2018 Fiscal Year Research-status Report
新規マイクロニードルと物理的透過促進法を併用したバイオ医薬品皮膚透過促進法の研究
Project/Area Number |
18K12109
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
引間 知広 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (30332852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 高廣 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (10367401)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 烏口型マイクロニードル / 射出成型技術 / 微細金型加工 / 光干渉画像法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の初年度である平成30年度は、生体適合性高分子を用いた射出成型により新規形状マイクロニードル(MN)アレイの作成を試みた。この新規形状MNアレイの満たすべき性能として、MNによる皮膚への穿刺孔深さを200μm以上、またMN表面への薬剤保持量を3mg以上とした。また射出成型技術により、多量に同一形状のMNを作成することを目指した。MNアレイの基本形状として、高さ1000μmで針の先端から500μmの溝を持つ烏口型のMNが直径8mmの円内に100本立つもの(MN1)を作成した。このMN1における薬剤保持量を検討したところ、1.77±0.02mgと要求性能の半分程度であった。そこで500μmの溝を700μmと深くしたMN2を作成した。このMN2における薬剤保持量は、3.20±0.21mgと要求性能を満たす事が出来た。また新生児ブタ皮膚にMNを適用し、ポータブル光干渉画像法(OCT)システムにより非接触・非破壊・非侵襲により穿刺孔深さを測定した。MN1およびMN2ともに200μm以上の穿刺孔深さであった。このMNアレイ2の優位性を確認するため、針に溝を持たないMNを作成している。 新規形状MNの要求性能として、穿刺孔深さと薬剤塗布量を挙げた。医療用機器としてのMNでは、皮膚への穿刺性や穿刺孔深さを定量的に評価し、薬効成分などの動態を明らかにしなければならない。これは本研究で示したOCTシステムにより解明が可能であることを示す事が出来た。またMNの臨床利用における大きな問題として、投薬量が制限されており、利用できる医薬品が限られていることが挙げられる。これまでの多くの研究では、薬剤保持量は1mgを超える事が出来なかった。本研究成果では、薬剤保持量の限界をこれまでの3倍まで上げる事ができ、さまざまな医薬品、特にバイオ医薬品の経皮投与の可能性を示す事が出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、3つの達成課題を挙げている。1つ目はMNアレイ形状の最適化、2つ目はバイオ医薬品の皮膚内送達量の増大と皮膚透過速度制御、そして3つ目は実験動物を使用した新規形状MNの効果検証である。平成30年度では1つ目の課題であるMNアレイ形状の最適化を達成するために、新規形状MNアレイの満たすべき要求性能として、皮膚への穿刺性とMNへの薬剤保持量を挙げた。MN1では穿刺孔深さの要求性能を満たしたが、薬剤保持量を達成する事ができなかった。そこで穿刺性を損なわずに薬剤保持量を増やす目的で、MN2を作成した。このMN2は、要求性能である穿刺孔深さと薬剤保持量ともに満たす事ができた。したがって3つの達成課題の1つ目であるMNアレイ形状の最適化を達成する事ができた。しかしMN表面での薬剤保持量と皮膚内への送達量の関係は現在検討中であるため、おおむね順調に進展していると判断した。 本研究課題で得られた成果を社会へ広めるため、烏口MNアレイの作成方法について、研究分担者である伊藤が2019年3月に開催された精密工学会2019年度春季大会において口頭発表を行った。そして発表内容に関して、学術雑誌へ投稿するため英語論文を執筆している。またMN2の研究成果について、引間は2019年7月に開催予定の第35回日本DDS学会学術集会で発表を行うため、準備を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画通りに達成課題の2つ目であるバイオ医薬品の皮膚内送達量の増大と皮膚透過速度制御を検討する。まず検討途中であるバイオ医薬品のモデル化合物であるフルオレセインイソチオシアナートデキストラン(FITC-D、分子量は1万から200万までを使用する)の皮膚内送達量を、新生児ブタ皮膚を用いて明らかする。また実際に臨床利用されているタンパク医薬品であるインスリンの皮膚送達量も検討する予定である。インスリンは3つ目の達成課題である実験動物における効果検証のため利用する予定である。 皮膚透過量の増大と透過速度の制御には、物理的透過促進法である電場を用いる。これまで他の研究者による電場での医薬品の皮膚透過促進の成果として、電場は局所麻酔やオピオイド鎮痛剤などの経皮送達促進が挙げられる。これらの医薬品は分子量が数百程度と小さい。しかし本研究課題では、バイオ医薬品として分子量数百万程度までのタンパク質を想定しており、これまで他の研究者からバイオ医薬品の電場での送達促進の報告は無い。また高分子量の化合物は、電場による透過促進効果が低い事が予想できる。そこで電流の種類(直流と交流)、電流の向き、電流値などのパラメータと皮膚透過促進効果との関係を、FITC-Dやインスリンを用いて検討する。電場での透過速度制御の可能性が低い場合、他の物理的透過促進技術(超音波や磁場など)を併用し、皮膚透過促進技術の検討を継続する。
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