2018 Fiscal Year Research-status Report
UVC-LEDを光源とする留置尿道カテーテル用殺菌装置の開発
Project/Area Number |
18K12140
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
齊藤 玄敏 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (70264091)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 留置尿道カテーテルの殺菌 / UVC-LED / 殺菌所要時間の推定と実測 / 温度特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,UVC-LEDを用いた留置尿道カテーテル用殺菌装置のUVC-LED殺菌ユニットの1次設計モジュールの作成と殺菌性能の評価を行った。 (1)UVC-LEDは市販の出力16,000[μW]のものを用いた。このUVC-LEDは指向性が強く,紫外線照射域が狭いなどの問題があるため,この出力水準のUVC-LED使用を想定のもと,紫外線照射シミュレーション(直達光+散乱光)を行い,UVC-LEDの個数や配置,反射板の最適化を行った。それにより,紫外線LEDを3個使用する紫外線LED単列型配置で殺菌ユニットを作成する方針を定めた。 (2)尿道カテーテルに使用されているシリコーンゴムに対する紫外線透過強度測定実験を行い,試作した殺菌ユニット(1次設計モジュール)が要する尿路感染症の起因菌である大腸菌,緑膿菌,枯草菌の殺菌時間(99.9%殺菌)を算出した(31[s],56[s],73[s])。先行研究の水銀ランプを用いた殺菌装置と比較して,大腸菌と緑膿菌の殺菌時間は短く(39[s],58[s]),枯草菌の殺菌時間は長くなる(70[s])ことがわかった。また,大腸菌の菌液を用いた殺菌評価実験では,水銀ランプを用いた殺菌装置では99.9%殺菌に36[s]要するのに対し,本研究の殺菌ユニットでは19[s]と半分程度の時間で済むことがわかった。 (3)殺菌ユニット(1次設計モジュール)の温度測定を行い,冷却機能の確認をした。本研究で使用した紫外線LEDは10数秒でジャンクション温度が限界温度の115[℃]となってしまうので,冷却装置が十分に機能していないと,LEDの破壊ばかりでなく使用者に低温やけどを発症させる危険が考えられる。紫外線LEDの温度上昇は室温から約10から12[℃]だったので人体への低温やけどの危険性もなく,冷却装置は十分に機能していることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は,本研究全体の基盤をなす内容である。殺菌ユニット(1次殺菌モジュール)の設計と作成,殺菌性能の評価をほぼ計画通りに遂行できたことから,「概ね順調に進展している。」と判断する。殺菌ユニット(1次殺菌モジュール)の設計においては,紫外線照射シミュレーション(直達光+散乱光)を組み入れることで,設計→シミュレーション→試作→評価の流れが先行研究よりも確かなものになり,改善点の発見と設計へのフィードバックが容易になった。ただし,UVC-LEDの点灯中に大きな発熱をともなうため,冷却機構を含めた熱設計も重要で,今後は熱のシミュレーションも取り入れていきたいと考えている。 大腸菌の菌液を用いた殺菌評価実験では,先行研究で試作した水銀ランプを用いた殺菌装置では99.9%殺菌に36[s]要するのに対し,本研究の殺菌ユニットでは19[s]と半分程度の時間で済むことがわかったことは,本研究にとって非常に大きな収穫であった。紫外線源のパワーは水銀ランプの方が大きく一様であるのに,このような結果に至った理由は,LEDの紫外線照射特性(電流を流した瞬間に定格のパワーに達する)と殺菌ユニットの寸法(水銀ランプを用いた殺菌装置よりも本研究の殺菌ユニットの方が小さい)が大きく関係していると思われ,紫外線照射シミュレーションを通じて,結果の解釈が可能になると考えている。 これらの成果は本研究で考えている紫外線殺菌装置の開発の流れに重大な問題が無いことを示すもので,今後の研究に繋がる基盤作りができたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2次設計殺菌モジュールの設計と作成,殺菌性能の評価を行う。課題申請時は,殺菌評価実験においては,UVC-LEDの紫外線照射域が狭いこと(照射ムラ)が殺菌性能に影響してくると予想していたが,実際の殺菌所要時間を見る限りはそのような影響は全くみられなかった。したがって,紫外線照射シミュレーションを通じて,1次設計殺菌モジュールの殺菌所要時間が短くて済む理由を明らかにして,2次設計殺菌モジュールの設計に反映させることが重要である。H30年度の研究を終えた現段階では,殺菌ユニットの寸法と形状が大きく関係していると予想している。 2次設計殺菌モジュールを作成後,装置の殺菌面上での紫外線量の測定,温度(熱)測定,殺菌評価実験(ここでは臨床現場を想定し,大腸菌,緑膿菌,枯草菌等の複数菌種を用い,より実践的な殺菌能力評価とする)を行い,改良の効果を明らかにする。また,臨床試験用殺菌モジュールに向けた改善点を示す。
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Causes of Carryover |
今年度の研究を実施していく中で,熱シミュレーションの実施の必要性を強く感じた。そこで,今年度の使用額の一部を次年度の使用額にまわし,熱シミュレーションソフトウェアの購入の一部に充てることで,予算を無駄なく効果的に使用できると考えた。 次年度の使用額は,熱シミュレーションソフトウェアと2次設計モジュールの材料を主として構成される物品費,そして成果発表のための旅費で,ほぼ使い切る計画である。
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Research Products
(4 results)