2018 Fiscal Year Research-status Report
中枢温度を用いた脊髄損傷患者用体温制御システムの研究
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18K12148
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Research Institution | Tokyo Metropolitan College of Industrial Technology |
Principal Investigator |
吉村 拓巳 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 教授 (30353262)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 俊世 早稲田大学, 次世代ロボット研究機構, 客員上級研究員(研究院客員教授) (10142259)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 深部体温 / 体温制御 / 脊髄損傷 / 双熱流法 |
Outline of Annual Research Achievements |
[中枢温を用いた体温制御アルゴリズムの検討] 健常者と脊髄損傷者の温熱付加実験を行うための予備実験を行い、実験プロトコルの検討を行った。被験者への測定時の負担を避けるため、実験に使用する最小の生体情報として、深部体温、体表面温度、心拍数の計測を行う方針を決定し、その他の生理量は被験者の状態により検討を行うこととした。 [冷却・加温デバイスの開発] 対象者の体温を一定に保つため、安全かつ効果的な熱伝導の手法を検討した。今年度は、水冷式の冷却加温デバイスの試作を行った。開発したデバイスはシャツのように上半身に装着するタイプで、冷却加温した水を循環させる構造となっている。また、ペルチェ素子により循環する水が冷却加温可能な構造とした。試作した装置の冷却能力を検証した結果、30℃の室温において10℃程度の水温を供給可能であるが、装着時に水温が上昇し、効率的な冷却方法を検討する必要があることが明らかとなった。 [深部体温センサの検討] 双熱流法を用いた深部体温センサの検討を行った。生体を模擬した温熱ダミーを開発し、深部温度推定の精度検証を行った。本研究で提案する「双熱流法」の新しい測定アルゴリズムを用いることで、従来のアルゴリズムに比べ測定精度が向上することが明らかとなった。また、無線式の小型センサの設計を行い、装置の試作を行った。今後測定精度の検証等を行う予定である。また、生体インピーダンスの変化により発汗量を推定するモニタ検討も行った。測定回路の試作と小型軽量化を行い、発汗時の発汗量と電気インピーダンスの関係を調査した。実験の結果、生体インピーダンスと発汗量の間に相関があることが明らかとなったが、運動中は生体電気インピーダンスの変動が大きく、安静中の測定しかできないため、運動中などを想定した体温制御システムには利用が難しいことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
[中枢温を用いた体温制御アルゴリズムの検討] 30年度の研究計画では、予備実験と実験装置の構築、脊髄損傷者の実験を行う予定であった。健常者と脊髄損傷者の予備実験は7月および8月に実施し、実験のプロトコルを決定できたため、目標は達成できた。 [冷却・加温デバイスの開発] 30年度の研究計画では、加温冷却方法の検討を行い、設計を行う予定であった。冷却デバイスについては試作を行えたが、効率的な冷却方法を検討する必要も明らかとなったため、これらの問題を解決する必要が出てきた。しかし、大幅な遅れが見込まれるものではなく、最終的な完成計画に変更は無いと考えられる。 [深部体温センサの検討] 30年度の研究計画では、無線式のセンサの設計、試作、改良を行う予定であった。研究実績の概要でも示したように、おおむね予定通り進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
[中枢温を用いた体温制御アルゴリズムの検討] 決定した実験プロトコルで、健常者と脊髄損傷者の実験を行う。脊髄損傷者の実験は可能であれば車いすアスリートと一般の車いす利用者を対象に行う。脊髄損傷者の結果と健常者の生理量を比較し、体温制御のアルゴリズムの検討を行う。 [冷却・加温デバイスの開発] 30年度に明らかとなった、冷却能力の問題点を解決する方法を検討する。また、体温を加温する方法も同時に検討を行おこなう。冷却と加温の機能を一体とした装置の小型化の検討と試作を行い、車いすに実装可能な装置に仕上げる。 [深部体温センサの検討] 30年度に試作した無線式の精度検証と、改良を行う。精度検証に関しては、30年度で開発した温熱ダミーを用い、外気温度の変化や深部体温の条件でどのように測定精度が変わるのか詳しく検討するとともに、プローブの形状による測定精度の検証も行う。さらに、体温制御システムへの統合を行うため、より小型のセンサの開発を行う。
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Causes of Carryover |
30年度に計画していた国際学会発表に支出しなかったためと、温熱ダミーの作成のために計画していた恒温槽とデータロガーを購入せず自作した装置で代用できたため残額が生じた。 残額の使用計画としては、30年度に問題となった冷却・加温デバイスの冷却能力の改良のため部品の購入や、新たな評価装置の購入に充てる。
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