2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of electroretinogram deforming the multifocal hexagonal stimulus array to identify the retinal layer causing the decline in visual sensitivity
Project/Area Number |
18K12122
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Research Institution | National Institute of Technology(KOSEN),Numazu College |
Principal Investigator |
鈴木 尚人 沼津工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (50551066)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 網膜電図 / マイクロペリメトリー / 視感度低下 / 網膜層の特定 / 重畳式ERG / 黄斑局所ERG |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は背景配列上に7個の刺激配列を重ね合わせた重畳式ERG(網膜電図)の開発を行っている.この方法はマイクロペリメトリー(精密視野計)によって計測された視感度低下した網膜の範囲の内で,病変部となる網膜層をERGの波形によって特定出来るものである.実際,重畳式ERGを用いて,20~50代の健康な数名を対象としてERGの計測を行った.結果はa波,b波,c波,PhNR波を確認した.また,ERGの錐体応答と杆体錐体混合応答を確認した.各波形は網膜の層や細胞を由来とする.a波は OFF型錐体双極細胞を由来とし,b波は ON型及び OFF型双極細胞を由来とし,c波は網膜色素上皮を由来とし,PhNR (Photopic Negative Response)は網膜神経節細胞を由来とする.これらの研究成果は2021年9月に行われた欧州視覚・眼研究学会(European Association for Vision and Eye Research)の国際会議のオンラインセッションにおいて,研究代表者によって発表された. また,研究代表者は2019年度に米国スタンフォード大学医科大学院眼科学専攻に客員研究員として1年間留学をし,主に網膜電図の開発を行ってきた.所属先のDavid Myung 先生の研究室には眼科学,生物学,薬学等の分野のエキスパートがそろっており,適切なディスカッションを可能とした.また,ERGの世界的権威であり,同じスタンフォード大学のMichael Marmor教授から適切なアドバイスを受けることが出来た.本研究の目的はパターン形状可変式ERGの開発であるが,背景配列と刺激配列の周辺に発生する不規則な配列はERG計測に適さないので,重畳式で良いとされた.さらに,ERGのもう一つの方法である黄斑局所ERGを試行すべきであるとされた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)高輝度モニターの採用:我々が開発した実験装置はERG,マイクロペリメトリー,眼底カメラの3種類の機能を持つ.現在用いている8インチモニターは輝度が250cd/m2であり,視野計として考えると輝度が低い.世界的に普及されているハンフリー視野計の輝度は10,000asbで約3,200cd/m2となる.実験装置に組み込み可能な12.1インチで輝度2,000cd/m2の高輝度液晶モニターを購入し,実験装置に設置した.また,研究実績の概要で述べさせて頂いたが,黄斑局所ERGを応用する.従来の黄斑局所ERGは最大輝度8,000cd/m2のLEDを用いた専用の装置を使用して行われている.本研究は49インチで3,500cd/m2の超高輝度液晶モニターを購入し,実験に使用した. (2)黄斑局所ERGのソフトウェア開発とERG実験:開発ソフトフェアC++Builder 10.2を用いて,黄斑局所ERGソフトウェアを開発した.従来の黄斑局所ERGと同様に,視度が直径5度,10度,15度の円形フリッカー刺激を表示可能にした.また,1~15度の任意の円形フリッカー刺激機能も付加した.3500cd/m2の超高輝度液晶モニターを使用し,20~50代の健康な数名を対象としてERGの計測を行った.結果はa波,b波,PhNR波,律動様小波(OPs),d波を確認した.また,ERGの錐体応答と杆体錐体混合応答を確認した.律動様小波は網膜のアマクリン細胞から由来し,d波は光刺激終了時に発生する錐体を由来とするOFF応答である. (3)非球面レンズの検討:我々の実験装置は両凸球面レンズを用いていたので,周辺部に歪みが発生していた.この画像周辺部の歪みを無くすために,光学式デザインソフトウェア OpTalix-LT 10.8を用いて光学計算を実施し,非球面レンズを購入した.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)黄斑局所ERGソフトウェアの改良:2021年度に開発された黄斑局所ERGソフトウェアはa波,b波,PhNR波,律動様小波(OPs),d波が確認できた.律動様小波(OPs),d波は2021年度に初めて計測可能となった.フリッカー光刺激の周波数を10~100Hzに変化させ,これらの波形の周波数応答を調査する. (2)模型眼の眼球運動計測:眼球運動計測のための機構を製作し,模型眼を運動させ,模型眼の眼底に描かれた模様を撮影する.この機構は振り子の原理を利用して,模型眼が左右に回転するものとなる.撮影した模型眼の眼底画像を数値計算ソフトウェアScilab6.1.0により,眼球運動の変位を計算する. (3)非球面レンズを用いた撮影画像の歪み補正:従来の実験装置は対物レンズと光源前のレンズに,球面レンズを使用しているため,光の収差による画像の歪みが確認された.そのため,光学計算ソフトウェア OpTalix-LT 10.8を使用し,光学系の再計算を行い,適切な非球面レンズを購入した.その非球面レンズを使用して,模型眼の撮影実験及び画像の歪み補正を調査する. (4)PICマイコンを用いたノイズフィルターの開発:本研究で使用している電気計測装置は50Hzのハムノイズを削減するために,ノッチフィルターを用いていた.しかし,ノッチフィルターは構造上,削減する帯域幅が狭くない.そこで,我々はPICマイコンを用いて,必要最小限のノイズ削減を行う. (5)被験者に対し,重畳式ERGと黄斑局所ERGを用いてERG計測を行う.また,マイクロペリメトリーソフトウェアを用いて,視感度低下を計測する.視感度はハンフリー視野計と同程度であること,ERG波形のデータは健常者のデータとして整合性が取れていることを評価する.その後,黄斑ジストロフィ等の患者に対し,マイクロペリメトリーとERGを計測する.
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Causes of Carryover |
コロナウィスル感染拡大のため,研究代表者は2020年度に勤務先においてオンライン授業と対面授業の両立を図る必要があった.また,学生寮運営等の校務が重なり,それに大変な時間と労力を取られてしまった.とても,2021年度だけで,遅れを取り戻すことが出来なかった. しかし,研究代表者は2019年度にスタンフォード大学医科大学院に留学し,本研究における重要なアドバイスを受けることが出来た.それは,本研究のシステムに,黄斑局所ERGを応用することである.そのために,研究代表者は黄斑局所ERGソフトウェアを開発し,3500cd/m2の超高輝度液晶モニターを購入し,ERG計測を行ったら,パターン形状可変式や重畳式ERGでは計測出来なかった律動様小波(OPs)やd波を計測可能となった.これらの波形により,本研究は新たに網膜のアマクリン細胞や光刺激終了時に発生する錐体を特定できる可能性を示すことが出来た.
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