結果を以下に示す。 1. 装置の改良:光学CT装置では、試料の光透過度の変化を読み取ることが重要である。実験の結果、これまでのカメラでは、カメラのゲインと画像のピクセル値の関係が良くないことがわかった。これは試料の光透過度の測定に影響を与える恐れがある。そこでカメラを変更した。この変更に伴い、装置を改良(一部は新規に作製)した。主な改良点は以下の通りである。以前の装置とほぼ同じ部品を使用したが、部品の配置を変更し、制御系を小型化した。新たな測定方法に対応できるように、光源を複数化し、光源用電源を増設した。増設した光源には、スマートフォン用のLCDパネル(6インチ、1440×2560)を使用した。新しいカメラの放熱対策としてアルミ材を使用したカメラの固定具を作製し、冷却ファンを取り付けた。新しいカメラは、メーカーからカメラのゲインと画像の輝度特性の関係が公開されている。予備実験でも良好な結果を得た。なお、カメラの変更に伴い、測定時間が短縮できた。しかしながら、今年度は前年度の結果と比較考察することが多かったため、カメラ変更後の本格的な実験は次年度以降に行うことにした。 2.測定用試料の検討:実際のゲル線量計は、その濃さが経時的に変化する。また劇物(毒物)に指定された物質を使用することがあり、取扱いに注意が必要である。そこで、光学CT装置の動作確認用の試料を開発した。ゲル線量計は、照射線量によって試料の濃さが濃くなる色素ゲル線量計と、白濁化するポリマーゲル線量計に大別される。色素ゲル線量計の模擬試料には、粉末状の食用色素を使用したもの考案し、その光学特性、半年間の経時変化を調べ、良好な結果を得た。ポリマーゲル線量計の模擬試料には、粉末用の食品添加物である二酸化チタンを使用したものを考案した。こちらの模擬試料に関してはいくつか問題点が見つかり、その改善方法を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 装置の改良:予定していた散乱光に関する影響は、装置内に黒いスパッタフェルトを散乱光防止布として張ることで対応した。スパッタフェルトは耐熱性に優れ、装置の発熱体付近での使用も問題がなかった。この散乱光防止布の追加により、これまでのところ目立った問題は生じていない。カメラの発熱対策については、放熱特性の良いアルミ材を使用した固定具を開発し、小型の冷却ファンの追加で対応した。また昨年度と比較して、以下の点が改善された。前述の通り、本研究では試料の光透過度の変化を読み取ることが重要である。そのためカメラのゲインとピクセル値の関係が重要である。カメラゲインと得られた投影像のピクセル値の常用対数の値を1次関数で相関をとったところ、昨年度まではR2が0.82であったが、今年度は0.99に改善できた。測定時間の短縮も実現できた。例えば1ステップにつき10枚撮影した場合(合計4000枚)、測定時間が550秒から220秒になった。 2. 測定用試料の検討:実際のゲル線量計は取扱いに注意が必要な場合が多い。実験の結果から、ゲル線量計の模擬試料が光学CT装置の動作確認などに重要であることが分かった。そこで、昨年度と今年度にかけて模擬試料の開発を試み、半年間の経時変化や光学特性を調べた。ゲル化剤に食用のアガーを用いた模擬試料は、大きな経時的な変化を示さず、少なくとも半年間の使用に大きな問題がないことが分かった。開発した模擬試料は、水と食品添加物から作製しており、保管や廃棄が容易である。また、食用色素や食品添加物の濃度と光(340 nmから850 nmの波長範囲)の透過度の関係を明らかにし、光学CT装置の動作確認(性能評価)に使用できることを確認した。実際のゲル線量計には様々な物質(色)が使用されているが、本測定方法を利用すれば、最適な光源色を調べる(選ぶ)ことができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
散乱光に関する研究は、今年度までの研究で一定の効果を得た。一方、カメラの特性評価とその特性を活かした撮影方法の検討は引き続きおこなう。今年度開発した模擬試料を用いた基礎実験の結果、カメラのダイナミックレンジが重要なことが分かった。そこで、この点を追加で検討する予定である。現在8ビットカラーの投影像を取得しているが、疑似的に8ビット以上の特性を有する投影像を得る方法を検討する。具体的には、カメラのゲインや露出時間を変えながら測定することを考えている。これには、制御装置やプログラムの改良が必要である。また投影像の撮影時に、カメラのゲインや露光時間の情報を含めたデータを保管する必要があり、その保管(データ)形式も検討する。すでに複数のデータ形式案を検討している。実験やシミュレーションを通して、使い勝手がよく効果的なデータ形式を新たに開発する。これらは車載カメラ用に提案されている技術を一部参考にしながら開発する予定である。なお測定(投影像の撮影)方法の手順も検討する予定である。現在使用中の投影像から断層像を得る再構成方法(プログラム)は、単精度浮動小数点形式に対応している。そこでこの形式に適したデータ形式に変換する方法(再構成の前処理方法)も改良する。これは前述のファイルの保管形式とも関係するが、一連の測定の流れのどの段階で実施するのが(処理時間とデータ量の点からも含めて)効果的かも確認しながら実施する予定である。なおデータ量が増加することが予想されるため、データ(ファイル)保管方法の検討も実施する。 模擬試料に関する検討も引き続き行う。実際のゲル線量計は様々な材料(組成)を使用しているため、引き続き取り扱いが容易な試料を検討する予定である。また、前述の投影像の高ダイナミックレンジ化の評価に適した模擬試料の開発などを行う予定である。
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Causes of Carryover |
交付頂いた額は申請した予算案から減額された額だったため、一部の部品は、自前で設計、加工、作製するなどして経費の削減に努めた。また購入を予定した製品の見直しを行ったため、次年度使用額が生じた。 次年度も、引き続き装置の改良方法(設計)を見直し、経費の削減に努め、繰り越した額を含めて必要となる電子部品、配線材料などの消耗品の購入に充てる。
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Research Products
(1 results)