2019 Fiscal Year Research-status Report
現象学における「存在の根拠としての言語」概念の系譜と主体性の言語的基盤の解明
Project/Area Number |
18K12177
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
景山 洋平 関西学院大学, 文学部, 准教授 (50780376)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 存在論 / 人間論 / 現象学 / 解釈学 / 言語論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、研究実施計画における形而上学的な言語概念と主体性の関係に特に焦点をあてて研究を進めた。具体的には、言語的対話の発見機能を基盤として、現象学的存在論の体系構造と、主体性をめぐる倫理的問題を再構成する作業に従事した。 前者の成果については、哲学の基本論点の解明として一般社会に広く共有されるように工夫して公開することを試みた。具体的には、第一に、対話の発見機能の存在論的意義を、西洋哲学史の文脈において、歴史的・体系的に考察した。第二に、一般形而上学における存在論と神学の二重性と、存在論における範疇概念を、対話の発見機能の観点から再解釈することを試みた。第三に、21世紀において展開されている実在論の諸潮流について、特にマルクス・ガブリエルに焦点をあてながら、その理論的困難の解決策を提示するとともに、その解決策の根幹となるものが対話の発見機能であることを考察した。第四に、主体性をめぐる理論哲学上の諸論点(相互主観性、受動性と能動性、誕生と死)について、対話の発見機能を基盤として再解釈した。その成果は、『人間の賛歌としての哲学の問い』(光文社)として公刊される予定である。 後者の成果については、現代倫理学における「境界」の問題圏に対する言語的対話の発見機能の意義に焦点をあてて、研究を進めた。これについて、上記した現象学的存在論の体系構造における主体性の位置をふまえつつ、倫理的規範を共有する共同体の「境界」に対する対話の発見機能の構成的意義を明らかにした。その成果は"The Place and Authenticity of Humans in Facticity"としてボン大学のシンポジウム(2019年6月6日)で発表され、Nature, Technology, Metaphysics(堀之内出版)から刊行予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2018年度で、現象学的存在論における言語的対話の発見機能への洞察を得たことがブレイクスルーとなって、2019年度では、この洞察の体系的意義を予想以上に広範に考察することができた。これにより、本研究で獲得すべき哲学的知見の基本的な枠組みは構築できたので、今後は、この骨組みを充足するような哲学史的跡づけの作業を行えばよい。このような点で、本研究は当初の計画以上に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、言語的対話の発見機能の体系的・実践的意義に関する歴史的な跡づけの作業を行うことが求められる。具体的な課題としては、第一に、ハイデガーのロゴス概念を彼の思想形成の各段階に即して再解釈するとともに、これを新カント派や第二次大戦後の現象学派などの歴史的文脈との関係において、その認識論的意義を検討することが求められる。第二に、境界問題をめぐる現代の倫理学研究に対する、言語的対話の発見機能の基礎論的意義をひきつづき考察することが求められる。
|
Causes of Carryover |
2019年度末以来のコロナ禍のため、出張計画を一件中止し、余った研究費を資料収集用の物品費に代替したため、研究費を完全に正確に使い切ることができなかった。当該助成金は少額であるが、物品費として、研究遂行に必要な資料の購入にあてたい。
|