2018 Fiscal Year Research-status Report
高精度イメージマッチング法を利用した関節動態評価手法の開発
Project/Area Number |
18K12120
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
日垣 秀彦 九州産業大学, 生命科学部, 教授 (00238263)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 低侵襲性動態解析 / 人工股関節 / 生体肩関節 / インピンジメント評価 / 病態解明 / 最接近距離 / 接触角度 / 最小距離 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,股関節および肩関節を中心とした新たな評価パラメータの検討と評価手法の開発に着手し,その研究成果を報告した. 股関節における研究報告では主に,「Journal of Orthopaedic Surgery and Research 13(1)」に掲載された.この論文では,申請者が開発した人工股関節の低侵襲性高精度動態解析手法を基本動態の解析手法とし,スクワット動作の6自由度動態の算出を行った.さらに,得られた6自由度動態をもとに人工股関節のLinerとneck間の最接近距離の算出を行い,インピンジメントの危険性評価に用いた.これにより,解析を行った被験者にインピンジメントが見られないことを確認した.また,新たに最接近距離からLinerとneck間の接触角度の評価を行い,Shell置換位置との関係性について詳しく検討した. 肩関節における研究報告では主に,「Clinical Biomechanics 60」に掲載された.この論文では,健常肩関節と腱板損傷肩関節を対象とし,本研究グループで開発した生体関節の低侵襲性高精度動態解析手法を基本動態の解析手法とし,肩甲骨面挙上動作ならびに下垂位回旋動作の6自由度動態の算出を行った.健常肩関節と腱板損傷肩関節との比較評価を行い,得られた6自由度動態をもとに,これまで研究報告の少なった肩峰下面と上腕骨頭間の最小距離の変位に着目し評価を行った.肩甲骨面挙上動作では,ほとんどの上腕外転角度において有意な最小距離の減少を確認し,下垂位回旋動作では外旋位において有意な最小距離の減少を確認した.腱板損傷による肩関節の不安定性評価ならびに最小距離の定量化による病態解明について検討した. これらの研究成果を報告するにあたり,補助金を用いてデータ解析のためのワークステーションとデータ蓄積用記憶媒体の購入,モデリング材料および加工器具を多数購入した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,臨床の共同研究者と共に解析対象関節の選定を行った.また,対象関節の解析に必要とされる医用画像の収集を行った.さらに,申請者が開発したイメージマッチング法(X線動画像にCT画像から構築した骨モデルの投影像を一致させる手法)を応用した高精度ウィンドウ解析法(画像に設けたウィンドウ内で画像相関を行う手法)より得られる動態解析結果をもとに,最適な評価パラメータによる新たな評価手法を開発することを目的とした. 解析対象関節の選定と解析に必要とされる医用画像の収集では,病理動態の解明や術前後比較を予想し疾患の多く報告されている荷重負荷および可動域の大きい関節や,QOLの向上を背景に日常動作やスポーツ動作で多用される関節を対象とした.これらの関節を中心に臨床の共同研究者の協力のもと,収集可能な健常関節・疾患関節・術後関節のデータ収集を行っている.基本データの収集は次年度も継続的に行っていく.さらに,複数の関節を連動的に評価することを視野に入れた,撮影方法および解析手法を臨床の共同研究者と共に検討していく. 最適な評価パラメータによる新たな評価手法の開発では,人工股関節のLinerとneck間の最接近距離および,接触角度の算出によるインピンジメントの危険性評価を提案し,スクワット動作時における最伸展時での最接近距離と接触角度の減少を確認している.さらに,インピンジメントの危険性の有無やShell置換位置との関連性について報告している.また,生体肩関節では肩峰下インピンジメント症候群の病態解明に有用と考えられる,肩峰下面と上腕骨頭間の最小距離の算出と動作に伴う変位の評価を提案し,健常肩に対して腱板損傷肩の最小距離の有意な減少を確認している.さらに,腱板損傷が肩関節動態に与える病理的不安定性の解明ならびに,最小距離の定量化による診断などの臨床分野への応用の可能性について報告している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画は,申請者の開発した低侵襲性高精度動態解析手法がベースとなっている.人工関節に対してはインプラント形状,生体関節に対しては骨情報を含んだ投影シミュレーション像と,1方向X線動画像間の画像相関を用いて6自由度関節動態結果の算出を行う.本年度に引き続き,解析に用いる対象関節の医用画像の収集を本計画に参加していただいている,臨床の共同研究者の九州大学医学部の中島康晴教授,京都大学医学部の松田秀一教授,愛媛大学医学部の三浦裕正教授の協力のもと行っていく.対象関節については,当初予定していた肩関節,脊椎,腰椎,股関節および足関節とする.対象動作については,可動域が広い動作や日常生活動作の中で回避困難な動作,さらに疾患時に運動異常がみられる動作,手術後に満足度の低い動作やリハビリテーションで行う動作などを中心にデータ収集を行っていく.また,下肢,上肢,体幹の総合的な関節の運動メカニズムの解明が可能になると考えられる,複数関節の連動動態に関する評価手法の開発についても引き続き取り組んでいく.複数関節の連動動態については,撮影方法や計測方法,評価パラメータ,新たな動態解析ソフトウェアの検討を行っていく.人工股関節や生体肩関節における新たな評価手法を提案しているが,これらの評価手法は他関節の機能評価や病理動態の解明においても応用可能であると考えられる.さらに,申請者が報告した人工膝関節では最下点や最接近点,生体膝関節ではヘリカル軸や軟骨下骨間距離,膝十字靱帯付着部位間距離などの評価手法についても,他関節への応用が可能であると考えられる.これらの評価パラメータをベースに各関節に最適な評価パラメータと,新たな評価手法の提案・検討を行っていく.研究成果は随時,国内外の学会等の発表・論文掲載での報告を予定している.
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