2018 Fiscal Year Research-status Report
新しい三次元細胞培養技術を利用した再生医療等製品の造腫瘍性関連試験の開発
Project/Area Number |
18K12137
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
草川 森士 国立医薬品食品衛生研究所, 再生・細胞医療製品部, 主任研究官 (80462802)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 造腫瘍性試験 / 再生医療等製品 / 悪性形質転換細胞 / 三次元細胞培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、ヒト細胞加工製品中に混在する悪性形質転換細胞を軟寒天コロニー形成試験よりも簡便かつ効率的に検出するための新たな試験系の確立を目的とし、天然物由来の新規ポリマーLA717を添加した培地を利用する新しい三次元培養法の検討を進めてきた。平成30年度は、悪性形質転換細胞の検出に最適な培養条件(細胞播種密度、ポリマー添加濃度等)を検討した。LA717含有培地は一般的な寒天培地と異なり粘性が殆どない液体培地だが、ヒト胎児正常肺組織由来線維芽細胞(MRC-5)を通常の液体培地を用いて低接着性96ウェルプレートで高密度(10000、30000、90000個/ウェル)に浮遊培養した際に生じる細胞の過凝集が、LA717(0.03%および0.06%)含有培地での培養で抑制された。また、LA717含有培地で分散させ浮遊培養したMRC-5は、2~3週間の培養期間において増殖することは無かった。一方、がん細胞(HeLa-GFP)は、LA717含有培地での単独培養時及びMRC-5との共培養時それぞれにおいて、約2週間で単一細胞からの増殖および明瞭なコロニー形成が認められたことから、LA717含有培地は増殖性の高い細胞の凝集を妨げないことが確認された。また、HeLa-GFPのLA717含有培地でのコロニー形成は複数回の試行においてほぼ一定の効率で認められたが、LA717の含有濃度が高くなるとコロニー形成の頻度が低くなる傾向にあった。以上の結果から、正常細胞中の悪性形質転換細胞の混在評価における新規三次元培養法の有用性が強く示唆され、従来法よりも簡便且つ高感度な試験系への本培養法の応用が期待できる。次年度以降は、評価する細胞種を増やし本培養法の汎用性を検証した上で、試験系としての詳細なプロトコールを設定し性能評価を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正常細胞(形質転換を起こしていない細胞)については、不死化ヒト間葉系幹細胞についても評価し、MRC-5と同様に、高密度浮遊培養時の細胞過凝集がLA717含有培地での培養で抑制されることが確認できている。がん細胞についても複数の細胞株について評価し、HEK-293やU87MGでもLA717含有培地での培養において、それぞれが一定の効率でコロニー形成を示すことを見出している。また、中にはコロニーを殆ど形成しない細胞株(PA-1)も存在した。このように、既に複数種の細胞についてデータを取得している。基本的な培養条件と複数細胞株での検討結果については学会でも発表した。今後さらに評価する細胞種を増やしていくことに加え、細胞同士の組み合わせについても複数パターンでの検討を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的な培養条件はほぼ固まったが、細胞種によってケースバイケースで条件を調整する必要も考えられる。また、本培養法を適用できそうにない細胞種も一部認められているため、今後さらに種類を増やして検討を進めて情報を蓄積させていく必要があるが、まずは本培養法を利用した造腫瘍性試験についてのPoC(proof of concept)論文をまとめることを目指す。 コロニーの存在を取得した画像から検出する方法については、ソフトウェアでの自動解析ではまだ不十分であり、明視野像の目視確認が欠かせないのが現状であり大きな課題となっている。まずは、増殖細胞への特異性が高い染色試薬を探索し、コロニー認識の精度を高める工夫を検討し、コロニー判定の指標としての形状や蛍光量についての閾値設定法を確立したい。さらに、新規に導入したソフトウェアが備える機械学習による解析機能についても検討する予定である。
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Causes of Carryover |
内訳に少し変更が生じた(旅費は別予算で賄うことができ、さらに、その他で予定していた論文執筆に関わる予算の一部を物品費に当て、その残りは次年度に回すことにした)ことで次年度使用額が生じる形となった。
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